
<痛み>は、最初にインターネットで企画された。 漫画家カンプルが5年前から準備してきた作品だった。
インターネット予告表紙に書かれた文字が意味を持っていた。
"もうこれ以上傷つけないでね、私達...。"
感覚をほとんど感じていない無痛症患者と,小さな傷でも致命的な血友病患者のラブストーリー。
映画会社『祭り』がカンプルにラブコールを送りながら
<痛み>はインターネットを経ずに映画で制作されるようになった。
カンプルの原案をもとに<美人図>(2008)の脚本を務めたハンスリョン作家がシナリオを書いた。
クァクキョンテク監督は、まさにそのシナリオに心を奪われた。
彼は言う。
"物語の骨格が非常によかった。二人の主人公の感情のラインに集中すると、より多くの吸引力があるように見えた。"
シナリオ考証から直接脚色に参加して、周辺のキャラクターを数多く打ち出した。
撮影の直前まで書き込み作業に没頭した。
今までクァクキョンテク監督の演出作の多くは、『男の映画』と評価された。
しかし、<痛み>は、男女主人公の比重が同等である。
痛みを感じない点を武器にして自害恐喝で暮らすナムスン(クォンサンウ)と
弘大(ホンデ)でアクセサリー屋台を行い、血友病を自宅治療するドンヒョン(チョンリョウォン)。
二人は、同じ痛みを抱いて互いに徐々に惹かれていく。
一人の男の純情ではなく、二人の男女のロマンスだ。
"わずか5〜6年前には演出できなかった映画だ。
<愛・サラン>(2007)も、とても怖かった。他の人は、そうではないと言うけど、私にはそれなりに恋愛映画だったんだよ。
周辺であまりにも『男の映画』だけというから、女性キャラをうまく作ることができるか心配になった。
そうして、はっと気付いた。
あ、同じ人間なのに、あえて『女』という枠に閉じ込める必要があるのか?。
いっその男と同じに考えることにした。そしたら楽になったよ。"
大都市で生きることにもがく 孤独な男女の愛。
クァクキョンテク監督は、そのように<痛み>に丁寧に手を入れていった。
#2 以心伝心
クァクキョンテク監督は、キャスティングをする時、自分から頭をさげての交渉はしなかった。
作品に対する気が合ってこそ"真実性のある映画"が出てくると信じるためだ
そういう意味では、クォンサンウとチョンリョウォンは、適格だった。
クォンサンウは、クァクキョンテク監督が<痛み>の制作に参加する前から出演が確定していた。
かつて彼はクァクキョンテク監督と一緒に作業するために、3,4回の非公式な場を持つこともした。
そんな中訪れた偶然のチャンス。 予期せぬ出会いを二人とも喜んだ。
"サンウさんの出演作を見て、馬鹿正直で、だどたどしい面を、とてもよく演技をする俳優だと思っていた。
それはナムスン役とぴったり合っていた。"
チョンリョウォンのキャスティングも順調だった。 知人を介してシナリオを渡した日
彼女はすぐに出演のオファーを受諾した。
クァクキョンテク監督は、撮影する過程でキャスティングにさらに確信を持つようになったと打ち明けた。
"ドンヒョンは、『ヒヨコ』のようなキャラクターなんです。
誰かが何か言うと、『どうして!』と強く応酬するが、肉体的にはか弱い。
初めての撮影時にドンヒョンが路地で群がって来る子供達を、ひょいっと避ける場面で、これなんだと思った。
リョウォンさんのような体つきだけが出せる感じがある。
声のトーンや 少し'はしゃいだ'性格もドンヒョンとよく合った。
この人を使わなかったら、大変な事になる所だったと思ったよ(笑)"
#3 孤独な都市
バレンタインの2月14日、ソウルの真ん中で、<痛み>の撮影が開始された。
いつも釜山(プサン)で撮影してきたクァクキョンテク監督には不慣れな経験だった。
映画のために、ソウルのあちこちを歩き回った彼は、初めて、愛情を持ってこの都市を覗いて見るようになったと告白する。
"襟だけかすめても縁だというのに、朝、家を出て、一日中歩き回ってみると、本当に多くの人と襟をかすめる。
そして家に帰ると、今日一日何をしたのかと、ぼんやりとした気持ちになる。
私にはそれがソウルであるようだ。"
彼はファンギソク撮影監督と相談して、主に弘大と明洞などの江北一帯で撮影をすることを決めた。
ナムスンとドンヒョンを群衆の中に置こうと思った。
二人の孤独感をより一層如実に伝達するためだった。
アクセサリーをデザインするドンヒョンには、弘大のファッションをプレゼントするかわりに
まったく人生に関心がないナムスンには、みすぼらしいよれよれの衣装を着せた。
毎朝、無関心に目覚める彼のむなしい内面は、スローモーション撮影で表現した。
フィルムカメラでの高速撮影を進行する一方、キヤノンEOS 5D MarkⅡのデジタルカメラを活用し、機動性を高めた。
同じデジタルカメラで広告を撮ったことのある、ファンギソク撮影監督の助けが大きかった。
最近、全体量の5分の1ほど撮影を終えたクァクキョンテク監督。
彼の初めての本格的恋愛映画<痛み>は、9月の劇場で会うことができる。
人生に無関心なナムスン...都会の孤独な男女のロマンス...
あぁ~、早く見たい