Kitten Heart BLOG -Yunaとザスパと時々放浪-

『きとぅん・はーと』でも、小説を公開している創作ファンタジー小説や、普段の日常などの話を書いているザスパサポーターです。

【小説】Last Kitten Heart friends 第57話

2015年12月25日 12時43分40秒 | 小説(きとぅん・はーと情報)
vol.57『失敗の代償』

 ひとまず森の奥に逃げ込んで、私は茂みの中で様子を見ることにした。夢中で走って陽介とか由樹は、どこにいるか分かっていない。まだ残りの作業員が懐中電灯をかざして、探し回っている。わかりやすくも変わってしまった異変に、手がかりを見つけようとしているに違いない。
 こうお互いの位置が確認できないと、合図も送れない。どうにもこうにも身動きがとれない。
 そっと近づく物体に気づかず、危うく声を上げそうになった。
「ナナか……」
 暗い中にぽつんと一際光る目に、驚かざるを得なかった。
「どう? 留恵ちゃん、様子は?」
「分からない。どうしたらいいかもさえ……」
 軽く息を吐く。出てくるといったら、それくらいだった。
 そこへ強い光がこちらを照らし始めた。向こうからは死角だからすぐには見つからないが、このままだと見つかってしまう。
「おとりになるよ!」
 そういってナナは茂みの中を飛び出し、光の方に突っ込んでいった。わざとらしく見つかってしまったかのように装い、ナナは作業員を引きつけた。十分に認知させてから、私からは遠ざかるように太くて低い大声たちは離れていった。
 また、一息吐く。ナナはすばしっこいし、他の茂みに入れば探しづらくなるから逃げ切れるだろう。
 それよりも、他の二人を見つけなきゃ。ナナが、残っている全員の作業員を引きつけてくれているので、動き回りやすくなった。茂みを出てみると、作業員が持っていた懐中電灯とは違う光が私に向けて点滅していた。
 ひょっとして……! 念のためみんなで持ち込んできた小さな懐中電灯を、同じように点滅させてみた。すると点滅のパターンが変わった。やっぱりそうだ! 近づいて見ると点滅していた光も合わせて近づいてきた。
「留恵ちゃん!」
 陽介だった。よかった、無事だった。幽霊なんじゃないかと疑うかのように、お互いの存在を確認するように抱き合った。
「由樹は?」
「分からない……」
 首を振って見せたが、お互い見当もついていない。由樹も同じ懐中電灯を持っているはずなんだけど……。依然として大声は遠くの方で聞こえている。あの時散らばってしまったが、みんな夏実たちがいたところから、遠ざかって逃げている。なのでいるとしたらこの辺のはず。
 二人で茂みを途中拾った枝を使ってかき分けながら、森の奥を捜索していた。

 数分後に、大きめの岩があると思って、枝で叩いてみたら泣き叫び始めた。こっちの方が驚いたよと、うずくまる由樹を抱きしめてあげた。
「だって……。だって……」
「ごめん……。次はちゃんと考える」
 二人で由樹を抱え上げて、森の外へ連れ出す。ナナはうまいこと戻ってくるだろう。それよりも……。
 小川が流れる橋のたもと、苦労して育て上げた作物が広がる畑の中、そして、明かりが灯っていなく暗いなのかの自宅。家路につきながらも、思いつくところはまわってみた。最後は家のドアノブを触ってみたが、暗闇が支配しているだけだった。
「無事に帰ってこれたね」
「……私たちはね」
 そう。夏実となのかが無事ではない。
 しばらく状況を見てみようと、ここでは静寂が支配するリビングで待ち構えていた。

 なにか物音がしたと、玄関ホールに一斉に駆け寄った。しかし、泥だらけのナナだった。幸いにもケガはしていないみたいだ。お湯でぬらしたタオルで丁寧に泥を拭き取ってあげた。
「いろいろ探したんだけどね……」
 ナナも独自で探し回ったみたいだったが、結果は私たちと同じだった。
 ここまで一緒にいてくれたキャパを一匹抱き上げた。いろいろ迷いはあった。でも、これ以外考えられないし、こうするしか他なかった。
「もし、可能性が高いのは……北地区」
 本当に北地区にいるとしたら、早く連れ戻さないと夏実ちゃんが危ない!


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※56話から全文掲載することにいたしました。1話から読みたい人はこちらへ。

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