「弟の部屋に入ったことを、咎めるつもりはない」
ガトーは落とした剣を拾い、私を部屋から追い出そうとした。
「ガ……とぅ……」
私は嫌がったがガトーの力が強く、部屋の外に閉め出されてしまった。
仕方なく、下に降りることにした。行く当てはあったからだ。
「そうか……。言ってしまったか」
ちょうど砂鉄を溶かしている真っ最中で物凄い熱気に包まれている中、親父さんに事情を話した。
「ごめんなさい。黙っておく約束だったのに……」
「いや。言うと思ってな、あの部屋のカギを渡した」
「どうしてですか?」
「ガトーがお前さんに、心を開いているからだよ。見ず知らずの人にあんな風に振る舞うなんて久しく見ていなかったからな」
「でも、私はガトーを傷つけた……」
「気にすることはない。ああでもしないとガトーは自分から変わろうとしない」
そうは言ってもねぇ……。
私は怖くてガトーに近寄れなくなった。また傷つけてしまうような気がして。
家にも居づらく何となく街をぶらついていたが、いい解決策を思いつかないまま日が暮れてしまった。
ガトーはともかく、親父さんに心配がかかるので戻ることにした。すると本日の食事当番のガトーがキッチンで忙しく動き回っていた。
「リリー。お帰り、遅かったな」
怒っている様子もなく、いつも通りってところだった。私は恐る恐る席に着くと、目の前にビーフシチューを置いてくれた。そして、真向かいに座った。
「そういえば、その……。ミミってどんな猫だった?」
突然の質問にビックリしたが、茶色の猫と答えた。
「もし、よかったら、夕食が終わったら外に行かないか? 話したいこともある」
私はもちろんOKをし、夜の街に出た。大通りを避け、静かな川沿いを歩いた。
「あまり、触れられたくないことを知られて動揺していた。ごめんな」
「私も……ごめんなさい。ガトーのことが知りたくて」
「どうせ、あのクソ親父がしたことだ。……ったく、ろくな事をしない」
「親に心配して貰えて、ガトーはいいな」
「……ずっと、一人だっけ?」
「私、ガトーが羨ましかった。兄弟なんていなかったし、気遣ってくれる人が私にはいなかった……」
「リリー。必ず、無事に元の世界に送り届けるよ」
「……うん、わかった。でも、そしたら寂しくなるね」
「まあ、そう……だな」
夜風が二人の間をすり抜けるが、寒さはなかった。
「しかし、それも王女さえどうにか出来ればの話だ」
「その……。復讐するの?」
一瞬の躊躇はあったが、聞かなきゃいけないような気がした。
「復讐心がないと言ったら確かにウソになるな。でもな、王女に物申したいだけだ。武力は最終手段だ」
こうやって外に出る際も、ガトーは剣を背負って出歩く。
「リリーと出会ったときの衛兵たち、覚えている? 部外者がどうこう言っていなかったか?」
「そういえば……。そんなことを言っていたような……」
「帰る手段が城となると、いろいろと話さないとダメだろうな」
ガトーは夜空を見上げ、深呼吸をした。
「もうずっと前か……。国外からの侵略があってな。それは抑えられたが、それ以来というもの王女はおかしくなってな……。弟の為にもどうにかしたいだけだよ」
今夜もガトーと同じ部屋に寝ることになった。ただ違っていたのは同じ布団の中だった。外では話しきれないことをずっと話し合っていた。
夜も深くなり睡魔も訪れてきたので、まだ話し足りないが切り上げることになった。
「明日、朝食を食べたらここを出る」
私は、返事をする代わりに、ガトーの手を優しく握った。
≪ 第8話-[目次]-第10話 ≫
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ガトーは落とした剣を拾い、私を部屋から追い出そうとした。
「ガ……とぅ……」
私は嫌がったがガトーの力が強く、部屋の外に閉め出されてしまった。
仕方なく、下に降りることにした。行く当てはあったからだ。
「そうか……。言ってしまったか」
ちょうど砂鉄を溶かしている真っ最中で物凄い熱気に包まれている中、親父さんに事情を話した。
「ごめんなさい。黙っておく約束だったのに……」
「いや。言うと思ってな、あの部屋のカギを渡した」
「どうしてですか?」
「ガトーがお前さんに、心を開いているからだよ。見ず知らずの人にあんな風に振る舞うなんて久しく見ていなかったからな」
「でも、私はガトーを傷つけた……」
「気にすることはない。ああでもしないとガトーは自分から変わろうとしない」
そうは言ってもねぇ……。
私は怖くてガトーに近寄れなくなった。また傷つけてしまうような気がして。
家にも居づらく何となく街をぶらついていたが、いい解決策を思いつかないまま日が暮れてしまった。
ガトーはともかく、親父さんに心配がかかるので戻ることにした。すると本日の食事当番のガトーがキッチンで忙しく動き回っていた。
「リリー。お帰り、遅かったな」
怒っている様子もなく、いつも通りってところだった。私は恐る恐る席に着くと、目の前にビーフシチューを置いてくれた。そして、真向かいに座った。
「そういえば、その……。ミミってどんな猫だった?」
突然の質問にビックリしたが、茶色の猫と答えた。
「もし、よかったら、夕食が終わったら外に行かないか? 話したいこともある」
私はもちろんOKをし、夜の街に出た。大通りを避け、静かな川沿いを歩いた。
「あまり、触れられたくないことを知られて動揺していた。ごめんな」
「私も……ごめんなさい。ガトーのことが知りたくて」
「どうせ、あのクソ親父がしたことだ。……ったく、ろくな事をしない」
「親に心配して貰えて、ガトーはいいな」
「……ずっと、一人だっけ?」
「私、ガトーが羨ましかった。兄弟なんていなかったし、気遣ってくれる人が私にはいなかった……」
「リリー。必ず、無事に元の世界に送り届けるよ」
「……うん、わかった。でも、そしたら寂しくなるね」
「まあ、そう……だな」
夜風が二人の間をすり抜けるが、寒さはなかった。
「しかし、それも王女さえどうにか出来ればの話だ」
「その……。復讐するの?」
一瞬の躊躇はあったが、聞かなきゃいけないような気がした。
「復讐心がないと言ったら確かにウソになるな。でもな、王女に物申したいだけだ。武力は最終手段だ」
こうやって外に出る際も、ガトーは剣を背負って出歩く。
「リリーと出会ったときの衛兵たち、覚えている? 部外者がどうこう言っていなかったか?」
「そういえば……。そんなことを言っていたような……」
「帰る手段が城となると、いろいろと話さないとダメだろうな」
ガトーは夜空を見上げ、深呼吸をした。
「もうずっと前か……。国外からの侵略があってな。それは抑えられたが、それ以来というもの王女はおかしくなってな……。弟の為にもどうにかしたいだけだよ」
今夜もガトーと同じ部屋に寝ることになった。ただ違っていたのは同じ布団の中だった。外では話しきれないことをずっと話し合っていた。
夜も深くなり睡魔も訪れてきたので、まだ話し足りないが切り上げることになった。
「明日、朝食を食べたらここを出る」
私は、返事をする代わりに、ガトーの手を優しく握った。
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