東芝粉飾事件で、東芝に科される課徴金は数十億円に上る見通しだという記事。東芝自体が、2015年3月期決算でそれを引き当て計上しているそうです。
「東芝の7日の発表によると、不正会計の影響で、12年3月期の最終(当期)損益は701億円から32億円の黒字に、13年3月期は774億円から134億円の黒字にそれぞれ大きく目減りした。監視委はこの2期について、修正額が大きいことから「投資家の判断に重要な影響を及ぼした」と認定し、課徴金の対象とする方向だ。
東芝は13年、この2期の有価証券報告書を「参照書類」として社債計2000億円を発行した。課徴金の算出方法を定めた金融商品取引法の規定によると、社債の影響も含めた金額は約46億円に上ることになる。
他の期については最終損益への影響は比較的少ないが、監視委が他の指標への影響などを考慮して「重要な事項に虚偽記載があった」と判断した場合、課徴金が最高で84億円に上る可能性がある。東芝も7日に発表した15年3月期決算で、課徴金納付に備えた引当金として84億円を計上した。」
粉飾の影響は損益だけでなく、純資産への影響でもみるべきでしょう。たとえば、2014年3月期末でみると純資産への影響が2千億円超あるわけですから、課徴金の対象を損益影響が大きい期に限定する理由はありません。
課徴金に対する引当については、課徴金の勧告も出ていない段階で計上するというのは、非常に珍しい処理です。9月7日の決算発表の動画を見ると、監査法人から計上するように指示されたとのことです。ただし、有報を見ると、連結・単独とも「引当金」として独立掲記はしていない模様です。
課徴金を支払うとすれば、その原因は虚偽記載(虚偽表示)を行ったことにあります。そのように考えると、2015年3月期だけでなく、虚偽記載を行っていた各年度で計上していなければならないことになります。逆に、課徴金が課せられるかどうかは、虚偽記載の有無だけでなく、金融庁の処分方針にも左右されるのであって、勧告が出て金融庁の意図が示されるまでは債務は発生していないと考えれば、実際に課徴金勧告が出てから計上すればよいということになるでしょう。そのいずれでもなく、2015年3月期の年度決算で計上したというのは、どういう理屈なのでしょうか。保守的な処理ではあると思いますが・・・。
2014年度 決算説明会(東芝)(動画(約35分)へのリンクあり)(課徴金引当についてはスライドの9ページで社長自ら説明しています。)
東芝、課徴金だけで済むか 監視委の調査が焦点に(日経)(記事冒頭のみ)
「「まさか先手を打ってくるとは」――。不適切会計問題を巡り、7日に東芝が発表した過去7年分の決算訂正。金融庁、証券取引等監視委員会の幹部を驚かせたのが、課徴金処分を前提にした引当金84億円の計上だった。」
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