Kitten Heart BLOG -Yunaとザスパと時々放浪-

『きとぅん・はーと』でも、小説を公開している創作ファンタジー小説や、普段の日常などの話を書いているザスパサポーターです。

【小説】「パスク、あの場所で待っている」第39話

2020年03月04日 06時07分39秒 | 小説「パスク」(連載中)
 おちゃらけていると思っていたタトリーニは、攻撃の本気度を増してきた。
 山を利用した戦術をとり、打ち合いとなった。
「さっきの攻撃は、たまがったな!」
「人が作った風呂を荒らしやがって! もうちょっと叩かれろ!」
 のんびり風呂に浸かっているところへ、奇襲をかけたことを根に持っていた。勝手に入った上、ゴミ混じりの川の水を入れた報いだ。
『ちゃらけて見えて、あいつは動きが良い。それでもオレは——』
 山の傾斜に沿うように、タトリーニとの間合いを少しずつ詰めていく。そして、ちょっとずつ山を上がっていく。向こうも同じようなことを考えているのか、同調した動きを見せる。斜面の上を取っておけば有利だから、互いに見えない攻防が続いた。
 時折、フェイントを入れてみるが、引っかかってくれない。相当警戒しているようだ。
 木々が邪魔をしているので、なかなか踏み込めないのも事実だった。
 一瞬のスキを見逃さず、意を決する。僅かな木々の隙間を縫い、一気に詰めた。すぐさま振り抜く。
「……やるな」
「易々と、スキを与えてたまるか」
 タトリーニに見抜かれ、剣同士で押し合いになる。互いに睨み合ったのち、打ち合いへと発展した。
 激しく打ち合うと、斜面を下っていった。
 すると、なにかが背中にぶつかった。
「チャンス!」
 後ろには大木、目の前にはタトリーニに挟まれた。ここぞとばかりに斬りかかってきた。
「くそっ……」
 咄嗟に右へ回避した。勢い余ってタトリーニの剣は、大木に挟まった。
「形勢逆転だな……」
 この転機を逃さないと仕掛けてみたが、寸前でかわされた。間合いを空けて、お互い呼吸を整えた。
「あと少しで強制的に降参だったのにな……」
 タトリーニは、間際で引き抜けた剣の刃を眺め、調子を確かめていた。
 選考会の場合、手持ちの剣を失うと『反撃不可』となり、勝負が決まる。そのことを考慮して、寸止めで抑えていた。しかし、直前でかわされてしまったが……。
 緊迫した状況続きだったが、一息ついて心拍数も落ち着いてきた。
 一息吐いて地面を蹴り出し、再び間合いを詰める。フェイントを入れて誘い出す。まんまとかかったところを振り抜く。避けようと体勢を崩す。
「うぎっ……」
 体制を戻させないように尚も振り続ける。
「今度はさせない!」
 一切反撃の機会を与えなかった。
 いつの間にやら傾斜が緩くなり、山中だが平らな原に出てきてしまった。
 タトリーニは間合いを十分に空けて、一息入れるも、肩が激しく上下していた。
「パスクに、ここまでされるとは……」
「オレを見くびるからだ」
「……とは言え、策がある」
 不敵な笑みを見せながら構えると、一気にギアを上げたかのようにスピードアップしてきた。先程の斜面での戦闘が嘘のように思えるくらい。
『こいつ、ワザと食らっていたか……』
 斜面での争いが不利とみるや、平坦な方へ誘導してきたか。そうなると、この辺りの地形は調査済みって事になるか。
 反撃させないと、攻撃の手を緩めてこなかった。
「覚悟!」
 勝負を決めにかかろうと、更にギアを上げてきた。
「降参してもいいぜ!」
「まさかな!」
 つい思わず、笑ってしまった。
「だったら、思う存分楽しませてやるよ!」
「ああ、十分楽しいよ。剣術を始めた頃みたいに!」
 キョウコには、いろいろ感謝しなきゃな……。命を救ってもらったこともだが、いい助言をしてもらったと思う。
 そしてこの勝負、確実に決められる。その自信がオレにはある。


≪ 第38話-[目次]-第40話 ≫
------------------------------

↓今後の展開に期待を込めて!
にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« J2リーグが延期になりました | トップ | 【小説】「パスク、あの場所... »

コメントを投稿