ヤマトホールディングス(HD)傘下の引っ越し会社ヤマトホームコンビニエンス(YHC)が、法人向け引っ越し事業で料金を過大に請求していたという記事。
「ヤマトHDの社内調査では、データが照合できる2016年5月~18年6月の2年2カ月間で、法人顧客に対し料金を不適切に請求した件数は2640社、約4万8000件に及び、過大請求額は約17億円に達した。過大請求は全国11の統括支店のすべてで行われていたという。」
内部告発があったのに、きちんと調べなかったようです。
「ヤマトHDによると、11年に内部告発で過大請求の指摘があり、当時、社内調査を行い対処したという。だが、「全国的な問題との認識に至らなかった」(山内社長)といい、全社的な調査は行わなかった。今回も報道機関からの問い合わせを受けた調査で発覚しており、過大請求は長年見過ごされてきたとみられる。」
放置していた動機は...
「YHCの18年3月期の営業利益は5億2200万円で、過大請求分を差し引くと赤字に陥っていた可能性がある。会見では、記者団から「業績をよく見せかけようとしたのでは?」など動機を尋ねる質問が相次いだが、山内社長は「外部専門家による調査委員会の調査で究明したい」と述べるにとどまった。」
1件1件の不正金額は小さくても、これだけの件数の不正があって、全国の支店で起きていた、しかも長年継続していたとのことですから、まさに、内部統制評価・監査制度で不備を見つけなければいけない事例でしょう。子会社ということで、対象外にしていたのでしょうか。
ヤマト「引っ越し水増し請求」で社長ら謝罪 過去2年で2640社に対し、総額17億円(弁護士ドットコム)
「不適切な請求は、家財量の増減により金額が変動したのに、見積額をそのまま請求してしまったことが原因だとしている。過少請求もあったが、カウントしていないという。
和田社長は「実作業に即した金額を請求するという基本ルールが全社に周知、徹底できていなかった」などと、意図的な不正であることは否定した。」
個人向けの引っ越しでは、その場で実作業分との差額を確認してもらい請求するようになっていたとのことなので、法人向けでもそういうふうにすることは可能でしょう。
過大請求された企業側も、本来は実作業分を確かめた上で支払うべきなのでしょうが、そこまでする必要がないと判断したのか...。
「この問題は「しんぶん赤旗」がスクープ。7月2日には、YHC四国法人の元営業支店長・槙本元さん(65)が霞が関の司法記者クラブで会見を開き、告発していた。槙本さんは少なくとも2010年から水増し請求があったとしている。」
広告主を気にしなくてもよいのは強みなのでしょう。
大手メディアが黙殺する、ヤマトHD「水増し請求疑惑」の深層(現代ビジネス)
「私は、四国の高知市から上京していた槇本氏が、夜行バスで帰る直前、90分にわたり話を聞いた。
そこで判明したのは、告発を受け入れられないばかりか、定年延長の職場ではイジメのような仕打ちを受けた槇本氏と会社の戦いのドラマもあった、ということだ。」
「槇本氏が、発端から振り返る。
「10年当時、私は四国法人営業支店長として、引っ越し作業を行うのではなく、法人を獲得するのが仕事でした。その顧客になってくれたのが東芝系列企業でしたが、そこが愛媛と神奈川間で行った従業員の移動の際、水増しを行っていたのに気付き、本社の内部通報窓口に連絡しました」
この時の処理の拙さが、「水増し請求」の蔓延につながった。誤りを認め、過大請求分の約400万円は返金するのだが、会社側に是正の意思はなかった。
「私の上司に当たる四国を統括する支店長から、『なんで本社に通報するんだ。内々で済む話じゃないか』と、怒られたんです。それが会社の意思でした。だから当該の支店長、営業所長などは処分を受けず、逆に社員の間に『水増ししても構わない』という機運が広がった」(槇本氏)」
この内部告発は、単発のものではなく、その後も継続して、会社側との話し合いが行われていたそうです。
会社のプレスリリース。
法人のお客さま向け引越サービスにおける不適切な請求に関する社内調査の結果および今後の対処について
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