中心街は戦いづらくリスクがある。移動するしかないか。
「逃がすか!」
ムギはすんなり場所移動に応じてくれたが、こいつは聞く気が無い。ここで決着を付ける算段なんだろう。
商店街を抜けて、街の外へ出ることを試みてみた。細く曲がりくねった道を駆け抜けた。
すると、あいつが向かってきた。切り返し、受け止める。そして、受け流した。
あいつは倒れ込むと、その隙に転がっていた籠を被せた。
相手が視界を失っているうちに、遠ざかった。
「待てーい!」
こいつ、早いぞ……。見失わない程度に離したが、籠を投げ捨てて間隔を詰めてきた。
「仕方がないな……」
この辺りなら街中から外れてきて、近くに広い公園があるからちょうど良い。愛剣を引き抜き、振り返り構えた。
やつの剣を受け止めると、引き下がるふりをして、公園の方へ誘導した。
「やっと、戦う気になったか」
「オレは、最初っから逃げてないがな!」
この公園は、至る所に湯を溜めてある箇所がある。気に入らないから、ちょっと仕掛けてやるか。
一瞬にして詰め寄り、斬りかかった。お互いの刃が当たり、金属音が鳴り響く。そして、睨み合った。
一度離れ、間合いを空けた。またもや一気に詰めた。
「チャンス!」
このまま突き飛ばせば、あいつの後ろには湯気が立ち込める池がある。
「残念だっちゃな!」
くそ、読まれていたか!
切り返せず、代わりに大きなしぶきと共に飛び込む羽目になった。
「湯の中に落とそうなんて、古い手だっちゃ」
「……いやいや。こう見えて、実は普通の水温だぞ」
オレは平然とした顔で返した。
「そうなのか?」
「嘘だと思うなら入ってみろよ」
あいつが恐る恐る右足を入れるところを見逃さず、腕を掴み落とし入れた。
「うわっちぃ!」
よろめき全身が入ってしまうと、大急ぎで湯の中に出た。
「惜しかったな。オレはこれくらいの温度なら平気だ」
とはいえ、長時間は不可。ひっそりとオレも外に出た。
集中力を最大に高め、愛剣を構えながら近づいた。
「そもそも、お前は誰なんだよ」
近くの川で冷やしていたところへ声をかける。
「ああ。土筆島から来た、クイファっちゃ」
「随分、遠くから来たな」
土筆島は、ここから見て蓋名島より向こうにあるから、かなり遠くだ。
クイファが、川から上がると一言を放った。
「小細工なしで、真剣勝負といくか」
「……奇襲かけたのは、お前の方だろう」
軽くため息を吐いた。そして剣を構えると、お互い間合いを伺う。クイファの方から仕掛けてきた。受け止めるが、力は互角。膠着状態になる。
「くそっ……」
一度離れ、立て直す。再び、斬りかかるも交わされてしまう。
差が全く無いな……。ちょっとした事が勝負の分かれ目になるだろう。
それをどう作り上げるか……。
≪ 第45話-[目次]-第47話 ≫
------------------------------
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「逃がすか!」
ムギはすんなり場所移動に応じてくれたが、こいつは聞く気が無い。ここで決着を付ける算段なんだろう。
商店街を抜けて、街の外へ出ることを試みてみた。細く曲がりくねった道を駆け抜けた。
すると、あいつが向かってきた。切り返し、受け止める。そして、受け流した。
あいつは倒れ込むと、その隙に転がっていた籠を被せた。
相手が視界を失っているうちに、遠ざかった。
「待てーい!」
こいつ、早いぞ……。見失わない程度に離したが、籠を投げ捨てて間隔を詰めてきた。
「仕方がないな……」
この辺りなら街中から外れてきて、近くに広い公園があるからちょうど良い。愛剣を引き抜き、振り返り構えた。
やつの剣を受け止めると、引き下がるふりをして、公園の方へ誘導した。
「やっと、戦う気になったか」
「オレは、最初っから逃げてないがな!」
この公園は、至る所に湯を溜めてある箇所がある。気に入らないから、ちょっと仕掛けてやるか。
一瞬にして詰め寄り、斬りかかった。お互いの刃が当たり、金属音が鳴り響く。そして、睨み合った。
一度離れ、間合いを空けた。またもや一気に詰めた。
「チャンス!」
このまま突き飛ばせば、あいつの後ろには湯気が立ち込める池がある。
「残念だっちゃな!」
くそ、読まれていたか!
切り返せず、代わりに大きなしぶきと共に飛び込む羽目になった。
「湯の中に落とそうなんて、古い手だっちゃ」
「……いやいや。こう見えて、実は普通の水温だぞ」
オレは平然とした顔で返した。
「そうなのか?」
「嘘だと思うなら入ってみろよ」
あいつが恐る恐る右足を入れるところを見逃さず、腕を掴み落とし入れた。
「うわっちぃ!」
よろめき全身が入ってしまうと、大急ぎで湯の中に出た。
「惜しかったな。オレはこれくらいの温度なら平気だ」
とはいえ、長時間は不可。ひっそりとオレも外に出た。
集中力を最大に高め、愛剣を構えながら近づいた。
「そもそも、お前は誰なんだよ」
近くの川で冷やしていたところへ声をかける。
「ああ。土筆島から来た、クイファっちゃ」
「随分、遠くから来たな」
土筆島は、ここから見て蓋名島より向こうにあるから、かなり遠くだ。
クイファが、川から上がると一言を放った。
「小細工なしで、真剣勝負といくか」
「……奇襲かけたのは、お前の方だろう」
軽くため息を吐いた。そして剣を構えると、お互い間合いを伺う。クイファの方から仕掛けてきた。受け止めるが、力は互角。膠着状態になる。
「くそっ……」
一度離れ、立て直す。再び、斬りかかるも交わされてしまう。
差が全く無いな……。ちょっとした事が勝負の分かれ目になるだろう。
それをどう作り上げるか……。
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