「……苦っ」
口の中に入ってしまった雑草を吐き出し、体制を整える。
「わざと負けようっていうつもり?」
「まさか……。この選考会であり得るのか」
苦笑いを見せてごまかしたが、やっぱり勘のいいキョウコにはダメか。
腰の高さまである雑草を切りながら、草むらから出てきた。
不都合な相手を避けて逃げるのは、この選考会では常套手段だ。ただルールがあって、どちらかが候補者だろうと対戦を申し込めばやらなくてはならない。なかなか相手に出会うのが難しいこともあり、断った場合は不戦敗になる。なので、ムギの時は店主さえオレの名前を言わなかったら逃げ切れたのだ。そういった事実もあり、ビーフォンみたいに不意打ちを取るやつもいる。候補者は四六時中、気を抜くことができない。最も『twenty』に入ったら尚更だが。
「わたくしの周りには、結構いらっしゃいますけどね」
キョウコは強いからな……。みんな嫌がるのだろう。オレだって避けられるのなら、やりたかった。だが、お互い顔を知っている上、キョウコが名前を呼んできてしまったので、ここで条件をクリアしている。後は、どちらかが戦う意思があれば成立する。気をそらそうとしたが、復讐だなんて言うから、成立してしまった。
「そもそも、なんでオレなんだよ! コリエと仲がいいやつは、他にもいるだろう」
「候補者入りの同期。しかも同い年じゃないの」
「確かにそうだが……」
「うん。それだけ」
「理由はそれだけか!」
「復讐するのに相手を納得させる必要なんて無いから」
「そこは納得させろよ!」
キョウコは構えず、余裕そうに体を休めていた。
「ここで逃げてもいいけどね。その時は、選考会が終わったら地の果てでも追いかけ回してあげるわ」
「分かったよ。やるよ」
選考会はルールがあるから、復讐目的でも限度がある。けど終わった後だと、あの世送りにすることもできる。
「それで。本気で来るのかしら?」
「決まっているだろう」
「そうね。わたくしに勝てなければ、『twenty』なんて無理でしょうね」
それに、数多く勝たなければならない。負けなんて付けたくはない。
「本気で来なかったら、体のパーツがひとつ無くなると思いなさい!」
キョウコはすぐさま斬りかかってきた。キョウコの剣を受けながら、草むらの中に勝負を持ち込んだ。ここなら動きづらいから、まともにやり合える。
しかし、キョウコも分かっており、押し込んで草むらの外に出そうとする。必死に耐え抜こうとしたが、思いつきでやった作戦。欠点があった。
「やっ!」
草刈り機を思わせるくらい、キョウコの連続攻撃。オレが交わした代わりに、雑草が次々に吹き飛ばされていった。ついには押し出され、乾いて土埃が舞う茶店通りの道まで戻された。
両者とも間合いを空けて、息をつく。
「……珍しく、随分と息が上がっているな」
「パスクさんもね……」
キョウコの体力を減らすことに成功したが、オレも付随して無くなってきた。やっぱり良い作戦ではなかった。あまり休んでいると、すぐさまキョウコにやられる。
「はっ!」
今度はこちらから仕掛けて、対応が遅れたキョウコを狙う。そして、キョウコのロングソードは天高く舞った。
――これで決まった!
すると、キョウコは地面を強く蹴り出して、砂埃を撒き散らした。たまらず、キョウコに背を向けてしまった。
振り返ると砂埃の向こうで動く影が、華麗にロングソードを空中キャッチする姿が見えた。
「あぶない、あぶない。もう少しで負けるところでしたわ」
くそ……。どうやって勝てというんだ。
≪ 第22話-[目次]-第24話 ≫
------------------------------
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「わざと負けようっていうつもり?」
「まさか……。この選考会であり得るのか」
苦笑いを見せてごまかしたが、やっぱり勘のいいキョウコにはダメか。
腰の高さまである雑草を切りながら、草むらから出てきた。
不都合な相手を避けて逃げるのは、この選考会では常套手段だ。ただルールがあって、どちらかが候補者だろうと対戦を申し込めばやらなくてはならない。なかなか相手に出会うのが難しいこともあり、断った場合は不戦敗になる。なので、ムギの時は店主さえオレの名前を言わなかったら逃げ切れたのだ。そういった事実もあり、ビーフォンみたいに不意打ちを取るやつもいる。候補者は四六時中、気を抜くことができない。最も『twenty』に入ったら尚更だが。
「わたくしの周りには、結構いらっしゃいますけどね」
キョウコは強いからな……。みんな嫌がるのだろう。オレだって避けられるのなら、やりたかった。だが、お互い顔を知っている上、キョウコが名前を呼んできてしまったので、ここで条件をクリアしている。後は、どちらかが戦う意思があれば成立する。気をそらそうとしたが、復讐だなんて言うから、成立してしまった。
「そもそも、なんでオレなんだよ! コリエと仲がいいやつは、他にもいるだろう」
「候補者入りの同期。しかも同い年じゃないの」
「確かにそうだが……」
「うん。それだけ」
「理由はそれだけか!」
「復讐するのに相手を納得させる必要なんて無いから」
「そこは納得させろよ!」
キョウコは構えず、余裕そうに体を休めていた。
「ここで逃げてもいいけどね。その時は、選考会が終わったら地の果てでも追いかけ回してあげるわ」
「分かったよ。やるよ」
選考会はルールがあるから、復讐目的でも限度がある。けど終わった後だと、あの世送りにすることもできる。
「それで。本気で来るのかしら?」
「決まっているだろう」
「そうね。わたくしに勝てなければ、『twenty』なんて無理でしょうね」
それに、数多く勝たなければならない。負けなんて付けたくはない。
「本気で来なかったら、体のパーツがひとつ無くなると思いなさい!」
キョウコはすぐさま斬りかかってきた。キョウコの剣を受けながら、草むらの中に勝負を持ち込んだ。ここなら動きづらいから、まともにやり合える。
しかし、キョウコも分かっており、押し込んで草むらの外に出そうとする。必死に耐え抜こうとしたが、思いつきでやった作戦。欠点があった。
「やっ!」
草刈り機を思わせるくらい、キョウコの連続攻撃。オレが交わした代わりに、雑草が次々に吹き飛ばされていった。ついには押し出され、乾いて土埃が舞う茶店通りの道まで戻された。
両者とも間合いを空けて、息をつく。
「……珍しく、随分と息が上がっているな」
「パスクさんもね……」
キョウコの体力を減らすことに成功したが、オレも付随して無くなってきた。やっぱり良い作戦ではなかった。あまり休んでいると、すぐさまキョウコにやられる。
「はっ!」
今度はこちらから仕掛けて、対応が遅れたキョウコを狙う。そして、キョウコのロングソードは天高く舞った。
――これで決まった!
すると、キョウコは地面を強く蹴り出して、砂埃を撒き散らした。たまらず、キョウコに背を向けてしまった。
振り返ると砂埃の向こうで動く影が、華麗にロングソードを空中キャッチする姿が見えた。
「あぶない、あぶない。もう少しで負けるところでしたわ」
くそ……。どうやって勝てというんだ。
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