さて、恣意的(論理必然性がない)で、意図的で、人為的な「ことば」(2/6掲載文参照)ですが、どのようなはたらきをしてくれるのか。宮原哲教授は、6つのはたらきについて述べています。
- ラベリング
- 感情表出
- 人間関係コントロール
- アイデンティティ、立場を明らかにする
- 情報を記録する
- 共感・ゴール設定
- ラベリングは、名前をつけること。現実に経験していることをことばにし、名づけ、整理しています。
- 同様に、自己の感情を「かなしい」「くやしい」といったことばにして表に出しています。
- 敬語に代表されるように、上限関係など解釈項がおのずと作用することばは、それを使うひとの立場などを表す。このことで、送り手と受け手の関係をコントロールしています。
- 自分自身に対する認識を左右します。職業や生まれ育った地域、さまざまなグループに所属するわたしたちは、おのずとそれらのグループから影響を受けています。その影響のひとつが、ことばの使い方です。つまり、ことばの使い方によって、個々人を形成あるいは表出している側面があります。
- (ことばは、)記憶の道具でもあります。
- (ことばを使って、)未来のゴールを設定し、行動計画を立てることができます。今現在ではなく、まだ見ぬ未来について考えることができるのもことばのおかげです。
こうして整理していると、ことばはなかなかの「はたらきもの」です。
ただし、わたしたちは、「ことば」以外にもシンボルを持ち、多用しています。それが、ノンバーバル・コミュニケーションと呼ばれるものです。「言語」と「非言語」、おおむねその割合は、3:7と言われています。(宮原,2000)
参考図書
宮原哲『入門コミュニケーション』松柏社,2007。
池田健一『コミュニケーション (社会科学の理論とモデル)』東京大学出版会,2000。