おちゃらけていると思っていたタトリーニは、攻撃の本気度を増してきた。
山を利用した戦術をとり、打ち合いとなった。
「さっきの攻撃は、たまがったな!」
「人が作った風呂を荒らしやがって! もうちょっと叩かれろ!」
のんびり風呂に浸かっているところへ、奇襲をかけたことを根に持っていた。勝手に入った上、ゴミ混じりの川の水を入れた報いだ。
『ちゃらけて見えて、あいつは動きが良い。それでもオレは——』
山の傾斜に沿うように、タトリーニとの間合いを少しずつ詰めていく。そして、ちょっとずつ山を上がっていく。向こうも同じようなことを考えているのか、同調した動きを見せる。斜面の上を取っておけば有利だから、互いに見えない攻防が続いた。
時折、フェイントを入れてみるが、引っかかってくれない。相当警戒しているようだ。
木々が邪魔をしているので、なかなか踏み込めないのも事実だった。
一瞬のスキを見逃さず、意を決する。僅かな木々の隙間を縫い、一気に詰めた。すぐさま振り抜く。
「……やるな」
「易々と、スキを与えてたまるか」
タトリーニに見抜かれ、剣同士で押し合いになる。互いに睨み合ったのち、打ち合いへと発展した。
激しく打ち合うと、斜面を下っていった。
すると、なにかが背中にぶつかった。
「チャンス!」
後ろには大木、目の前にはタトリーニに挟まれた。ここぞとばかりに斬りかかってきた。
「くそっ……」
咄嗟に右へ回避した。勢い余ってタトリーニの剣は、大木に挟まった。
「形勢逆転だな……」
この転機を逃さないと仕掛けてみたが、寸前でかわされた。間合いを空けて、お互い呼吸を整えた。
「あと少しで強制的に降参だったのにな……」
タトリーニは、間際で引き抜けた剣の刃を眺め、調子を確かめていた。
選考会の場合、手持ちの剣を失うと『反撃不可』となり、勝負が決まる。そのことを考慮して、寸止めで抑えていた。しかし、直前でかわされてしまったが……。
緊迫した状況続きだったが、一息ついて心拍数も落ち着いてきた。
一息吐いて地面を蹴り出し、再び間合いを詰める。フェイントを入れて誘い出す。まんまとかかったところを振り抜く。避けようと体勢を崩す。
「うぎっ……」
体制を戻させないように尚も振り続ける。
「今度はさせない!」
一切反撃の機会を与えなかった。
いつの間にやら傾斜が緩くなり、山中だが平らな原に出てきてしまった。
タトリーニは間合いを十分に空けて、一息入れるも、肩が激しく上下していた。
「パスクに、ここまでされるとは……」
「オレを見くびるからだ」
「……とは言え、策がある」
不敵な笑みを見せながら構えると、一気にギアを上げたかのようにスピードアップしてきた。先程の斜面での戦闘が嘘のように思えるくらい。
『こいつ、ワザと食らっていたか……』
斜面での争いが不利とみるや、平坦な方へ誘導してきたか。そうなると、この辺りの地形は調査済みって事になるか。
反撃させないと、攻撃の手を緩めてこなかった。
「覚悟!」
勝負を決めにかかろうと、更にギアを上げてきた。
「降参してもいいぜ!」
「まさかな!」
つい思わず、笑ってしまった。
「だったら、思う存分楽しませてやるよ!」
「ああ、十分楽しいよ。剣術を始めた頃みたいに!」
キョウコには、いろいろ感謝しなきゃな……。命を救ってもらったこともだが、いい助言をしてもらったと思う。
そしてこの勝負、確実に決められる。その自信がオレにはある。
≪ 第38話-[目次]-第40話 ≫
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山を利用した戦術をとり、打ち合いとなった。
「さっきの攻撃は、たまがったな!」
「人が作った風呂を荒らしやがって! もうちょっと叩かれろ!」
のんびり風呂に浸かっているところへ、奇襲をかけたことを根に持っていた。勝手に入った上、ゴミ混じりの川の水を入れた報いだ。
『ちゃらけて見えて、あいつは動きが良い。それでもオレは——』
山の傾斜に沿うように、タトリーニとの間合いを少しずつ詰めていく。そして、ちょっとずつ山を上がっていく。向こうも同じようなことを考えているのか、同調した動きを見せる。斜面の上を取っておけば有利だから、互いに見えない攻防が続いた。
時折、フェイントを入れてみるが、引っかかってくれない。相当警戒しているようだ。
木々が邪魔をしているので、なかなか踏み込めないのも事実だった。
一瞬のスキを見逃さず、意を決する。僅かな木々の隙間を縫い、一気に詰めた。すぐさま振り抜く。
「……やるな」
「易々と、スキを与えてたまるか」
タトリーニに見抜かれ、剣同士で押し合いになる。互いに睨み合ったのち、打ち合いへと発展した。
激しく打ち合うと、斜面を下っていった。
すると、なにかが背中にぶつかった。
「チャンス!」
後ろには大木、目の前にはタトリーニに挟まれた。ここぞとばかりに斬りかかってきた。
「くそっ……」
咄嗟に右へ回避した。勢い余ってタトリーニの剣は、大木に挟まった。
「形勢逆転だな……」
この転機を逃さないと仕掛けてみたが、寸前でかわされた。間合いを空けて、お互い呼吸を整えた。
「あと少しで強制的に降参だったのにな……」
タトリーニは、間際で引き抜けた剣の刃を眺め、調子を確かめていた。
選考会の場合、手持ちの剣を失うと『反撃不可』となり、勝負が決まる。そのことを考慮して、寸止めで抑えていた。しかし、直前でかわされてしまったが……。
緊迫した状況続きだったが、一息ついて心拍数も落ち着いてきた。
一息吐いて地面を蹴り出し、再び間合いを詰める。フェイントを入れて誘い出す。まんまとかかったところを振り抜く。避けようと体勢を崩す。
「うぎっ……」
体制を戻させないように尚も振り続ける。
「今度はさせない!」
一切反撃の機会を与えなかった。
いつの間にやら傾斜が緩くなり、山中だが平らな原に出てきてしまった。
タトリーニは間合いを十分に空けて、一息入れるも、肩が激しく上下していた。
「パスクに、ここまでされるとは……」
「オレを見くびるからだ」
「……とは言え、策がある」
不敵な笑みを見せながら構えると、一気にギアを上げたかのようにスピードアップしてきた。先程の斜面での戦闘が嘘のように思えるくらい。
『こいつ、ワザと食らっていたか……』
斜面での争いが不利とみるや、平坦な方へ誘導してきたか。そうなると、この辺りの地形は調査済みって事になるか。
反撃させないと、攻撃の手を緩めてこなかった。
「覚悟!」
勝負を決めにかかろうと、更にギアを上げてきた。
「降参してもいいぜ!」
「まさかな!」
つい思わず、笑ってしまった。
「だったら、思う存分楽しませてやるよ!」
「ああ、十分楽しいよ。剣術を始めた頃みたいに!」
キョウコには、いろいろ感謝しなきゃな……。命を救ってもらったこともだが、いい助言をしてもらったと思う。
そしてこの勝負、確実に決められる。その自信がオレにはある。
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