勝てたのは6%、2022年「株主提案の勝敗」全リスト
提案数は過去最多、勝利を収めた提案は18件(要無料登録)
3月決算上場企業の株主総会における株主提案賛成率ランキングです。
「6月末までに開催された株主総会の結果がすべて出そろった。株主提案は最終的に76社290議案となり、それまで過去最多だった社数55(2020年)、議案数212(2017年)を大きく上回った(対象は3月決算企業)。」
賛成率が高く可決されたのは、Fast Fitness Japan、北越メタル、フューチャーベンチャーキャピタルなどで、それぞれ解説がなされています。
可決されなかったものの賛成率が高かった会社として、岩崎電気を取り上げています。社外監査役解任提案でした。
「賛成率44%台と惜敗したのは、ESG投資事業組合の岩崎電気への株主提案だ。鈴木直人氏と稲垣尚氏の2人の社外監査役解任を求めた。...
ESG投資組合が問題視したのは「銀行の指定席化」だ。鈴木氏はみずほ銀行OBであり、稲垣氏が三井住友銀行OB。株主提案書面によれば、歴代の社外監査役のうちみずほフィナンシャルグループ出身者は2002年就任の清水正博氏から鈴木氏まで5代、三井住友フィナンシャルグループ出身は、1999年の兵頭宏和氏から稲垣氏まで4代、連綿と切れ目なく続いている。
みずほFGや三井住友FGは岩崎電気と株式を持ち合っているほか、岩崎電気は両行から融資を受けているなど利害関係がある。ESG投資組合は「社外監査役は(中略)長期にわたり(両行の)固定化されたポジションとなっており、OBである社外監査役の独立性は到底期待できるものではない」と株主提案書面の中で指摘していた。」
大手監査法人の元幹部の指定席もあるのでは...
「役員報酬の個別開示」の提案も賛成率が高い会社があるそうです。三井金属、世紀東急工業、シチズン時計などです。
「金融庁は年々高まる個別報酬開示への株主の熱意を無視できるだろうか。2010年、金融庁は1億円以上に限り、役員報酬の個別開示を上場企業に義務づけた。以来、個別報酬開示が投資家の判断材料になるケースもある。内閣府令を改正し、1億円未満の役員報酬も開示を義務づける時期がきているのかもしれない。」
はるやまホールディングス(お家騒動)、日産車体(日産自動車からの天下り禁止)、日産自動車(ルノーと交わした資本・業務提携に関する合意書開示)などにもふれています。
そのほか、増配を求める提案が高い賛成率だった会社も、けっこうあるようです。
以前取り上げたTACやスルガ銀行の株主提案の賛成率は、低かったようです。
報酬開示、4割超の賛成も 過去最高77社に株主提案(日経)(記事冒頭のみ)
「今回の株主提案で賛成率の高さが目立ったのが、取締役の個別報酬額の開示を求める議案だ。
1人の株主から7つの株主提案を受けた三井金属。そのうち取締役と執行役の報酬や賞与などの個別開示を定款に盛り込むよう求める議案は44%の賛成を集めた。世紀東急工業では相談役の個別報酬開示を求める定款変更議案が39%、シチズン時計の取締役報酬の個別開示を求める定款変更議案も39%の賛成を集めた。
定款変更は特別決議で、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要となる。ただ特定の株主の提案に他の株主の賛同が広がっている。運用会社でも、野村アセットマネジメントなど個別報酬の開示には株主提案でも原則賛成票を投じると定める議決権行使基準を持つところが多い。」
「脱炭素」株主提案、ウクライナ危機で潮流に変化
政策かかわる判断、投資家には不向きとの声(東洋経済)
「脱炭素の情報開示を求めるアクションにならば投資家の理解が深まっていくかと言えば、そう簡単ではない。情報開示の程度や限度に対しても、日本にも影響を与えそうな攻防が今、海の向こうで起きている。
米証券取引委員会(SEC)は3月21日、上場企業に脱炭素関連の開示を義務付ける内容の規則案を示した。脱炭素の目標のみならず、移行計画や気候変動リスクの経営への影響の説明も求める内容まで踏み込んだものだ。施行されれば日本の市場にも同様の規則が「輸入」される可能性が高いが、鈴木氏は「だいぶ不透明な状況になってきた」と見る。
米連邦最高裁は6月30日、連邦政府による発電所に対する温室効果ガス排出規制を巡り、化石燃料からクリーンエネルギーへの移行を促すような規制などを「無効」とする判断を下した。鈴木氏は「連邦政府の規制でもダメなのだから、SECが上場企業に脱炭素のさまざまな開示を義務付けようとしていることは問題化するだろう」と分析する。」