『死刑にいたる病』櫛木理宇著

この予告を見てめっちゃ面白そうで
映画か本かで悩んだんですが
やっぱ入るなら原作からだよな…
と言う訳で小説買いました。
以下ネタバレあり。




















冴えない大学生の雅也の元に
昔世話になったパン屋の主人で
今は連続殺人犯として刑務所にいる
榛村大和から手紙が届く。
現在立件されている9件の事件のうち
1件のみ自分は冤罪だと言う事を
証明する為手伝って欲しいという。
自分の理想の人生を歩めていない為
非常に鬱屈した日々を過ごしていた雅也は
この依頼を受け、毎日を過ごすうちに
どんどんと人が変わっていく。

という感じのお話。
雅也が大和がやった事件を
ずっと追いかけている話なので
基本は本当にあった事件を
ウィキペディアとかで読んでるみたいに
淡々とした事実の羅列って感じで進みます。

ただ、少しずつ少しずつ雅也が変わっていくのですが
良い方向に変わっていく部分もあるのですが
ねっとりと悪い方向に変わっていくのがどうにも気持ち悪い。
道行く小さな女の子を見て
どうやって拉致するか考えるとか
酔っ払いのおっさんを殺そうとしてみるとか…
その思考になんの疑問も持たない所が怖い。
徐々に染まって行くの見せ方上手い。
ウィキペディアとかで昔の事件読んだりしても
共感するのは被害者の方であって
犯人に共感する事はないんだけど
雅也はどんどん大和側の目線でものを見ちゃうようになるんだよなぁ…

このまま雅也が犯罪者になるのではないか…という所は
ハラハラして読みました。
追いかけている事件の容疑者ではないかと思われる
金山一輝から電話をもらい、そこで少し正気を取り戻す。
何度か失敗していたからこそ戻る事が出来てほんと良かった。
成功していたら積みですよ…

結局の所、冤罪事件と言っていた事件も大和の犯行で、
こういう風に他人をひっかき回す為に
あえて今までの自分とは違う犯行の仕方にしたのでは？
とも思われる…
とにかく他人を操るのが上手い、という人物像なので
この話に登場するほぼ全ての人が
大和に何らかの影響を及ぼされているという…
他人を操るのが上手いって言うか、操れそうな人を見つけるのが上手いのかな？
そう思うと、彼の印象を聞き回っていた時に
彼に対して良いイメージを持っていなかった人達は
自己防衛力が高いのでは無いかと思う。

でもさぁ、会話の内容とか刑務官が付き添いで聞いてるんだから
ちょっとおかしな事やってんな～？って思ったら
止めたりしないのかねぇ？
後、雅也のおかん、めっちゃ紛らわしい言い方するけど
あんな言い方されたら誰でも父親が大和って勘違いするよね？
あの言い方だけはちょっと違和感感じた。

雅也が大和目線で子供達をなめ回すように見ているのを読むと
そう簡単に親は子供から目を離してはいけないなぁと
改めて思った次第。
雅也はギリギリでなんとか回避できたけど
他にもいっぱい予備軍がいて
加納灯里なんかも、今はまだ良い方向への影響だけっぽいけど
今後不穏な空気を醸しだしていて嫌な感じだなぁ…
とにかく雅也は最終的には
少しだけ前に進めて良かったなぁと思う。

星は3.5。