課税事業者への変更は6割、未対応企業はインボイス制度を「理解していない」
freeeが、インボイス制度に関する報道関係者向け勉強会を開催し、そこで、法人企業や個人事業主の準備状況などに関する調査結果を紹介したという記事。(この記事を書いた人は、インボイス発行事業者と課税事業者を混同しているのではないかと思われる箇所があります。インボイス発行事業者は必ず課税事業者ですが、課税事業者でもインボイス発行事業者の登録をしないケースがありえます。)
(仕入れする側の)法人は...
「インボイス制度は2023年10月1日から導入される。法人企業における課税事業者への変更依頼は「約6割に迫る状況。だが、インボイス制度に反対する事業者は1割弱。未対応の企業はインボイス対応を認識していない」(同社 プロダクト戦略本部 プロダクトマーケティングマネジャー 尾籠威則氏)と指摘した。」
「「法人企業の経理部門責任者や担当者558人を対象に9月12日から5日間実施した調査によれば、免税事業者との取り引きがある企業は43.4%。そのうち課税事業へ転換依頼を行う予定の企業は57.4%におよんだ(有効回答数242)。こちらも業種による隔たりがあり、上位には製造業(21.6%)、商社(15.8%)、IT(12.2%)、建築業(7.2%)が並ぶ(有効回答数139)。」
個人事業主は...
「freeeが9月26日から2日間、20~50代の個人事業主を対象にした調査によれば、「理解済み」と回答した割合は14.4%。約1年後の実施を踏まえて名称は知りつつも仕組みを把握しない割合は26.3%、「認識していない」割合は26.7%におよんだ(有効回答数926)。」
「インボイス制度は必然的に事業者と取引先が存在するものの、「取引先と協議を進める」「予定がある」個人事業主は12.6%、残る87.4%は「不明・未定」と回答した(有効回答数926)。」
freee法務部 弁護士のコメント。
「同社 法務部 弁護士 水井大氏は「税務署の職員はインボイス以前に消費税の知識がまったくないと手厳しいコメントを発していた。そもそも自身が『課税事業者か免税事業者から分からない』レベル。(ただ、税務署の説明も)資料は読み切れないほど多く、『結局自分はどうなんだ』とのニーズを満たしていない」と指摘する。]
今までが、課税売上が少なければ、消費税を意識しなくても、やっていけるという、零細業者にやさしい制度だったということなのでしょう。
freeeのプレスリリース。正確にはこちらを見た方がよいかもしれません。
「■■アンケート調査サマリー
・個人事業主・法人経理担当者それぞれを対象としたインボイス制度に関するアンケート調査を実施しました
・個人事業主を対象とした「インボイス制度を知っているか」という問いに対して「制度内容を知っていて理解している」はわずか14.4%にとどまる
・法人経理担当者を対象としたインボイス制度の各対応項目の認知度についての問いに対して「認知している」は24.2%にとどまり、経過措置に関する認知が広がっていないことがわかりました」
これもインボイス制度関連のアンケート調査結果の記事です。
アニメ業界で働くフリーの半数が年収300万円未満 インボイスで4人に1人が「廃業の危機」(Itmedia)
「調査はSNSで告知してWebアンケートで実施。アニメ業界でフリーランス(個人事業主・小規模事業者等)として働く1132人から回答を得て集計した。」
「「インボイス制度が導入された場合、アニメ業界におけるあなたの仕事は増減すると思いますか?」との質問には、25.0%が「廃業する可能性がある」「廃業することを決めている」と回答。32.2%が「仕事が減ると思う」と答えた。」
「「アニメ業界の仕事の取引先から、インボイス制度に関する要請はありましたか?」の設問(複数回答)には、89.5%が「まだ何もない」と答えた一方、取引先から要請を受け、「インボイス発行事業者にならない場合は値引きすると言われた」「インボイス発行事業者にならない場合は取引を停止すると言われた」人も3.1%いた。」
いままで免税業者であるフリーランスから仕入れしていた会社は、そのままでは、仕入税額控除ができなくなるので、その分、支払を減額する方向で動くでしょう。フリーランス側がインボイス発行業者(課税業者)になれば、仕入れ側は仕入税額控除できますが、そのかわり、フリーランス側で消費税を納めなければなりません。その手続の事務負担も生じます(税理士に頼めばその報酬も)。
フリーランス側で生じる増税分(+事務負担)に見合う分、仕入れ額を引き上げる方向に行けばよいのですが、それはむずかしそうです。しかし、なにもしなくても、仕入税額控除ができなくなる分の報酬減額が、最大のデメリットですから、廃業までする必要はないのでは。もちろん、実質的な収入が減ることにより、採算がとれなくなり、廃業を選択する人がいてもおかしくはありません。