旧約聖書 9 ヤロブアムーエズラ
王国の分裂 ヤロブアム
(1列王記12:20)
「全イスラエルは,
ヤロブアムが戻って来たことを聞き,
人をやって彼を会衆のところに招き,
彼を全イスラエルの王とした。
ユダの部族以外には,
ダビデの家に従うものはなかった。」
北王国はヤロブアムの反乱によって,
紀元前721(722)年
に成立しました。
北王国は,シケムを首都とし,
宗教的にもエルサレムから独立するために
ダンとベテルに聖所を設けて
金の牛をおき,
新しい祭司と祭儀の制度を建てました。
○
ヤロブアムの罪
(1列王12:26-30)
「ヤロブアムは心に思った。
『今のままなら,
この王国はダビデの家に戻るだろう。
この民が,エルサレムにある主の宮で
いけにえをささげるために
上って行くことになっていれば,
この民の心は,彼らの主君,
ユダの王レハブアムに再び帰り,
私を殺し,
ユダの王レハブアムのもとに
帰るだろう。』
そこで,王は相談して,
金の子牛を二つ造り,彼らに言った。
『もう,
エルサレムに上る必要はない。
イスラエルよ。
ここに,あなたをエジプトから
連れ上ったあなたの神々がおられる。』
それから,彼は一つをベテルに据え,
一つをダンに安置した。
このことは罪となった。
民はこの一つを礼拝するため
ダンにまで行った。」
ヤロブアムの罪は,
北王国の罪となります。
○
北のイスラエルでは,
王に対抗できる
勇気のある預言者が出ます。
エリヤとエリシャがその代表です。
南ユダにも
神殿礼拝を忘れた時代がありました。
しかし,南のユダには
ヒゼキヤやヨシヤなどの
宗教改革に目覚める王が出ます。
☆彡
エリヤとバアルの預言者との戦い
(1列王記18:20,21)
「アハブは
イスラエルのすべての人に使いをやり,
預言者たちをカルメル山に集めた。
エリヤはみなの前に進み出て言った。
『あなたがたは,
いつまでどっちつかずに
よろめいているのか。
もし,主が神であれば,それに従い,
もし,バアルが神であれば,
それに従え。』」
アハブ王はバアル信仰を容認します。
このアハブ王に
預言者エリヤは対立します。
カルメル山上で,
エリヤは
バアルの預言者450人に対決します。
エリヤの祈りに,
神は答えてくださり,エリヤは勝ちます。
この後,エリヤは
バアルの預言者を皆殺しにしました。
わたしたちも,
真の神に従う行動を
いつも取りたいものです。
☆
(1列王記18:37,38)
「『私に答えてください。
主よ。私に答えてください。
この民が,あなたこそ,
主よ,神であり,
あなたが彼らの心を翻してくださることを
知るようにしてください。』
すると,主の火が降って来て,
全焼のいけにえと,たきぎと,
石と,ちりとを焼き尽くし,
みぞの水もなめ尽くしてしまった。」
北イスラエルのアハブ王が
バアル礼拝を導入しました。
神はエリヤを遣わして,
北イスラエルを真の神に
立ち帰えらせようとします。
○
エリヤ,天に上げられる
(2列王2:1,2)
「主が嵐を起こして
エリヤを
天に上げられたときのことである。
エリヤはエリシャを連れて
ギルガルを出た。
エリヤはエリシャに,
『主はわたしを
ベテルにまでお遣わしになるが,
あなたはここにとどまっていなさい』
と言った。
しかしエリシャは,
『主は生きておられ,
あなた御自身も生きておられます。
わたしはあなたを離れません』
と答えたので,
二人はベテルに下って行った。」
預言者エリヤが死に臨んで,
弟子のエリシャに語った言葉です。
(列王下2:11,12)
「こうして,
彼らがなお進みながら話していると,
なんと,
一台の火の戦車と火の馬とが現れ,
このふたりの間を分け隔て,
エリヤは,
たつまきに乗って天へ上って行った。
エリシャはこれを見て,
『わが父。わが父。
イスラエルの戦車と騎兵たち』
と叫んでいたが,
彼はもう見えなかった。
そこで,彼は自分の着物をつかみ,
それを二つに引き裂いた。」
○
北イスラエル王国の滅亡
(2列王記17:21-23)
「主がイスラエルを
ダビデの家から引き裂かれたとき,
彼らは
ネバテの子ヤロブアムを王としたが,
ヤロブアムは,
イスラエルを主に従わないようにしむけ,
彼らに大きな罪を犯させた。
イスラエルの人々は,
ヤロブアムの犯したすべての罪に歩み,
それをやめなかったので,
ついに,主は,
そのしもべであるすべての預言者を
通して告げられたとおり,
イスラエルを御前から取り除かれた。
こうして,
イスラエルは自分の土地から
アッシリヤへ引いて行かれた。
今日もそのままである。」
前721年,
北イスラエルは
アッシリヤ帝国によって滅びます。
北王国崩壊は世界征服の途上ないし,
完成の域にあるアッシリヤと,
それに対応出来なかった,
小国間での政治的必然でした。
だが,ソロモン以後分裂し,
すでに本来の正統的な流れから
逸脱してきたとはいえ,
崩壊が持つ意味は
全イスラエル人にとって,
特になお存続している
南王国にとって深刻でした。
対アッシリヤ政策では,
南北両王国のどちらが
正しかったのかは言いがたい。
しかし,列王記は北王国崩壊の道筋を
極めて明快に記しています。
崩壊は北王国が
主に反逆したことが原因であり,
そのため
神が北王国を捨てられたと
断言しています。
○
ヨシヤ王の宗教改革
(2歴代 34:1-3)
「ヨシヤは八歳で王となり,
三十一年間エルサレムで王位にあった。
彼は主の目にかなう正しいことを行い,
父祖ダビデの道を歩み,
右にも左にもそれなかった。
その治世の第八年,
彼がまだ若かったときに,
父祖ダビデの神を求めることを始め,
第十二年に聖なる高台,
アシェラ像,彫像,鋳物の像を取り除き,
ユダとエルサレムを清め始めた。」
(2列王記22:1,2)
「ヨシヤは八歳で王となり,
エルサレムで三十一年の間,
世を治めた。
母はボヅカテのアダヤの娘で,
名をエデダといった。
ヨシヤは主の目にかなう事を行い,
先祖ダビデの道に歩んで
右にも左にも曲らなかった。」
南ユダでは,ヨシヤ王が,
主の目にかなう歩みをして,
先祖ダビデの道から
それることがありませんでした。
(2列22:1,2)
彼がその治世の間に着手したことは,
当時の生活と宗教の改革でした。
その改革は,彼の治世の第18年に
主の宮の大祭司ヒルキヤによって
発見された「律法の書」のことばに
よってなされました。
(2列22:8,
2歴34:14‐15).
(2列王記22:8)
「その時大祭司ヒルキヤは
書記官シャパンに言った,
『わたしは主の宮で
律法の書を見つけました』。
そしてヒルキヤが
その書物をシャパンに渡したので,
彼はそれを読んだ。」
○
イスラエルの民は,
ソロモンの王の後は
北イスラエルと南ユダの
2つに分裂します。
そして,北イスラエルはアッシリヤに,
南ユダはバビロニヤに捕囚されます。
バビロニヤがペルシャに敗れ,
イスラエルの民は
カナンの地に帰還します。
この間は,神は預言者を通して,
イスラエルの民を導きます。
○
処女受胎の預言
(イザヤ7:14)
「主みずから,
あなたがたに一つのしるしを与えられる。
見よ。処女がみごもっている。
そして男の子を産み,
その名を『インマヌエル』と名づける。」
ユダの王ウジヤの孫アハズの時代に,
シリヤと北王国イスラエルが
ユダを脅かしたとき,
主が預言者イザヤをとおして
アハズとユダの国民に告げた言葉であり,
旧約聖書の中で最も重要な預言です。
「処女がみごもる」
という不思議なしるしが,
将来ユダの国に与えられるというのです。
ここでは処女の名は記されていません。
ダビデ家に将来,
起きる不思議な出来事です。
この子は
イザヤ9:6,7と同一の人物である。
イザヤのこの預言は,
イエスによってあらわされます。
(マタイ1:23)
「見よ,処女がみごもっている。
そして男の子を産む。
その名はインマヌエルと呼ばれる。」
(訳すと,神は私たちとともにおられる,
という意味である。)
(ルカ1:27-31)
「この処女は,
ダビデの家系のヨセフという人の
いいなずけで,
名をマリヤといった。」
○
神の民のエルサレム帰還
(エズラ1:1-3)
「ペルシヤの王クロスの第一年に,
エレミヤにより告げられた
主のことばを実現するために,
主はペルシヤの王クロスの霊を
奮い立たせたので,
王は王国中におふれを出し,
文書にして言った。
『ペルシヤの王クロスは言う。
「天の神,主は,
地のすべての王国を私に賜った。
この方はユダにあるエルサレムに,
ご自分のために宮を建てることを
私にゆだねられた。
あなたがた,
すべて主の民に属する者はだれでも,
その神がその者とともにおられるように。
その者はユダにあるエルサレムに上り,
イスラエルの神,
主の宮を建てるようにせよ。
この方は
エルサレムにおられる神である。』」
ペルシャの王クロスを
「わたしの牧者」(イザヤ44:28),
「油注がれた者(メシヤ)」と呼び
(イザヤ45:2),
ご自分の契約を成就させるために,
神は用いました。
「エレミヤにより告げられた主のことば」
とは,
エレミヤ書の次の言葉です。
(エレミヤ29:10)
「まことに,
主はこう仰せられる。
『バビロンに七十年の満ちるころ,
わたしはあなたがたを顧み,
あなたがたに
わたしの幸いな約束を果たして,
あなたがたをこの所に帰らせる。』」
民の不信仰によって,
北のイスラエルはアッシリヤに,
南のユダはバビロンに捕囚されます。
後にクロスによって,
イスラエルの民はバビロンに帰還します。
この第2神殿も
紀元70年に破壊されます。
神が預言者ナタンを通して
ダビデに約束された神の住みたまう
「神の宮」は
(2サムエル7:10-13),
永遠に滅びることのない霊的
「神の宮」であって,
これをイエス・キリストによって
建てられます。
○
神殿の礎が据えられる
(エズラ3:11)
「彼らも
『主は恵み深く,
イスラエルに対する慈しみはとこしえに』
と唱和して,
主を賛美し,感謝した。
主の神殿の基礎が据えられたので,
民も皆,
主を賛美し大きな叫び声をあげた。」
イスラエルの民が
神の神殿の基礎を据えたときの,
賛美です。
イスラエルの民は,
長い苦難の人生の旅路を終えて,
エルサレムに帰還することが出来ました。
その間,
守られてきた恵みにも感謝しています。
○
神殿の完成
(エズラ6:15,16)
「こうして,
この宮はダリヨス王の治世の第六年,
アダルの月の三日に完成した。
そこで,イスラエル人,
すなわち,祭司,レビ人,
その他,捕囚から帰って来た人々は,
この神の宮の奉献式を喜んで祝った。」
バビロン捕囚からの帰還は,
イスラエルの回復されるという
救いでした。
しかし,真の回復は,
イエス・キリストの到来と再臨を
待つことになります。
○
ここでも,選びの民の救いが,
残りの者の救いという
神の計画があります。
2017年 4月 18日
2021-08-20 改定