自民党税制調査会が、2009年度税制改正で、日本企業が海外子会社から受け取った配当を非課税とする方針を固めたという記事。
「日本の海外現地法人が持つ内部留保の残高は06年度に約17兆2000億円と過去最高水準に膨らんでいる。資金の国内還流で国内投資や研究開発の活性化を狙う。」
日本国内へ資金を環流させるという意味で悪い政策ではないのかもしれませんが、本当に配当原資が約17兆2000億円もあるのかについては疑問です。
どういう方法で算出したのかにもよりますが、留保利益が生じたときのレートで換算したものだとすると、現在の円高で相当目減りしている可能性があります。仮に1ドル=120円のときに稼いだ留保利益だとして、配当のときに1ドル=90円になっていたとすると、実際に配当できるのは17兆円ではなく13兆円(=17兆円×90/120)になります。また、投資した元本の円高による目減り分は親会社側での評価の問題なので、配当できる金額には関係しませんが、海外投資の実質的な利益を計算するときには必要になります。そこまで含めて考えると配当可能な留保利益はさらに目減りするかもしれません。
(会計処理だけの問題ですが、調子に乗ってたくさん還元してしまうと、親会社の単独決算上、「子会社の純資産×カレントレート」が関係会社株式(投資したときのレートで計上)を著しく下回ってしまい、評価減する羽目に陥る可能性もあります。)
このように考えてみると、日本の親会社に還元できる金額は、ヒストリカルレートで換算した留保利益額から為替換算調整勘定を加減算したものとなるはずです。留保利益が過去最高だとしても、もし為替換算調整勘定(借方)が同じように増えていれば、あまりあてにはできません。
最近の「企業会計」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2000年
人気記事