旅行する間、自分の半生を振り返るというお話。
以下ネタバレあり。
私の歴史認識が非常に甘いので、
時代背景部分は理解しづらい部分が多々ありました。
(特にイギリス基準なのでいまいち分かりづらい。)
別にこれと言った盛り上がりがある訳でもなく
執事の人生を淡々と聞かされるのですが
読後感の沁み方がすごい。
哀愁、切なさ、ノスタルジー、懐古、センチメンタル
そういった言葉が思い浮かぶ。
すごい心に来る。なんか思い出しては泣けてくる。
主人公の執事スティーブンスは執事ロボットと言っていいほど
執事という職種に忠実で、人間味というものにやや欠けている。
長年一緒に働いていた女中頭ミス・ケントンの気持ちに
数十年を経た後の再会で気づき、恐らくは自分の気持ちもこの時初めて自覚して
非常に心を痛めるものの、最後はご主人様の為にジョークを学ぶ決意をする、
もう執事として生きる為に生まれてきた人だと思った。
こう執事道を極めて行けるというのは
ある意味人生幸せだと思うんだ。
女と生きてく道というのもあるにはあったけど
この人には向いてないと思う。
ミス・ケントンも、この人と生きていくのであれば
生涯を女中頭として生きて行くしか道はないので
少しでも愛情を求めるのであれば
ある意味、今辿っている人生で良かったのではないのかなぁ?
人生も終わりに近づくと
誰にでもああすればよかったとか、
あのときこうしていれば違う人生があったのにとか、
想い馳せる事は多々あると思う。
しかし、ifの世界を想像しても結局はどうしようもなく
今ある自分の人生を胸張って生きて行けばいいんじゃないかなぁ。
そう思えるように人生自分で選んで歩んで行ければいいなぁ。
スティーブンスはそういう意味では
少し人に委ね過ぎていたのかもしれない。
だからこそ人生を振り返り涙したのかもしれない。
その人がいなくなって空っぽになってしまったのかもしれない。
夕方が一日で一番いい時間、人生も然り。
夕暮れを見ているような何とも切ない、だがすがすがしい
そんな気持ちでいっぱいになった。
星4つです。
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