『落合元監督「あれが本物のエース」打たれても抑えても感情制御…少しも表情ゆがめない“鉄仮面”涌井の原点』
◇31日 ソフトバンク1―7中日(ペイペイ)
ブライトの打球がフェンスを直撃した時でさえ、彼は笑ってはいなかった。痛打を浴びようとも、激辛の判定があろうとも、大ピンチを脱しようとも、少しも表情をゆがめない。それが涌井。その鉄仮面には歴史がある。きっかけは横浜高2年秋だったと聞いた。
「優勝候補だったのに3回戦で負けちゃったんです。それで僕は一度ピッチャーをクビになり、外野をやっていました。その時に(渡辺元智)監督に言われたのが『表情に出すな』でした」
鉄仮面には極意もある。
「前も宏斗に『何であんなに淡々と投げられるんですか?』って聞かれましたが、点が入ると思うから疲れる。それこそ僕の若いときはダルビッシュや杉内さんと投げ合っていたんです。1点取られたら負けだった。だから入らなくても何とも思わない」
鉄仮面を認めていた人がいる。
「あれが本物のエースなんじゃないか」
落合元監督の言葉だ。打者として、監督として、相手投手の表情から情報を得ようとした。心が揺れていないか。苦しそうにしてはいないか。投げる球も一流だが、一切の情報を引き出せないのが涌井だった。鉄仮面こそが、エースの資質だと評価したのだ。
「そう言っていただいているのを人づてに聞いて、交流戦の時にごあいさつしたことがあるんです。悪く言えば冷めているように見えますが、良く言えば客観的に自分を見られているんだと思います」
熱を前面に出すスタイルもあるだろうが、敵はその息遣いの乱れを知ろうとしているのだ。怒りや落胆が漏れている投手の攻略は難しくない。打たれても抑えても感情の波を制御する。それは投手として間違いなく強みである。
自身は6敗、チームは30敗。それでも彼は表情を読み取らせることなく、淡々と投げた。通算156勝。ほんの一瞬だけ、鉄仮面を外していた。
中日スポーツ
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ピンチでも顔色一つ変えずに投げ込む姿が頼もしい。涌井だ。13失点で大敗した前夜から一転、中盤までロースコアの試合展開。
「パ相手だからと意識はしすぎずに、苦しい投球にならないように気を付けました」と振り返った。
尻上がりに調子を上げた。初回に柳田の犠飛で先制点こそ許したが失点はその1点だけ。力強い直球に多彩な変化球をストライクゾーンの四隅に丁寧に投げ分けていく。
3回から6回までは1人の走者も許さず、相手先発・東浜との投手戦を繰り広げた。
真骨頂は5点を勝ち越した直後の7回だ。先頭の柳田に右翼線への二塁打を許す。流れが再び相手に傾く場面でも「点差もあるし、ホームランでもいい」と落ち着いていた。
栗原を真ん中147キロ直球で空振り三振、柳町は外角シンカーを打たせて投直、最後は川瀬を外角148キロで空振り三振。ピンチの芽を摘んだ。
移籍後最長タイとなる7イニングを投げ、3安打1失点。9つの三振を奪い今季2勝目(6敗)を手にした。
中日スポーツ
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