カタスミ

『逆ソクラテス』伊坂幸太郎著

最高の読後感を約束するという文言に惹かれて購入。
小学生が主役の短編集。
以下ネタバレあり。























最高の読後感って言うほどのものではなかったけど
面白かったです。

●逆ソクラテス
いつも同級生や先生からいじられて
自信を無くすような事を言われていた草壁君。
見かねた転校生の安斉君が草壁君の印象を覆す為
語り手加賀君と試行錯誤するお話。

全て語り手が加賀君だと思っていたが
考察などを見ていると、最初の部分だけ久留米先生ではないか、
という事であった。
確かに当てはまるし、そうなのかもしれないが
個人的には最初だけ語り手が違うのはいらないなぁ…
先入観から子供に否定的な言葉を投げかけて
可能性を消してしまうのは自分も気をつけないと。
かといって、肯定ばっかりしていてもダメだろうし。
線引きが難しそうですなぁ…
プロ野球選手に褒められた事で自信がついた草壁君は
結果大人になってプロで活躍する選手になるが
約束のポーズは最後まで読んで、最初にやってたの
全く覚えてなかったので、後から入れて欲しかったわw
この人のお話は登場人物がリンクする事が多くて
転校してしまった安斉君がまた出てくるかなぁ…
と思ってたけどそうでもなかったのでちょっと残念でした。

●スロウではない
運動会のリレー選手に選ばれた
あまり運動が得意でない司と村田さん。
司の友達悠太や転校してきた高城さんに応援され
毎日リレーの練習に励む。
同じクラスのもう一つのリレーチーム、
足の速い渋谷亜矢が高城さんを目の敵にしていて
何かとつっかかってくる。
はたしてリレーはどうなるのか…

高城さんがいじめられっ子だったと思ったらいじめっ子だった
と言うお話なのだが、いじめられっ子の村田さんと
その事を暴露した高城さんがその後どうなったのかは
主役の司目線でしか語られないので
遠くから見てる感じが逆によかったかなぁ…?
大人になった現在、悠太と村田さんが結婚して
その隣にいるのがどうも高城さんっぽい…?という終わり方で
察して!って感じでしょうか。
この後にも登場する教師、磯憲が初登場の話。

●非オプティマス
久保先生の授業を妨害する騎士人。
それを良く思わない将太はある日
思いがけず転校生の保井福生と仲良くなる。
騎士人の授業妨害を阻止する為
弱みを握ろうとする将太と福生だったが
失敗し、危ない所を久保先生に助けてもらう。

保井福生のキャラが飄々としていて面白かった。
久保先生は過去に事故で恋人を亡くして
覇気の無い先生になってしまったのだけれども
事故の原因となってしまった潤の父親と話をし
少し自分を取り戻すのであった。
あの時二人が止めなかったら久保先生は
潤の父親をどうしていたんだろうなぁ…

●アンスポーツマンライク
バスケットのチームメンバーで定期的に集まる歩達5人。
顧問だった磯憲のお見舞いの帰りに
子供を狙った通り魔を5人で未然に防ぎ逮捕へと導く。
更にその数年後、5人で集まった時、
その通り魔が出所して襲いかかってきた。

めまぐるしく時は過ぎます。
いつも一歩踏み出せない歩も最後は頑張るのであった。
顧問の時は若々しい磯憲だが、癌で闘病生活に。
スロウではないでは白髪の磯憲が登場していたので
こっちの方が前の話か。
正確にはスロウではない過去→アンスポーツマンライク→スロウではない現在
って感じ??

●逆ワシントン
謙介と倫彦、それに京樹が
虐待を疑う靖の家を調査すべく
ゲームセンターでドローンをとって
偵察に向かう話。

なんか他の作品で出てきてそうなキャラが
いっぱい出てきてました。
実際の所、この人の作品は
作中だけでなく、他の本の登場人物とかに
繋がることもあるので、これ読んだだけじゃよく分からなかった。
ただ、最後の電気店の店員さんだけは
前話の通り魔だと分かって、ちょっとうるっときたわ。
結局靖も虐待では無かったし、
正直に謝ったのに怒られてしまったり、
電気屋のエピソードだったり、
バラバラの話が集まった感じがして
全体的にまとまりが無かったような…
その日にあった事を書きました…みたいな?
それが狙いなんだろうか…?
個人的にはつかみ所のない話だった。

全体的に爽やかな話が多くて
最高ではないけど、そこそこ良い読後感。
話をまたいでキャラが登場する事も多かったので
安斉君や磯憲の後日談なんか
もうちょっと詳しくあってもよかったかなぁ…
星は4つです。
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