実家を出て、三日ほど経過した。
山を下り、翌日には海沿いを突き進んだ。この間は必死の帰郷だったので、余裕はなかった。今回は万全の体制。気持ちにもゆとりがあり、のんびり潮風に当たりながら西の方へ。
夜は安全な寝床を探し、気を休めていた。それでも、いつ候補者が襲ってくるか分からない。
そして、ひとときの休みを経て、山の中へと続く道をひたすら歩いてた。茶店を見つけると、歩き続けて痛めた足のために、長めの休憩を取ることにした。
辺りには民家もなく、広々とした街道沿いに突然とたたずんでいる店だ。
しばらく休んでいると、一人の女性が横に座って話しかけてきた。
「パスクさん、待っていたよ」
「キョウコじゃねえか!」
体つきこそ小柄で細身だが、あの漆黒のポニーテールを見て、すぐに気づいた。
「敵討ちがしたくて……ね」
オレの方を見るなり、不敵に笑うあの顔。白く透き通った素肌の下に、どんなものを隠し持っているのか、恐ろしくなった。
「ちょ……。ちょっと待て。オレが、お前に何をした!」
思わず茶店の長椅子から、飛び跳ねるように立ち上がった。
キョウコも候補者の一人。用心のため、店から少し離れた。
「コリエンテ――さすがにご存じですよね?」
「ああ、もちろん。オレの大の親友だ」
「わたくしは、前回の選考会で最後の二人まで残れた。けどね。最後にコリエンテさんに敗れた……」
そういえば、確かにそうだ。コリエンテとキョウコで最後を争っていた。
「だから……親友のあなたに復讐です!」
「無茶苦茶だぞ!」
セーキじいさんほどではないが、初速の蹴り出しが早い。小柄を生かし一気に後ろに回れた。
「『twenty』まで、あとちょっとだった実力。見せて、あ・げ・る」
腕を回され、首を締め付けられた。本気で締め付けられ、苦しい……。前方にキョウコを投げ飛ばしたが、猫のように華麗に着地した。そして地面を蹴り上げ、向かってくる。
「やっ!」
キョウコは細長くて鋭いロングソードを使ってくる。剣そのものが、かなり軽量のものを使っているのだろう。体の大きさから想像もつかないくらいの速さで斬りかかってくる。
「くっ!」
避けきるのは、スピードと剣の長さもあり、かなり難しい。弾き返すしかなかった。
一旦、キョウコは間合いを空けてきた。そしてすぐさま突進してきた。
これだったらと振ってみたが、避けられた。
「下か!」
しゃがみ込んだところから、跳ね上がるように斬りかかってきた。愛剣でガードしたが、はじき飛ばされた。
そこへ猶も斬りかかってきた。幾度となく金属音が奏でるが、押され気味だ。
再び、間合いを空けてきた。今度は呼吸を整えるためか、すぐには動かなかった。
「くそっ……」
確かにキョウコは自他が認めるほど、『twenty』並みだ。何度かキョウコと戦ったことがあるが、勝てていない。
リスクを避けるため、あえて負けようと考えた。深手を負って先に進むより、その方がいいだろう。それに、復讐を果たせればキョウコも気が済むだろう。
息が整ったのか、きれいな構えから向かってきた。
キョウコには悟られないように適度に力を抜いた。絶好のチャンスを作ってやった。
すると、キョウコはこんな素敵なチャンスを斬りかからず、全力の飛び蹴りを与えてきた。まともに食らい、茶店から随分と離れた草むらまで吹き飛ばされた。
「わたくしのことを甘く見ていない? これは復讐。本気を出さないなら、一生動けない体にしてもよくってよ」
≪ 第21話-[目次]-第23話 ≫
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山を下り、翌日には海沿いを突き進んだ。この間は必死の帰郷だったので、余裕はなかった。今回は万全の体制。気持ちにもゆとりがあり、のんびり潮風に当たりながら西の方へ。
夜は安全な寝床を探し、気を休めていた。それでも、いつ候補者が襲ってくるか分からない。
そして、ひとときの休みを経て、山の中へと続く道をひたすら歩いてた。茶店を見つけると、歩き続けて痛めた足のために、長めの休憩を取ることにした。
辺りには民家もなく、広々とした街道沿いに突然とたたずんでいる店だ。
しばらく休んでいると、一人の女性が横に座って話しかけてきた。
「パスクさん、待っていたよ」
「キョウコじゃねえか!」
体つきこそ小柄で細身だが、あの漆黒のポニーテールを見て、すぐに気づいた。
「敵討ちがしたくて……ね」
オレの方を見るなり、不敵に笑うあの顔。白く透き通った素肌の下に、どんなものを隠し持っているのか、恐ろしくなった。
「ちょ……。ちょっと待て。オレが、お前に何をした!」
思わず茶店の長椅子から、飛び跳ねるように立ち上がった。
キョウコも候補者の一人。用心のため、店から少し離れた。
「コリエンテ――さすがにご存じですよね?」
「ああ、もちろん。オレの大の親友だ」
「わたくしは、前回の選考会で最後の二人まで残れた。けどね。最後にコリエンテさんに敗れた……」
そういえば、確かにそうだ。コリエンテとキョウコで最後を争っていた。
「だから……親友のあなたに復讐です!」
「無茶苦茶だぞ!」
セーキじいさんほどではないが、初速の蹴り出しが早い。小柄を生かし一気に後ろに回れた。
「『twenty』まで、あとちょっとだった実力。見せて、あ・げ・る」
腕を回され、首を締め付けられた。本気で締め付けられ、苦しい……。前方にキョウコを投げ飛ばしたが、猫のように華麗に着地した。そして地面を蹴り上げ、向かってくる。
「やっ!」
キョウコは細長くて鋭いロングソードを使ってくる。剣そのものが、かなり軽量のものを使っているのだろう。体の大きさから想像もつかないくらいの速さで斬りかかってくる。
「くっ!」
避けきるのは、スピードと剣の長さもあり、かなり難しい。弾き返すしかなかった。
一旦、キョウコは間合いを空けてきた。そしてすぐさま突進してきた。
これだったらと振ってみたが、避けられた。
「下か!」
しゃがみ込んだところから、跳ね上がるように斬りかかってきた。愛剣でガードしたが、はじき飛ばされた。
そこへ猶も斬りかかってきた。幾度となく金属音が奏でるが、押され気味だ。
再び、間合いを空けてきた。今度は呼吸を整えるためか、すぐには動かなかった。
「くそっ……」
確かにキョウコは自他が認めるほど、『twenty』並みだ。何度かキョウコと戦ったことがあるが、勝てていない。
リスクを避けるため、あえて負けようと考えた。深手を負って先に進むより、その方がいいだろう。それに、復讐を果たせればキョウコも気が済むだろう。
息が整ったのか、きれいな構えから向かってきた。
キョウコには悟られないように適度に力を抜いた。絶好のチャンスを作ってやった。
すると、キョウコはこんな素敵なチャンスを斬りかからず、全力の飛び蹴りを与えてきた。まともに食らい、茶店から随分と離れた草むらまで吹き飛ばされた。
「わたくしのことを甘く見ていない? これは復讐。本気を出さないなら、一生動けない体にしてもよくってよ」
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