酔いどれ烏の夢物語

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酔いどれ烏の夢物語 初夏の風

2023-05-07 14:19:17 | ポエム

      

      初夏の風

ベンチで本を読んでいた 初夏の風が気持ちいい日

遠くで誰かが僕を見ていた 誰だろう知らない顔だ

僕は見ていないふりをして 本に目を戻した

やがて彼は近づいて来て 真澄ちゃんだよね と言った

僕は顔を上げて彼の顔を見た やっぱり知らない奴だ

僕を真澄ちゃんと呼ぶのは高校時代の悪友たちだけだ

だがこの大学に進学したのは僕一人の筈

どうして僕の名前を知っているの と尋ねると

二年前くらいからライブハウスに出てたよね 

女の子達が騒ぐから見に行った事があるんだ

 

確かにそんな時期もあった 四人でバンドを組んで

僕はいい意味でも悪い意味でも目立っていた

祖父がロシア人のせいか 僕の容姿は他人と違う

所謂クオーターなのだが 一番祖父の血を色濃く受け継いだ

そのせいか肌は白く 目の色も明るい茶色だ

子供の時から女の子によく間違えられる

名前も女の子にも付けられる名前だからか

けれど僕は祖父がつけてくれたこの名前が好きだ

使っていたギターも祖父のお下がりだ

僕が高三になる直前に他界してしまったが

 

それで僕に何か用? 僕は率直に尋ねた

実は昨日君を見かけて 人違いかとも思ったんだけど

それはそうだろうあの頃 どうせならもっと目立とう

という友達に誘われて 髪を伸ばし化粧までしていた

大学に入ったら絶対バンドを組みたいと思ってたんだ

メンバーは大体揃ったけど 肝心のボーカルが居ない

君はギターも上手いけど 歌も良かった

それに君が入ってくれたらバンドも華やかになる

華やかね だっていい曲作っても聞いてもらえなきゃ

考えておいてくれ 他のメンバーに紹介するから

 

彼はそう言って立ち去った 風がかさかさと葉を揺らした

そういえばアイツらも 大学でまたバンドを組んだらしい

今度はどんなバンドなんだろう ふと思った

祖父が死んでいろんな事があったから 忘れていたな

僕は目立つのは嫌いじゃない 歌うのも好きだ

彼の集めたメンバーに会ってから決めようかな

名前聞いて無かった まあいいか

僕は本を閉じベンチを立った 風が頬を撫でる

また何かを始めるのには良い季節だと思った

 


酔いどれ烏の夢物語 パステル

2023-04-30 15:13:27 | ポエム

   

   パステル

パステルの色鉛筆を買った

今の僕の気分みたいな

パステルの色鉛筆で何を描こう

綺麗な羽をした鳥も良い

色とりどりの猫も面白い

それとも童話に出てくるような

お菓子で出来た家を描こうか

そこに僕は住んでいて

君の帰りを待っている

 

パステル色の風船を買った

今の僕の心みたいな

淡くてすぐに汚れてしまいそう

だから全部膨らませて

いっそ空に浮かべようか

それなら屋根に紐で括って

家ごと空に浮かべようか

そして君と二人で

何処か遠くへ飛んでいこう


酔いどれ烏の夢物語 君に僕は恋をする

2023-04-30 14:22:31 | ポエム

     

   君に僕は恋をする

 

あけ放った窓から 暖かな風が

初夏の訪れの匂いを運んでくる

桜並木が薄いピンクの絨毯に覆われ

花壇に色とりどりの花たちが咲き乱れる

そして僕はまた 君に恋をする

 

柔らかな生地の 少し大きめのシャツ

長身の君によく似あっている

すれ違う女性たちが思わず振り向く

花たちが噂話でもするように風に揺れる

窓辺に立つ僕は 君に恋をする

 

大きくて指の長い 君の掌

笑いながら僕の髪をくしゃくしゃにする

もうすぐ君の好きな夏がやって来る

そうしたらまた二人で海に行こう

濡れた髪をかき上げる君に 僕は恋をする

 

        

 


酔いどれ烏の夢物語 恋愛

2023-04-19 06:04:42 | ポエム

   

    恋愛

憧れは 憧れにあらず

優しさは 優しさにあらず

誰かが言った 恋なんて只の幻

けれど僕はそうは思わない

だって僕は恋をして少し変わった

例え叶わない恋だとしても

それは僕の日常に生きる力をくれた

 

恋愛は 愛情にあらず

そんなもの 一時の感情に過ぎず

確かにそれは 一方的な想い

けれど人生に花を与える

つまらない日常に光を与えてくれる

それが一時の感情だとしても

それは僕の人生に大きな変化をもたらす

 

感情は 刻々と変わる

相手次第で 毒にも薬にもなる

それがどうした 何が悪い

僕は僕らしく生きる

例え苦しみが待っていたとしても

そんな事は僕にとって関係ない

僕は僕に正直でありたいと思っている

 

人の心なんて 移ろうもの

変わるのは 当たり前の事

それは最初から 解っている

だから人は努力する

今よりもっと自分を高めようと

恋とはそういうもの違うだろうか

失恋も後悔もしたくないから僕は進む

 

   

 

 

 

 


酔いどれ烏の夢物語 春色

2023-04-18 16:50:48 | ポエム

     

       春色

まだ今日が始まったばかりの早朝

春コートを着た 青年を見た

彼は春風の中 コートの裾を翻して

颯爽と軽い足取りで歩いていた

僕はそれをカフェの二階の窓から眺めていた

彼は地下鉄の駅に向かって 階段を降りた

彼の髪と春コートは 一層はためいた

なんだか今日は良い日になりそうだ

 

うららかに春めいた日の昼休み

春コートを着た 青年が居た

彼は誰かを待っている様だった

彼は顔を上げると軽く微笑んで手を挙げた

もう一人春色のジャケットを着た青年が来た

彼の春色ともう一人 春色の青年

二人はにこやかに笑って消えた

 

まだ少し寒いけれど春の日の

清々しくて 心和む光景だ

爽やかな彼らが少しだけ羨ましい

僕はふと彼らの幸せを願う自分に気付いた

こんな風に誰かの幸せを願えるようになったのも

僕が少しだけ 大人になれたのかも

ある春の日の何気ない出来事