財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備及び内部統制報告書の訂正報告書の提出に関するお知らせ(PDFファイル)
(船井電機の倒産で有名になったともいえる)サイバー・バズ(東証グロース)のプレスリリース(2024年12月27日)。
2024年9月期の内部統制報告書について、開示すべき重要な不備があったため、当社の財務報告に係る内部統制は有効でない旨を記載するとのことです。
2024 年9月期第2四半期決算において、当社が 2023 年4月より実施したアフィリエイト広告の代理販売取引に係る当該取引先に対する売掛債権の回収の金額と時期に不確実性が存在することから、本件売掛債権の金額 2,215 百万円に対して、全額貸倒引当金を計上した事案の関連です。
経緯や原因分析を詳しく書いています。どのような点が内部統制の不備だったのか...
「以上の事実経緯及び原因分析を踏まえ、当社は、当社の全社的な内部統制、業務プロセス及び決算・財務報告プロセスに係る内部統制の評価を行った結果、本件事象を招いた背景として、以下の全社的な内部統制、業務プロセス及び決算・財務報告プロセスに係る内部統制に関する不備があったものと認識しております。
① 以下のア~ウの特徴を有するイレギュラーな新規取引の与信判断について、役員会のリスク分析やモニタリングが十分かつ適切ではなかった全社的な内部統制に関する不備
ア 業績不振で親会社の保証がなければ取引を承認できない新規取引先
イ 自社において取扱い実績のない新規商材
ウ 通例でない商流、取引条件、取引金額
当社としましては、本来は、イレギュラーな新規取引について、役員会において、取引先等の実態を踏まえながら、実際に付与する与信金額についての情報や実際に締結予定の契約条項を前提としたリスク分析及び判断を行ったうえで、実質的な与信判断を行う必要があったと認識しております。しかしながら、イレギュラーな新規取引である本件取引の開始時において、社内与信ガイドラインに従った与信判断を実施したものの、上記取引先等の実態が詳細に検討されないまま、形式的な与信判断になっておりました。
また、後掲②で説明するように、重要性の高いイレギュラー取引の与信判断に関して検討・承認プロセスが整備されていなかったことに起因し、役員会において、本件取引実行の判断にあたって、実際に付与する与信金額についての情報や実際の契約書面の確認等の実質的なリスク分析が十分に行われておらず、与信リスクの再検証や契約書の再確認を含むモニタリングも十分に機能しておりませんでした。これらを踏まえ、当社としましては、役員会のリスクの識別・分類・分析・評価プロセスにおいて、イレギュラーな新規取引の与信判断におけるリスク分析やモニタリングが十分かつ適切ではなかったと考え、全社的な内部統制に関する不備があったと認識しております。
② イレギュラーな新規取引の与信判断に関する検討・承認プロセスが整備されておらず、また、取引拡大に伴い与信限度額を増加させるにあたり実質的に社内与信ガイドラインから逸脱した業務プロセスに係る内部統制に関する不備
当社としましては、本来は、イレギュラーな新規取引の与信判断に関する職務権限の所在を明確にし、取締役会が決裁権限を有する契約に関しては、役員会に対して正しい契約内容を前提とした報告を行ったうえで、役員会において協議し取締役会にて決議するなど適切な権限に準拠し正しく与信判断を行う必要があったと認識しております。しかしながら与信リスクの検討や実際の契約書の内容の確認手続が確立しておらず、当社の職務権限規程上、取締役会決議が必要とされる「重要な契約書」の該当性に関する具体的な基準が設けられていない等、イレギュラーな新規取引の与信判断の検討・承認プロセスが整備されておりませんでした。また、本件取引の拡大に伴い与信残高を増加させるにあたり、A 社及び B 社の取引の間で行われていた取引に当社が介入する取引形態であったため、当社にて正確かつ適切な情報収集及び状況
把握を踏まえた取引額の把握ができておらず、また実際に締結された契約書に条項として含まれていなかった本件免除が行われることを前提とする等、実質的に社内与信ガイドラインに違反した判断となっておりました。これらを踏まえ、イレギュラーな新規取引の与信判断に関する検討・承認プロセスが整備されておらず、取引拡大に伴い与信限度額を増加させるにあたり実質的に社内与信ガイドラインから逸脱したものと考え、業務プロセスに係る内部統制に関する不備があったと認識しております。
③ 貸倒懸念債権の貸倒見積高の算定及び検討において、十分かつ適切に評価及び判断するための基準やプロセスが明確化されていなかった決算・財務報告プロセスに係る内部統制に関する不備
当社としましては、本来は、保証人を含めた直近の財政状況・支払能力などを十分かつ適切に評価及び判断するための基準やプロセスを明確に定めておく必要があったと認識しております。しかしながら、当社は、A 社の財務情報等を入手するのみならず、A 社の信用補完の観点から、同社の親会社である FUNAIGROUP 株式会社(旧:船井電機・ホールディングス株式会社)の連帯保証を取得する等の措置を講じていたものの、A 社及び連帯保証先に係る最新の財務情報の取得等が適切にできておらず、実態把握を踏まえたリスク評価及び検討が適切にできておりませんでした。また、貸倒懸念債権の貸倒見積高の算定及び検討においても、A 社に対する債権を含む滞留債権のモニタリング等は行っていたものの、保証人を含めた直近の財政状況・支払能力などを十分かつ適切に評価及び判断するための基準やプロセスのルールの整備が明確化されておらず、その結果本件取引に関する債務者及び保証人の財政状況・支払能力等を十分かつ適切に評価することができず、2024 年9月期第2四半期決算において、本件売掛債権の回収の金額と時期に不確実性が存在することをもって、貸倒引当金を計上いたしました。これらを踏まえ、当社としましては、貸倒懸念債権の貸倒見積高の算定及び検討において、評価及び判断するための基準やプロセスの整備が明確化されていなかったと考え、決算・財務報告プロセスに係る内部統制に関する不備があったと認識しております。
上記に記載した内部統制の不備は、財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高く、開示すべき重要な不備であると判断いたしました。」
財務報告という意味では、結果的に正しく引当金を計上できたのだから問題ないともいえますが、貸倒引当金に関するプロセスは与信の検討以前から始まっているという点からすれば、それがいい加減であれば、財務報告に係る内部統制の不備でもあるのでしょう。
なお、同社の監査人はトーマツです。
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