ミタチアとの戦いを終えて、北上してきた。
しかし、対戦相手と巡り会えず、海まで来てしまった。
更に北上して、対岸の島へ行く選択肢もあった。
ただ、無駄に歩くような気がして、引き返すことにした。
来た道とは別ルートを辿ることにした。それでも見つからなかった。
いかに、この選考会の厳しさを実感していた。
気付けば、地元付近まで来てしまったので、立ち寄ることにした。
昼過ぎ、森林の深い山奥を歩き、辺りを警戒していた。ここに戻ってきてからは、なにか嫌な予感がしていたからだ。
せっかく、戻ってきたんだ。心身共に疲弊したこの体を休めるために、足早にある場所へ向かった。
「ああ……生き返る……」
山奥の自作湯船に入り、束の間の休息を得ていた。
タトリーニのこともあり、この周辺と湯船自体に罠を仕掛けた。周辺に細い紐を通し、触れると音が鳴る仕組み。湯船の罠は、掛かってのお楽しみだ。
後は飯を食ってから、また旅に出るか。温泉街に降りることにした。
石畳の温泉街を辺りの様子を見ながら散策した。相変わらず人通りが多く賑わっている。ムギの件があるので、油断は出来ない。
「おっと……!」
なにかにつまずいたと思ったら、小さな石に引っかかった。こんな石に本気で転ぶ奴は、そうそういないと思いつつ、自戒を強めた。
馴染みの店に入ると、適当に空いていた席に着いた。メニュー表を眺めていた。
「パスクさん!」
ドッキリさせられて、体に緊張が走った。
「……そんなに驚かなくても。ところで、どれにします?」
「ああ。いつものでいいよ」
注文を聞きに来た、店主だった。メニュー表を閉じると平然を装ったが、心拍数は上がったままだった。
出てきた麺料理をすすりながら、この先の旅路を考えた。
北と東は歩き回ったから、やはりこのまま西を目指すか。そうなれば、またもや長旅になるだろう。この温泉街は顔見知りが多いから、少し備えを買い足しておくか。
店主に別れを告げ、店の外に出る。外の人通りは変わることがなかった。
湯畑の周りを歩きながら、目ぼしいものを探していた。
「覚悟!」
背後から殺気立った叫び声が聞こえた。今度こそ違いないと、愛剣に手をかけた。
しかし、振り向くと、それらしき男がかなり接近していた。
「くそっ……。間に合うか」
振り抜こうとしたが、一瞬にして視界から男が消えた。
「……大丈夫か?」
石畳の上で派手に転んだ男に声をかけるが、ピクリともしない。
「ちきしょう! 罠だったか……」
オレは、街中までは罠を仕掛けられない。
「なんなんだ、急に」
「しゃあしい! パスク、勝負しろ」
起き上がるのと同時に一気に蹴り出し、向かってきた。
「おい! 街中だぞ!」
選考会ルールでは、一般人を巻き込まなければ、場所は問わないことになっているが……。
通行人がざわめく中、愛剣で受け止めた。
相手は、重量感のある大きな剣。オレより若いとみた。
「安心っちゃ。他は巻き込まない」
それはそれで良いのだが、もしも……って言うのがある。
この辺は、道も狭く入り組んでおり、なにより山の中という場所の故、坂が多い。ここでの戦闘は、あまり向いていない。
どのみち、場所を変える必要がある。どうするか……。
≪ 第44話-[目次]-第46話 ≫
------------------------------
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しかし、対戦相手と巡り会えず、海まで来てしまった。
更に北上して、対岸の島へ行く選択肢もあった。
ただ、無駄に歩くような気がして、引き返すことにした。
来た道とは別ルートを辿ることにした。それでも見つからなかった。
いかに、この選考会の厳しさを実感していた。
気付けば、地元付近まで来てしまったので、立ち寄ることにした。
昼過ぎ、森林の深い山奥を歩き、辺りを警戒していた。ここに戻ってきてからは、なにか嫌な予感がしていたからだ。
せっかく、戻ってきたんだ。心身共に疲弊したこの体を休めるために、足早にある場所へ向かった。
「ああ……生き返る……」
山奥の自作湯船に入り、束の間の休息を得ていた。
タトリーニのこともあり、この周辺と湯船自体に罠を仕掛けた。周辺に細い紐を通し、触れると音が鳴る仕組み。湯船の罠は、掛かってのお楽しみだ。
後は飯を食ってから、また旅に出るか。温泉街に降りることにした。
石畳の温泉街を辺りの様子を見ながら散策した。相変わらず人通りが多く賑わっている。ムギの件があるので、油断は出来ない。
「おっと……!」
なにかにつまずいたと思ったら、小さな石に引っかかった。こんな石に本気で転ぶ奴は、そうそういないと思いつつ、自戒を強めた。
馴染みの店に入ると、適当に空いていた席に着いた。メニュー表を眺めていた。
「パスクさん!」
ドッキリさせられて、体に緊張が走った。
「……そんなに驚かなくても。ところで、どれにします?」
「ああ。いつものでいいよ」
注文を聞きに来た、店主だった。メニュー表を閉じると平然を装ったが、心拍数は上がったままだった。
出てきた麺料理をすすりながら、この先の旅路を考えた。
北と東は歩き回ったから、やはりこのまま西を目指すか。そうなれば、またもや長旅になるだろう。この温泉街は顔見知りが多いから、少し備えを買い足しておくか。
店主に別れを告げ、店の外に出る。外の人通りは変わることがなかった。
湯畑の周りを歩きながら、目ぼしいものを探していた。
「覚悟!」
背後から殺気立った叫び声が聞こえた。今度こそ違いないと、愛剣に手をかけた。
しかし、振り向くと、それらしき男がかなり接近していた。
「くそっ……。間に合うか」
振り抜こうとしたが、一瞬にして視界から男が消えた。
「……大丈夫か?」
石畳の上で派手に転んだ男に声をかけるが、ピクリともしない。
「ちきしょう! 罠だったか……」
オレは、街中までは罠を仕掛けられない。
「なんなんだ、急に」
「しゃあしい! パスク、勝負しろ」
起き上がるのと同時に一気に蹴り出し、向かってきた。
「おい! 街中だぞ!」
選考会ルールでは、一般人を巻き込まなければ、場所は問わないことになっているが……。
通行人がざわめく中、愛剣で受け止めた。
相手は、重量感のある大きな剣。オレより若いとみた。
「安心っちゃ。他は巻き込まない」
それはそれで良いのだが、もしも……って言うのがある。
この辺は、道も狭く入り組んでおり、なにより山の中という場所の故、坂が多い。ここでの戦闘は、あまり向いていない。
どのみち、場所を変える必要がある。どうするか……。
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