防衛省は29日、自衛隊が東京・大手町で運営する新型コロナウイルスの大規模ワクチン接種会場について、予約が低迷しているため、4月4日から27日まで、1日当たりの接種人数を現行の5040人から3千人に減らすと明らかにした。縮小するのは1週間のうち日曜から木曜の5日間で、比較的予約が入っている金曜と土曜は5040人を維持する。
防衛省によると、大型連休期間を含む28日から5月8日は再び5040人とする。5月9日以降の接種人数は、今後の予約状況を見て判断する。
大阪会場の接種人数は1日当たり2500人で変わらない。
新型コロナウイルス対策における高齢者への3回目のワクチン接種が80%を超えたことが28日、政府の集計で判明した。オミクロン株による感染流行の第6波は感染者数の減少局面に入ったものの、下げ止まりがみられる地域もある。年度替わりでの接触機会の増加と、オミクロン株の派生型「BA・2」への置き換わりが懸念される中で、接種の進展が医療負荷の軽減につながるとの期待もある。
「感染者が増え、医療の負荷や死者の増加傾向が予測される状況になれば、当然、対策が必要になってくる」。厚生労働省にコロナ対策を助言する専門家組織の脇田隆字(たかじ)座長は15日の会見で、リバウンド発生時の対応にこう言及した。
発言の念頭には、過去最多の感染者数と死者数を出した第6波の感染拡大があったとみられる。死者の多くは70代以上の高齢者で、コロナ感染で持病を悪化させての死亡例も目立った。
第6波ではオミクロン株の「BA・1・1」系統が主流だが、これより26%感染力が強いとされる「BA・2」への置き換わりが進む。国立感染症研究所は既にBA・2が過半数を占めている可能性があると分析し、5月上旬にはほぼ完全に置き換わるとみている。
第6波と同様にBA・2の感染が現役世代に広がれば医療従事者の欠勤による医療体制の縮小が生じ、高齢層の死者数増加という事態が再び起きかねない。
21日で蔓延防止等重点措置も全面解除された上、年度替わりや春休み、花見のシーズンが重なり、人々の接触機会の増加が見込まれるという状況もある。
しかし、第6波の流行期と異なるのは、3回目のワクチン接種率だ。27日時点のデータでは、感染者数がピークだった2月1日時点で8・6%と1割にも満たなかった高齢者の接種率は3月10日に7割を超えた。高齢者の死者・重症者が比較的少なかった昨夏の第5波では、急拡大前の7月下旬に高齢者の7割が2回接種を終え、8月に入った時点で8割を超えていた。
2回接種後からの時間経過で著しく低下したオミクロン株感染への発症予防効果が3回目接種で回復する上、BA・1とBA・2で効果に大きな違いがないとの報告がある。さらに、専門家の間では感染・入院予防効果も取り戻せるとの見方が広がっている。
脇田氏は「重点措置の解除で新規感染者数の上昇圧力は強まるが、高齢者へのワクチン接種で重症化予防効果が効いてくれば医療の負担が軽減される期待もある。基本的な対策で感染状況の改善を継続し、医療の負荷を見ていく必要がある」との認識を示した。
新型コロナウイルス対策で適用されていた蔓延(まんえん)防止等重点措置が今月21日で解除されたが、既に次の第7波への警戒が強まりつつある。現在の主流株に比べ感染力が高いオミクロン株の系統株「BA・2」への置き換わりが進み、4月中に国内での検出割合がほぼ100%に達するとみられるためだ。ウイルス特性の解明が進むが、ワクチンや治療薬の効果はあるのか。影響を探った。
国内で流行するオミクロン株は、当初は系統株「BA・1」と、その表面のスパイクタンパク質に1カ所変異が入った「BA・1・1」があったが、感染が広がるにつれてBA・1・1が主流になった。
オミクロン株の解析を行っている東京大の佐藤佳准教授(ウイルス学)によると、BA・1・1はBA・1よりやや感染力が高いが、特性はほぼ同じと考えられている。一方、BA・2はスパイクの塩基配列がBA・1と大きく異なっており、より感染性を高めているとみられる。すでにデンマークや英国では主流株がBA・2にほぼ置き換わり、フィリピンなどの東南アジア地域でも顕著な増加傾向にある。
佐藤准教授は「BA・2はBA・1・1よりもさらに感染力が高い。BA・2の割合が増えている他国で感染の再拡大が起きているように、置き換わりが進む中で人流が活発になると、日本でも感染が拡大するだろう」と指摘する。蔓延防止等重点措置の解除で街に人波が戻り、BA・2の感染拡大が第6波より高い波を引き起こす可能性も懸念されている。
23日に行われた厚生労働省の専門家組織の会合で示された資料によると、BA・2はBA・1・1を含むBA・1と比べ、感染後に他の人にうつるまでの日数を示す世代時間が15%短く、感染者1人が何人に感染を広げるかを示す実効再生産数が26%高い。また、国立感染症研究所の予測では、検出割合は4月第1週時点で72%、5月第1週時点で97%に達する。
座長の脇田隆字感染研所長はBA・2への置き換わりに関し、「感染拡大の圧力になるだろう。今後、感染者数が再度増加に転じる可能性がある」と語った。
病原性をめぐり、英国保健当局はBA・2感染後の入院リスクが「BA・1より高まっているとはいえない」と報告している。ただ、東大などの研究チームの動物実験の結果によると、肺組織に早く広がりやすく、BA・1への感染による免疫がBA・2には効きづらい可能性もあるという。海外ではBA・1感染者のBA・2への再感染も報告されている。
一方、ワクチン効果に関しては、英国のデータによると、発症予防効果は、2回接種から25週以降でBA・1は10%、BA・2は18%。3回目接種だと、2~4週後でBA・1が69%、BA・2は74%に高まり、10週以降はBA・1が49%、BA・2は46%に減少するなど同様の傾向を示している。
国内で承認されている治療薬については、東大や感染研などの研究グループが、中和抗体薬の効果が従来株よりも低い懸念があるものの、細胞実験で一定の効果を確認。レムデシビルやモルヌピラビルなどの抗ウイルス薬は高い効果を維持していると発表した。
長野県の阿部守一知事は24日、会見で県の新型コロナウイルス対策を新規感染者の抑制から高齢者などの重症化を防ぐ方向へ転換することを明らかにしました。
阿部守一知事:
「新規陽性者数の抑制から重症化リスクの高い方を守るという方向に対策の力点を変えていきたい」
現在の「第6波」では若い世代の感染者が増える一方、ワクチンの効果もあって、入院者は減る傾向にあります。
こうした実情に合わせ、県は濃厚接触者を詳しく調べて新たな感染者を抑制する従来の対策を高齢者や基礎疾患のある人を重点的に守るよう転換します。
具体的には来週の専門家懇談会を経て決まりますが、6段階ある県独自の感染警戒レベルの基準の見直しなどが見込まれます。