安馬に自分を重ねて

もう１０年も前の話になる
大学の授業をサボって部屋でだらだらしてた時期

昼間のテレビはどれもつまんなくて
ザッピングを繰り返し、落ち着いたのが大相撲をやっていたＮＨＫだった

何日も学校をサボっていると、
そうつまり何日も続けて相撲を見ていると

その瞬間の取組みだけじゃない
力士ごとのストーリーがだんだんと見えてきた


幕内最軽量のその力士は
自分の持てる限りの力で真っ向相手にぶつかって
そして負けた

翌日もまた
誰よりも低い位置から立って
全力で当たって
そして負けた


あぁ彼は、俺なんだな、って思った


「持っているカードで勝負するしかないのさ」
そう言ったのは絵の中のしゃべる犬だけど

俺には土の付いた安馬の背中こそがそう言っているように聞こえた

僕にできないこと

個を応援することはできるんだけど
群を応援することができない

試験当日に『頑張れ受験生』って言うけど、
みんな頑張ったら平均点が上がるだけで何も起きないじゃん


お前は頑張れ
お前だけが突出した結果を出せ
お前こそが選ばれるべきだ


でも
雪の中、生足を晒して歩く女子高生の姿に
『頑張れ女子高生』と思った