vol.55『相手が誰だろうと勝たなければならない』
キャパの森を、有刺鉄線で隙間なく囲われて通り抜けるのは、ナナでも厳しかった。上には三メートルまであり、どうすることも出来なかった。一カ所だけ扉状になっており、そこから入れそうだったが、あいにく鍵がかかっていた。そこには『イーストエンド産業 私有地』と買収したところが、所有権を固持していた。
「これ、いつからだった……?」
「ずっと前からだったかもしれない。夏実ちゃんがああだったし、二人とも家に居なかったから、キャパも家には遊びに来てくれなかったから……」
由樹と留恵で見に来ていたが、状況はこの有様だった。
「とりあえず、ナナに入ってもらって様子を見てもらう?」
「どうやって中に?」
「適当に切って、そこから入ればいいんじゃないの。電気が通っているわけでもないし」
「そんなことしていいの?」
「黙って見守れっていうの?」
「それもそうか……」
大声を張る留恵につい納得してしまった。
「もう少し調べよう。敵か味方かまだ分からないし……」
ただ悪い予感しかしなかった。それは自分だけなのか。
(続きを読む)
Last Kitten Heart friends
■あらすじ
5つの地区に分かれたうちのひとつ、東地区で幽閉されていた14才の少女『なのか』。
反政府組織に助けられて、逃亡先として南地区の郊外に住むことにした。
そこでちょっと不思議な生き物たちと暮らす夏実たちと出会う。
自分が東地区出身だということを隠し、彼らと接していく。
一方で、反政府組織を容赦なく追う、東地区政府。
それは、なのかだけではなく、夏実たちも巻き込まれていく。
南地区で出会った彼らとの友情と、世界の成り行きは——
キャパの森を、有刺鉄線で隙間なく囲われて通り抜けるのは、ナナでも厳しかった。上には三メートルまであり、どうすることも出来なかった。一カ所だけ扉状になっており、そこから入れそうだったが、あいにく鍵がかかっていた。そこには『イーストエンド産業 私有地』と買収したところが、所有権を固持していた。
「これ、いつからだった……?」
「ずっと前からだったかもしれない。夏実ちゃんがああだったし、二人とも家に居なかったから、キャパも家には遊びに来てくれなかったから……」
由樹と留恵で見に来ていたが、状況はこの有様だった。
「とりあえず、ナナに入ってもらって様子を見てもらう?」
「どうやって中に?」
「適当に切って、そこから入ればいいんじゃないの。電気が通っているわけでもないし」
「そんなことしていいの?」
「黙って見守れっていうの?」
「それもそうか……」
大声を張る留恵につい納得してしまった。
「もう少し調べよう。敵か味方かまだ分からないし……」
ただ悪い予感しかしなかった。それは自分だけなのか。
(続きを読む)
Last Kitten Heart friends
■あらすじ
5つの地区に分かれたうちのひとつ、東地区で幽閉されていた14才の少女『なのか』。
反政府組織に助けられて、逃亡先として南地区の郊外に住むことにした。
そこでちょっと不思議な生き物たちと暮らす夏実たちと出会う。
自分が東地区出身だということを隠し、彼らと接していく。
一方で、反政府組織を容赦なく追う、東地区政府。
それは、なのかだけではなく、夏実たちも巻き込まれていく。
南地区で出会った彼らとの友情と、世界の成り行きは——
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます