厚生労働省は19日、米ノババックス社が開発した新型コロナウイルスワクチンを正式に承認した。国内で使える第4の選択肢となる。承認済みの3種類とは異なるタイプで、政府はアレルギー反応を避けるため接種していなかった人らの接種の促進につながると期待している。
「(ファイザー製やモデルナ製の)メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンに対するアレルギーがある人に接種してもらうことを念頭に、5月下旬から6月上旬にかけて合計約10万回分のワクチンを配送することを自治体に示した」。後藤茂之厚労相は19日の記者会見で、ノババックス製ワクチンについて説明した。
ノババックス製は遺伝子組み換え技術で作製したウイルスのたんぱく質の一部(組み換えたんぱく質)を投与し、免疫の反応を刺激する仕組みだ。同じ手法はB型肝炎などのワクチンでもすでに実用化している。ノババックス製は他の新型コロナのワクチンに比べ、副作用の頻度が低いといった海外の臨床試験(治験)データもある。
新型コロナ向けが世界初となったmRNAは開発スピードで勝る一方、接種が広がるにつれて発熱などの副作用がみられることが課題になっている。アストラゼネカ製は「ウイルスベクター型」と呼ぶ別のタイプだが、まれに起こる血栓症への懸念から国内での活用は限られていた。
政府はノババックス製と他のワクチンの交互接種をにらむ。交互接種の可否については厚労省の専門分科会で今後、議論する見通しだ。沖縄県など地方で感染が急拡大している状況を受け、政府は3回目の接種率向上を急いでいる。4月中旬で3回目の接種を完了したのは総人口の5割弱にとどまっている。
厚生労働省の専門部会は18日、米バイオテクノロジー企業ノババックスが開発した新型コロナウイルスワクチンについて、薬事承認することを了承した。厚労省は近く承認する方針だ。国内で使える4種類目の新型コロナワクチンとなる。同社から技術提供を受けた武田薬品工業が国内で製造する。政府は既に1億5000万回分の供給契約を結んでいる。
販売名は「ヌバキソビッド筋注」。国内での製造と流通を担う武田薬品工業が昨年12月に厚労省に薬事承認を申請していた。ウイルス由来のたんぱく質の一部を培養技術で増やし投与する「組み換えたんぱくワクチン」と呼ばれるタイプで、ワクチン未接種者は18歳以上を対象に、通常3週間間隔で2回、筋肉内に注射する。3回目の追加接種で使う場合は、2回目から少なくとも6カ月、間隔をあける。2~8度での冷蔵保存が可能で、輸送・管理がしやすいのが特徴だ。
米国などで約3万人を対象に行われた最終段階の治験では、発症予防効果は90・4%で、安全性の懸念は認められなかったとする。武田は国内でも約200人を対象に実施し、海外同様良好な結果が得られたとしている。米国では食品医薬品局(FDA)での審査が続いているが、欧州連合の薬事規制当局、欧州医薬品庁(EMA)は昨年12月に使用を許可している
厚生労働省は13日、ロシアのウクライナ侵攻に伴い、歯科の治療に使う銀歯の材料パラジウムの価格が高騰していることを受け、医療機関が銀歯を使った場合に受け取る「公定価格」を5月に緊急で約8%引き上げることを決めた。窓口負担3割の患者の場合、1カ所の銀歯治療につき数十~数百円程度の負担増につながるとみられる。
同日の中央社会保険医療協議会(中医協、厚労相の諮問機関)で了承された。医療機関が仕入れる際の市場価格が急騰し、公定価格で採算が合わない事態が発生していた。
5月の公定価格見直しで現在の1グラム当たり3149円を8.38%上げ、3413円とする。