「――それで、相変わらずあの刀か?」
「左様とも。この刀には、皆の期待がかかっているのだ!」
鞘から抜き出すと反射光で銀色に輝き、そして刃先をオレの方に向けてきた。
「師匠の形見だっけ? 前に聞いたな」
「パスクさん。あなたを倒します! これは拙者の罪滅ぼしでもある」
「お前の諸事情なんぞ知るか! こっちにも約束ってものがある」
面倒なやつを相手にしてしまったな……。
「では。いざ勝負!!」
利汰右衛門は、空を差すように刀を上方に向けて構える。そして、電光のように素早く走り込んでくると勢いそのままに刀を振り下ろした。
「避けないのか……」
「悪いが、避けるほどじゃあないね」
我が愛剣は、利汰のものを違って直線の長剣になるが、利汰右衛門の刀をしっかりと受け止めてくれた。
しかし、避けなかったのは正解だったかもしれない。こちらが避けることを想定して、次の手を考えていた。というのは、受け止めたが思っていたより重さがなかった。材質の違いで重さ自体の差はあるが、あいつは明らかに振り落としてから力を抜いた。わざと逃げさせてそこを狙って斬るつもりだったのだろう。ケガもしているので、俊敏には動けないだろう……などと思案していただろう。
受け止めた刀を弾き返し、利汰右衛門との間合いを空ける。
「今度は、確実に仕留めさせていただく」
「そうはさせないさ」
再び混じり合い、ほぼ互角の戦いを起こす。
利汰右衛門のことは、一度は手合わせをしているので、よく知っている。そして、あの後のことを熟知している。普段はおちゃらけているところもあるが、隠したい過去がある。むしろ隠したいからああいう振る舞いをしているものだと、オレはそう受け取っている。
力不足で大怪我を強いられてしまうが、利汰右衛門は一人で山賊を追い払うことに成功した。そして、天寿を全うした師匠の代わりに、王室直属騎士団を目指すことになった。もちろん町の人々は歓喜した。だがそれは表向きだったことくらい、利汰右衛門も理解していた。たった一度逃げ出した事により失ったものの大きさを、顔には出さなかったが常に痛感していた。仮に王室直属騎士団になったところで失ったものが戻ってくる保証なんてどこにもない。それでも利汰右衛門が王室直属騎士団を目指したのは、自分の存在価値がそこにしかなかったから。
「スキあり!」
利汰右衛門が僅かなチャンスを見逃さず振りかざし、それを避けようとしたがかなり無理な体勢から動いたために、左脇腹に激痛が走った。
「あああぁっぁあぁ……!」
えぐり取られたような痛みを抑えずにはいられなかった。
「どうやら、傷口が開いたようだな」
「あぁっあ……!」
利汰右衛門が言うように、前の戦いで負った傷口のものだった。
「では。これで終わりにしてさしあげます」
左手で傷口を押さえ、激痛で顔が歪むオレに向かって、全力で利汰右衛門が斬りかかってきた。
≪ 第7話-[目次]-第9話 ≫
------------------------------
↓今後の展開に期待を込めて!
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「左様とも。この刀には、皆の期待がかかっているのだ!」
鞘から抜き出すと反射光で銀色に輝き、そして刃先をオレの方に向けてきた。
「師匠の形見だっけ? 前に聞いたな」
「パスクさん。あなたを倒します! これは拙者の罪滅ぼしでもある」
「お前の諸事情なんぞ知るか! こっちにも約束ってものがある」
面倒なやつを相手にしてしまったな……。
「では。いざ勝負!!」
利汰右衛門は、空を差すように刀を上方に向けて構える。そして、電光のように素早く走り込んでくると勢いそのままに刀を振り下ろした。
「避けないのか……」
「悪いが、避けるほどじゃあないね」
我が愛剣は、利汰のものを違って直線の長剣になるが、利汰右衛門の刀をしっかりと受け止めてくれた。
しかし、避けなかったのは正解だったかもしれない。こちらが避けることを想定して、次の手を考えていた。というのは、受け止めたが思っていたより重さがなかった。材質の違いで重さ自体の差はあるが、あいつは明らかに振り落としてから力を抜いた。わざと逃げさせてそこを狙って斬るつもりだったのだろう。ケガもしているので、俊敏には動けないだろう……などと思案していただろう。
受け止めた刀を弾き返し、利汰右衛門との間合いを空ける。
「今度は、確実に仕留めさせていただく」
「そうはさせないさ」
再び混じり合い、ほぼ互角の戦いを起こす。
利汰右衛門のことは、一度は手合わせをしているので、よく知っている。そして、あの後のことを熟知している。普段はおちゃらけているところもあるが、隠したい過去がある。むしろ隠したいからああいう振る舞いをしているものだと、オレはそう受け取っている。
力不足で大怪我を強いられてしまうが、利汰右衛門は一人で山賊を追い払うことに成功した。そして、天寿を全うした師匠の代わりに、王室直属騎士団を目指すことになった。もちろん町の人々は歓喜した。だがそれは表向きだったことくらい、利汰右衛門も理解していた。たった一度逃げ出した事により失ったものの大きさを、顔には出さなかったが常に痛感していた。仮に王室直属騎士団になったところで失ったものが戻ってくる保証なんてどこにもない。それでも利汰右衛門が王室直属騎士団を目指したのは、自分の存在価値がそこにしかなかったから。
「スキあり!」
利汰右衛門が僅かなチャンスを見逃さず振りかざし、それを避けようとしたがかなり無理な体勢から動いたために、左脇腹に激痛が走った。
「あああぁっぁあぁ……!」
えぐり取られたような痛みを抑えずにはいられなかった。
「どうやら、傷口が開いたようだな」
「あぁっあ……!」
利汰右衛門が言うように、前の戦いで負った傷口のものだった。
「では。これで終わりにしてさしあげます」
左手で傷口を押さえ、激痛で顔が歪むオレに向かって、全力で利汰右衛門が斬りかかってきた。
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