春色
まだ今日が始まったばかりの早朝
春コートを着た 青年を見た
彼は春風の中 コートの裾を翻して
颯爽と軽い足取りで歩いていた
僕はそれをカフェの二階の窓から眺めていた
彼は地下鉄の駅に向かって 階段を降りた
彼の髪と春コートは 一層はためいた
なんだか今日は良い日になりそうだ
うららかに春めいた日の昼休み
春コートを着た 青年が居た
彼は誰かを待っている様だった
彼は顔を上げると軽く微笑んで手を挙げた
もう一人春色のジャケットを着た青年が来た
彼の春色ともう一人 春色の青年
二人はにこやかに笑って消えた
まだ少し寒いけれど春の日の
清々しくて 心和む光景だ
爽やかな彼らが少しだけ羨ましい
僕はふと彼らの幸せを願う自分に気付いた
こんな風に誰かの幸せを願えるようになったのも
僕が少しだけ 大人になれたのかも
ある春の日の何気ない出来事