SMBC日興証券の金融商品取引法違反(相場操縦)事件に関する調査報告書が公表されたという記事。
どのような事件か...
「 SMBC日興の相場操縦を巡っては、上場企業の大株主らから保有株式をまとめて買い取り、投資家に転売する「ブロックオファー」と呼ばれる取引計10銘柄で、自己勘定取引によって不正に株価の維持を図ったとされる。」
報告書の内容は...
「報告書では、問題を引き起こした4つの根本原因として、「証券業務全体の中での潜在的リスクに見合った自己規律および態勢整備の不足」、「社内全般にわたる規範意識の希薄性」、「ガバナンス(企業統治)態勢全般の機能不全」、「人事政策におけるコンプライアンスの位置付けの弱さ」が挙げられている。
規範意識については「現場レベルから経営レベルに至るまで社内全般にわたり、業務に潜在するさまざまなリスクに対する危機意識が低い」と指摘。「利益を追求するあまり、法令を安易に都合よく解釈する姿勢もうかがえる」とも言及した。
売買管理部で適正な人材を欠いたり、恒常的に人員不足であったりしたほか、コンプライアンス関連部門では相場操縦を含む不公正取引の懸念を察知できなかったことなどを挙げ、ガバナンス態勢は「全般において機能不全に陥っていたと言わざるを得ない」との見解を示した。
再発防止策として、自己勘定取引の社内ルールを改めて策定するなどの業務運営の見直しやコンプライアンス面での貢献が人事評価に適正に反映されるような仕組み作りなどを提言した。」
郷原弁護士のコメントによると、違法な行為があったとは書かれていないそうです。
「郷原総合コンプライアンス法律事務所の郷原信郎弁護士は、今回の報告書について「違法性や犯罪に当たるといった認定をしていないところが重要だ」と指摘したうえで、「刑事公判に影響を生じさせるような内容ではないと思う」と述べた。」
さまざまな情報操作などを行って株価をつり上げ、自分たちだけは、高値で売り抜いて大もうけする、といった原始的な相場操縦なら、一般投資家を犠牲にする悪い行為だということはわかるのですが、今回の事件は、どこがどう悪いのか、よくわかりません。証券会社が絶対的に悪いといえるほどの白黒はっきりした事件なのでしょうか。専門家の意見を聴いてみたいものです。市場の外で、大口の取引を行うということ自体、市場での価格形成をゆがめているようにも思えるのですが...。(取引所集中義務(だいぶ前に廃止))
調査委員会の調査報告書の公表等について(PDFファイル)
【別添資料】調査報告書(開示版)(PDFファイル)(160ページもあります。)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/67/609b53b5f535926f13bdb7a16e88ff4b.png)
(会社のプレスリリースより)
郷原弁護士のコメントどおり、違法な行為だったとは断定していないようです。不適切・不公平な行為、慎重な検討・対応が必要であった行為とはいっていますが...。
会計や監査とは直接の関係はない事件だと思われますが、おなじみの八田教授がコメントしています。
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SMBC日興に収益至上主義、経営陣は総退陣を-青山学院大・八田氏(ブルームバーグ)
「SMBC日興の相場操縦事件を巡っては、証券会社が仲介役ではなくプレーヤーとして動き、本業における裏切り行為を働いたとし、「背景に収益至上主義があったと言わざるを得ない」と話した。
実際、報告書では「利益を追求するあまり、法令を安易に都合よく解釈する姿勢もうかがえる」との記載もあり、「企業が利益を追求するのは当然であるが、あくまでコンプライアンスの確保がその大前提」とも指摘されている。」
[社説]市場をゆがめたSMBC日興(日経)(記事冒頭のみ)
法令順守の不全「異常な状況」 社長宛てメールに関連情報―相場操縦でSMBC日興調査委(時事)
SMBC日興証券事件、「安定操作」の処罰に関する“根本的な疑問”(Yahoo)