若い頃に「読もう、読もう」と思っていたのに読まずじまいだった小説の一つ、メルヴィルの「白鯨」。読むことにして図書館で借りてきたけど、集密書架から出てきていた。昭和43年発行の世界文学全集の一冊。ハードカバーの分厚い本の上に、上下二段組。
「白鯨」は名著で映画化までされている割に、表現が難しい上に量が多いので、意外と読まれていない作品として有名だが、図書館から借りてきて開いたら、新品図書を書店で買ってきたときのように、ひもしおりが中で丸まった状態だったので、図書館に収納以来50年以上、誰も読まないまま所蔵されていたのであろうか……。
ストーリーは、巨大な白鯨によって片足を奪われた捕鯨船の艦長エイハブが復讐の鬼となって、語り部である若者ら乗員を引き連れ、大洋で白鯨と壮絶な戦いを繰り広げるというもの。
面白いのは、この小説が書かれたのは日本では幕末期になるが、ちょくちょく、捕鯨の舞台として「日本」という言葉が出てくること。当時のアメリカはバリバリの捕鯨国で、世界の海で鯨を捕りまくっていた。
日本近海での捕鯨のために、燃料、食料、水の補給や避難のための港を獲得すべく、ペリーを日本に派遣して無理やり開国させた。日本にとっては体制を揺るがすほどの歴史的大事件だったが、アメリカにとっては、たかだか捕鯨のため。
歴史は流れて昭和になり、日本が捕鯨国になるや、捕鯨自体が国際的な非難を浴びることになるとは、皮肉な話。