会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

金融資本市場法制等をめぐる最近の状況―開示を中心として―

三井秀範氏「金融資本市場法制等をめぐる最近の状況―開示を中心として―」(PDFファイル)

いくつかの有名なブログでも取り上げられているようですが、日本証券経済研究所のサイトより、金融庁企業開示課の課長による講演会録です。内部統制報告制度もテーマのひとつです。

制度の趣旨に関する部分を、少し長くなりますが引用します。

「内部統制報告制度が義務づけていますのは、経営者が選んだ内部統制をする、しない、あるいはした場合には、どういうことをしたかということを経営者が評価しまして、それを報告書にまとめていただく。要するにディスクロージャーだけです。したがいまして、内部統制をしないという決断をした場合には、していませんということをディスクロージャーしていただく。こういうのが制度ですので、罰則があるのは、虚偽、うそをついた場合だけです。

 ストレートに言いますと、「内部統制は一切やる気がないので整備しませんでした。したがって、内部統制は重大な欠陥があります。なぜなら、上場したばかりで、コストもかかるし赤字になって、会社にとってマイナスだ。自分の営業スタイルは、こうすることによって粉飾決算を防ぐことができる」、こういうことが宣言できれば、そのとおりありのままを書けば、内部統制報告としては合格でございます。

 気をつけていただくのは、その場合、内部統制には欠陥があるので、財務諸表が正しいかどうかというのは別途考えなければいけないので、「財務諸表には粉飾がありません。正しいんです」ということは、経営者はどこかで説明しないと、みんなは納得しないでしょう。その意味で経営者は必ず内部統制を整備すると思います。但し、そのことと金商法24条の4の4とは法律的には別のことです。」

おそらく制度の法律的な意味は、このとおりなのでしょう。しかし少し気になるのは、内部統制に関する報告を行うためには、内部統制の有効性に関する評価を実施しなければならない、そのためには(内部統制構築ほどではないにしても)相当のコストがかかるという点です。

内部統制府令をみると、内部統制報告書において経営者は「財務報告に係る内部統制の評価に当たり、一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠した旨」を宣言しなければなりません。基準に基づいたこうした評価作業を行ったうえで、たまたま重要な欠陥が発見され、そのことを報告書に記載するということであれば、法律的には問題なく、内部統制監査でも無限定適正意見となります。しかし、「上場したばかりで、コストもかかるし赤字になって、会社にとってマイナスだ」からといって、経理部長に「我が社はしっかりやっとるか」と聞くだけで済ませてしまい、基準に基づいた評価を行わないで「財務報告に係る内部統制の評価に当たり、一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠した旨」を内部統制報告書に記載した場合には、虚偽表示となってしまいます。

「誤解」のないようご注意下さい。

(注)
内部統制府令では「やむを得ない事情により、財務報告に係る内部統制の一部の範囲について十分な評価手続が実施できなかった場合には、その範囲及び理由を記載すること」とされており、やむを得ない事情(基準に説明があります)であれば評価手続の省略が認められていますが、「上場したばかりで、コストもかかるし赤字になって、会社にとってマイナスだ」というのを「やむを得ない事情」として金融庁は認めてくれるのでしょうか。

当サイトの関連記事(個人的には、こちらの記事で取り上げた論文のように、内部統制は現時点では監査にはなじまない、制度導入は時期尚早という意見です。)
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