ドアを開けると、大音量の音楽が外に漏れだす。店員に促された席に座り、他の客の迷惑にならない様に店主の耳元で飲み物を注文する。店にある棚の多くの部分はCDやレコードのコレクションで占領されて居て、一般家庭にはあり得ない大きさのスピーカーが目を引く。周りの席には、目を閉じ、腕を組み、うつむいている中年の客や読書をして居る学生らしき客――。
1960年代から70年代前半にかけて全盛期を迎え、日本のサブカルチャーシーンを牽引したとも言えるジャズ喫茶。今では数は減ってしまったが、早稲田近辺で営業して居るものでは喫茶店としての「NUTTY」と「マイルストーン」(近々閉店するらしい)。生演奏を中心とする「Cafe Cotton Club」と「イントロ」の四店がある。昔からの名店が営業を続ける新宿や四谷に比べれば知名度は劣る早稲田だが、関東近郊から訪れる人も居るジャズの隠れた名所になって居る。
レコードをかけるジャズ喫茶ではなく、ジャズの生演奏が行われるのは「Cafe Cotton Club」と「イントロ」だ。どちらも高田馬場駅近くにある。「イントロ」は地下にあってやや入りづらい雰囲気だが、ほぼ毎日ライブをやって居る。毎週末にライブがある「Cafe Cotton Club」はオープンな作りで、ランチもやって居る普段は普通のカフェ。ジャズの生演奏で有名なカフェだと知らない人の方が多いくらいだ。これらはジャズバーとかジャズクラブなどと言われて居て、早稲田に限らず注意して街を歩いて居ると割とよく見かける。正確な数字はわからないが、業態としては純粋なジャズ喫茶よりも遥かに多いと言う印象を受ける。あなたが普段利用しているカフェも週末の夜はジャズクラブに変わって居るかも知れない。
生演奏を聴くにはチケット代やチャージ料を払う必要があるが、ジャズ喫茶では勿論是等は必要ない。ドリンク一杯数百円で一時間半から二時間は居座る事が出来る。レコードやCDのコレクションをBGMとしては考えられないほどの大音量で流し、多くの店では軽食やアルコールも出さずに粛々と営業して居る。そんな業態は、普段はおしゃれなカフェとして営業し、週末にミュージシャンを呼んで演奏させる店などに比べれば非常に特殊だ。
ジャズ喫茶をテーマに書かれたエッセーなどはそれなりに多く、業態だけでは無くその中の様子の特殊さに言及して居るものもある。
「こっちはまだ高校生と言う事もあったんだけど、店は狭くて暗いし、デカい音出てるし、客は皆んなしんねりむっつりして腕組んでるし、こいつら何なんだと思った。(中略)要するに、それまで自分の周りにあった景色とまったく違う。異様なわけ」(村井康司『ジャズ喫茶に花束を』河出書房新社 2002年) 「思わず耳をふさぎたくなるほどの大音量で音楽が鳴って居る。(中略)霧が掛かった夕暮れのごとく、目を凝らさないと何も判別できない。(中略)椅子に座る人たちの姿は人間の死体かミイラのようで、首をたらし不動のまま点在して居る。」(マイク・モラスキ―『ジャズ喫茶論』筑摩書房 2010年)
是等はジャズ喫茶全盛の60年代後半の証言だから、今は此処までストイックでは無いだろう。 高田馬場にある「マイルストーン」は置いてある本が充実して居る事で有名だし、他の店でもMacBookを広げレポートを書いて居る学生を見かける事も多い。しかし後で書く様に、こうした雰囲気を複雑な思いで受け止めて居る人も居る。閉鎖的で時代から取り残されて来た様にも思えるジャズ喫茶だが、今はもう60年代後半の全盛期では無い。人々が音楽を聴くスタイルはすっかり変わって仕舞った。
多くの人がジャズ喫茶にわざわざ足を運んだ時代、その大きな理由の一つが「希少な輸入レコードは手に入りづらいから」だった。ジャズの本場はアメリカだ。ライブ演奏を聴けなければレコードに頼るしかないが、1ドル=360円の時代に簡単には手が出るものではなかった。自然と、新譜が聴きたい人たちはドリンク一杯の値段で済むジャズ喫茶に集まった。 しかし時代は変わった。CDは簡単に手に入る様になり、さらにネットに接続出来れば何時でも何処でも好きな音楽をそれなりのクオリティで聴けるようになった。ジャズ喫茶に多くの人が足を運んで居た大きな理由の一つが無くなり、自然と客足は遠のいた。それでも、全てのジャズ喫茶が無くなった訳ではない。むしろ全体としての数は減りながらも、実は今でも新しく開業して居る店もあるくらいだ。
冒頭でも触れた早稲田の「NUTTY」は、今年でオープンして九年目になる比較的新しいジャズ喫茶だ。「前にやって居た花屋を立ち退き処分になって。経営は危ないと思ったけど、子供は成人して自分達夫婦が食べて行くぐらいなら、と決心しました。元々ジャズ喫茶をやるのが夢だったと言う訳ではありませんでした」と語るのは「NUTTY」店主のジャズ歴40年と言う青木一郎さん。今年で九年目と言う事で、団塊の世代が一斉にリタイアするとされて居た「2007年問題」と関係があるのかと思ったがどうやらそうではないらしい。しかしリタイアした世代が、退職金で夢だったジャズ喫茶を始めると言うのは実際に多いそう。団塊の世代が学生だった頃はジャズ喫茶全盛期。最近新しく始まる店があるのにはそう言った事情もあるようだ。
新しく始まる店はあっても、全国的にジャズ喫茶と言うのは多くはない。「NUTTY」の入口には、「ミュージシャンの魂を聴き取れ!お食事のお店ではありません」と言う看板が掛かって居る。 「(ジャズ喫茶の)数が少ないから、お食事のお店と勘違いして入って来るお客さんも多い。時代ですね。本当は恥ずかしいのでこんな看板無しでやりたいんですが。ふるいに掛けて居ます」。 ジャズ喫茶を知らない人たちが増えたので、場所柄、ランチの店と勘違いされる事も多いのだ。
では、音楽の楽しみ方も飲食店の形も多様化した今、「NUTTY」の様な硬派なジャズ喫茶に来て居る人たちはどう言った人達なのか。何度か同じジャズ喫茶に行くと分かると思うが、客層の一つは年配の常連だ。「NUTTY」に何度か行く中で、50歳代後半から60歳代の常連の方が複数人居て、その人たちにはよく遭遇した。 「早稲田の学生や教授の方もよくいらっしゃいますが、うちにわざわざ来ると言うのは正直言って可也特殊な人たち」。青木さんはジャズ喫茶に足を運ぶ人の事をこう話して居たが、念頭にあったのは常連の年配の方たちの事だろう。
早稲田大学には多くの音楽サークルがある。その中でも四つあるジャズ研の学生はよく訪れて居ると言う。学生の街ならではの客層だ。店内に居る時に誰がジャズ研の学生かは私には区別出来無いが、確かに「NUTTY」にも「マイルストーン」にも学生は多い。年配の方たちは、如何にもと言った雰囲気で腕を組んで俯いて居る事が多いが、学生はスマホや読書、PCと自由に過ごして居る人が多いと言う印象だ。
ちなみに私自身の初めてのジャズ喫茶体験は「サムライ」で、バンドのメンバーの友人に誘われてだった。高校生の頃からライブハウスには出入りして居たので店内の大音量は特に驚かなかったが、音質の良さや音の解像度の高さには驚いた。まだジャズを聴く事に関しては多少背伸びをして居る感じも否めなかったが、素直に感動出来る程の良い音がそこで鳴って居たのは間違いない。音楽が好きでバンドでジャズ・ブルースを演奏するので興味があったので、行って観て損はなかった。こうしたライトな層も此処にも少なからず居るだろう。
また、お客さんの中には、私の様なミュージシャン崩れや学生や常連だけでなく千葉の浦安や埼玉の上尾など遠方からわざわざやって来る人達も居ると言う。「都市部を除けば、それだけジャズ喫茶が無くなって居ると言う事。遠くからせっかく来て貰ったお客さんにはガッカリして帰って欲しく無いので、そう言った時には可也気を使って選曲して居ます」。遠方からのリピーターが出来るほど、訪れた人たちの心を掴んで離さない訳はその選曲にある。
「NUTTY」のマスターは曲は、聴いて居る時の様子を見てお客さんの好きそうなものを約2千枚のコレクションの中から選んで掛けて居る。お客さんの好みを探りながら、且つ流れを切らさない様に、と言うのはジャズ喫茶マスターの醍醐味らしい。 「言葉を交わしてジャズ談義をするつもりは無いんだけど、反応や表情を見たりコミュニケーションしながら曲を選びたい。スマホや読書始められちゃうと…。本当は目を閉じて聞いて欲しいです」と、かなりストイックな聴き方を本当は望んで居たのが意外だった。最後に、ジャズ喫茶の魅力について聞くと 「うちの店に限らずジャズ喫茶のマスターは音響にこだわって居ます。トランペットの細かい表情が分かる様な良いスピーカーで、浴びる様に良い音に触れて、人生観が変わる様な経験をして貰いたい。音楽をスマホで調べて自己完結させないで、別世界のものに触れて貰いたいですね」と語った。
最近、「Spotify」や「Apple Music」のような音楽の定額ストリーミングサービスが世界中で爆発的に普及して居る。これらのサービスの目玉はユーザーに最適な曲をレコメンドする機能だが、技術的にまだ不安定な部分も多い。実際私も「Apple Music」を使用して居るが、レコメンドされるのは同じ曲ばかりだったり、逆にまったく曲調の違うものが出て来たりする。丁度よい落とし処で、克新しい発見をしたいと思えば少し物足り無いと言う人も居るだろう。
ジャズ喫茶では、人とのコミュニケーションの中で音楽を聴く事が出来る。ジャズと言うジャンルに限ればだが、オーナーの長年の経験と勘で、此方の年代や音楽の知識など総合的な属性を判断した上でベストなレコメンドを受ける事が出来る。別世界のモノに触れて、もしかしたら「NUTTY」のマスターの言う様に、人生観が変わるような経験が出来るのかも知れない。
初心者が聴いても間違いなく感動する事が出来る音、そしてレコメンドする側によってもされる側によっても変わる、満足できる選曲のパターン。初心者からツウまで、聴く人にマッチしたジャズを常に最高のクオリティで聴く事が出来る。そんな魅力が、あの独特な雰囲気の喫茶店にはある。
レトロな空間に癒やされる『JAZZ/BLUES喫茶フリーダ』
JR姫路駅から北へ歩いて10分の処にある「喫茶フリーダ」。純喫茶を思わせる、レトロでゆったり落ち着ける空間が魅力です。若い人には新しく、年配の人には懐かしい雰囲気。幅広い世代に長く愛される店を目指し2020年3月にオープンしました。
店名の「フリーダ」は、店主が好きなメキシコの画家フリーダ・カーロが由来。彼女の力強い生き方に魅了されこの名を付けたそう。
趣あるレンガの壁や食器棚など、古い風合いを残しつつリノベーションしたクラシックな家具が並ぶ店内。BGMにはジャズやブルースなどのレコードが流れ、古き良き時代の面影を感じさせます。気兼ねなく訪れたくなる雰囲気で、お一人様タイムを満喫するお客さんも多いそう。
本棚には、7店舗の古本屋が選書した本がずらり。純文学、エッセイ、実用書、絵本などジャンルはさまざま。その場で読む事も出来、気に入れば購入する事も可能です。
サイフォンで淹れるスペシャルティ・コーヒー
コーヒーの抽出は、レトロな雰囲気を感じさせるサイフォン式です。フラスコの中で、湯がキラキラと揺れ動く様子を眺めて居るだけでもリラックス気分に。ふわっと広がる豊かな香りやスッキリとした味わいはサイフォン式ならでは。抽出温度が高く、熱々のコーヒーが飲めるのも魅力の1つです。
『フリーダブレンド』480円
コーヒー豆は、名古屋市にあるコーヒー専門店「Coffee Kajita(カジタ)」から取り寄せるスペシャルティコーヒーを使用して居ると言う。店の雰囲気に合わせて作られたオリジナルブレンドは中煎(い)りで、苦味、酸味、甘味のバランスが取れたもの。複雑な舌触りで、コクと奥行きを感じる1杯です。酸味が苦手な人には、深煎りでエキゾチックなフレーバーが特徴の『ビターブレンド』(500円)もオススメです。
自家製スイーツやSNS映えドリンクも
『クリームソーダ』650円
お客さんがSNSに投稿した写真がキッカケで人気に火がついた『クリームソーダ』。コロンと丸く、可愛らしいフォルムのグラスにたっぷり注がれたメロンソーダが、ノスタルジーを感じさせます。生クリームとアイスクリームを溶かしながら、クリーミーに変化する味わいを楽しんで。
『プリン』380円
人気No.1スイーツは自家製のプリン。銀食器に盛り付けられた、昔ながらのビジュアルが乙女心をくすぐるでしょう。甘さひかえめでちょっぴり固め。ほろ苦いカラメルとの相性もバッチリです。
『チーズcake』420円
コーヒーに合うよう試行錯誤を重ねたチーズケーキは、焼いて居るのにレアチーズケーキのような味と食感が特徴。酸味が効いた、ねっとり濃厚なクリームチーズを堪能できるスイーツです。好みでレモンシロップをかければ、甘さの中にレモンのほのかな苦味が心地よいアクセントに。
テイクアウト出来るクッキーやパウンドケーキなどの焼き菓子もあります。家で気軽にカフェタイムを再現できるチャイブレンドの販売も。おうち時間のお供にピッタリですね。
昔懐かしい気分に浸りながら、のんびりしたひと時を過ごせる「喫茶フリーダ」。都会の喧騒を離れ、リラックスして見ては?
花屋さんからの転身で開業したJAZZ喫茶。『JAZZ NUTTY』
早稲田大学に程近い一角に佇む「JAZZ NUTTY」。この店は、オーナーの青木一郎氏が2008年に開業した本格派JAZZ喫茶であるが、そのオーナーの前身が非常にユニーク。東京・蒲田で26年に亘り「花屋さん」を営んで居たのである。
「学生時代にJAZZ研究会に入って居た程JAZZにのめり込んで居ましたので、蒲田で花屋を開業した時も、迷わず“サッチモ・フラワー”と言う店名にしました(笑)。勿論店内は常にJAZZを流して居ましたし、畏れ多いですけど僕自身も“サッチモさん”と呼ばれて居たりして(笑)、ちょっと変わった花屋として地元では知られて居たと思います」
ところが、地域の再開発により「サッチモ・フラワー」の立ち退きが決定。同氏は地元で代替地を探して居たが、いい場所が見つからず、徐々に移転先候補地の範囲を広げて行った。
「それこそ、東京中を探しました。でも、全く新しい場所で花屋さんを続けても、お客様が付くまでに時間が掛かります。だったら、いっその事。昔からの夢だったJAZZ喫茶をやろうと思いました」
移転先の候補地のひとつだった早稲田は、花屋は難しくても、JAZZ喫茶にはピッタリの場所だった。早稲田は昔よりJAZZ喫茶が多く存在した聖地のひとつ。現在も早稲田大学には大きく4つのJAZZ研究会があり、ある程度お客様も見込めると思ったそうである。
「僕が、学生時代によく通った様な、本気でJAZZを聴ける店は少なくなって居ると思いましたので、そのコンセプトを復活させたかった。ですので、JAZZを集中して聴ける店を作り、早稲田で第二の人生を始めようと決意したんです」
偶然が重なり甦った
4331Bが奏でる驚きの音。
開業にあたって、オーディオ選びは大きな問題だった。そんな時、第一の偶然が訪れた。知人から「壊れて居るけど“4331B”があるよ」と言う話が舞い込んで来たのである。「エッジもボロボロで、勿論音も鳴りませんでした。でも、何か感じる処があって、そのスピーカーを貰ったんです」青木氏は貰ったスピーカーの修理先を探し始めた。そんな中、ちょうど、新聞でレストアショップの記事を見つけたそうである。
「電話すると、任せておけと言われ、すぐに4331Bを送りました。思いもよらず手に入れたスピーカーと偶然読んだ新聞記事。そして、たまたま見つけた早稲田の地。JAZZ喫茶を始めろとサッチモに言われて居る様でした(笑)」
そして約半年後、フルレストア済みの「4331B」が開業準備中のお店に届いた。「4331B」の大きさ、高さに合わせて店内を設計し、あとはスピーカーを定位置にセッティングするだけの状態で待ち焦がれて居た到着だった。
「4331Bは鳴らない状態でしたので、初めて音を聴く事になります。ドキドキしますよね(笑)。考えた末に、最初に選んだのはセロニアス・モンクの“ヒムセルフ”でした……。本当にびっくりしましたね。中低音の豊かさ、各楽器の輪郭がはっきり解ったんです。大きな音も凄くいい。月並みな表現ですが、本当にミュージシャンが目の前で演奏して居る様なライブ感でした。他のレコードでも、例えばポール・モチアンやエルビン・ジョーンズのドラムでも繊細なブラシワークの音が見事に再現されます。ボーカルも息遣いまで聞こえて来ます。“ああ、本当はこんな音だったんだ”と言う驚きしかありませんでした」
同氏は、スピーカーとの相性を考え「4331B」の内部配線で使用するケーブルの種類を調べ、それをスピーカーケーブルとしても使用する様に準備して居た。同店に設置された「4331B」は、店の広さを考え、音を遠くまで飛ばす必要がないためホーンレンズが取り外された以外は、場所もセッティングも変えられて居ない。一発でサウンドも決まり、現在も毎日至高のサウンドが鳴り続けて居る。
「長年のエイジングおかげでしょうか。音も馴染み、今が一番いい状態だと思います。あとは、この音をどう守って行くかが課題ですね」
現在、この音に惚れ込み、遠方からLP持参で訪れるお客様も多い。この「4331B」で、自分の大好きなレコードを聴いて見たいと言う訳である。「他のお客様にも是非聴かせて挙げて欲しいと言う事で、お預かりして居る貴重なLPも沢山あります。こうやって、素晴らしいJAZZを、素晴らしい「4331B」で、皆さんとシェア出来るのも、この店をやってよかったと思える事のひとつですね」
大学ノートがお客様の満足を生む。
青木氏が目指すJAZZ喫茶とは何か。
それは「JAZZを真剣に楽しく聴く事が出来る店」である。その為には、お客様の好きな曲を聴いて頂くのが一番と考えた。「大学ノートに、来店したお客様の好み、来店時に何を掛けたかを全部記録して居ます。初めて来店されたお客様でも、観察して居ると、表情や態度、ノリなどで、好きな曲、好きなミュージシャンの傾向は分かります。勿論、リクエストがあった場合は、その曲も書いておき、次回に何を掛けるかの参考にします。前回と違う曲で、なるべくそのお客様の趣味に合う曲を掛けて、楽しんで頂ける様にして居ます」
さらに、同店では、お客様の顔ぶれを考えつつ、皆さんのお好みの中に混ぜて、青木氏の一推し曲もちょっとずつ流される。「僕自身は、デューク・エリントン、セロニアス・モンク、ビリー・ホリデイが好きなんです。エリントンは有名ですが、無限に作品がありますし、実は追い切れて居ない方も多いと思います。また、カバーも多数ありますが、ちゃんとエリントン本人のオリジナルも聴いて欲しい。エリントンは本当に奥が深いです。ですから、知られて居る様で、あまり知られて居ないエリントンを、こっそり推して居ます。勿論、エリントンが好きでは無いと言うお客様もいらっしゃいますので、そう言う時は掛けません。そこで、お客様の表情が曇ると、僕自身が傷つきますし(笑)」
徹底したお客様の好みの記録・分析により、何度来ても、新たな曲が楽しめる。新しい発見や出逢いがある。しかも、自分好みのJAZZが堪能できる……。同店はJAZZを真剣に聴ける店として、早稲田にしっかりと根付いた。勿論、開店時の狙い通り、早稲田大学のJAZZ研のメンバーも多く訪れる様になった。
「4つのJAZZ研は、それぞれJAZZの志向も違いますが、本当によく通って下さいます。ですから、毎日気が抜けません。誰が来たからこう言う曲、前回とは違ったパターンと言った具合に勝負して居ます(笑)。ノートの記録も大事ですが、顔ぶれや、その時の空気を考えて、瞬時に選曲を決める。そして、皆さんが楽しそうな表情になると、本当に嬉しいですね」
同店は、食事のメニューが一切ない。まさに昔ながらの硬派なJAZZ喫茶である。しかし、値段は安い。オリジナルブレンドのコーヒー、お酒類、ソフトドリンクなど、すべて500円均一で提供される。
「やっぱり学生の街ですし、高い料金は取れません。ちょっと苦しい面もありますが、学生さん始め、お客様の嬉しそうな顔を見て居ると、この値段で頑張って続けて行こうと思います」
青木氏は「お店はお客様が作る」と何度も強調して居た。同店はJAZZを愛するお客様に恵まれ、真剣に音楽を楽しめる本格的なJAZZ喫茶に成長した。此れからも「JAZZ NUTTY」は、此処早稲田の地でお客様を楽しませ続けるに違いない。
SHOP DATA
『JAZZ NUTTY』東京都新宿区西早稲田1-17-4
(都営荒川線早稲田駅徒歩1分)
〜〜「懐かし洋画館」〜〜
さて、映画です。今回はセルジオ・レオーネ監督作品「夕陽のギャングたち」です。(過去記事からの再録です。もう一回読んで観て下さいね)
『夕陽のギャングたち』(原題:Giù la testa、英題:Duck, You Sucker)は、1971年製作のマカロニ・ウエスタン。セルジオ・レオーネ監督作品。メキシコ革命の動乱を舞台に、アイルランド人の革命家とメキシコ人の山賊の友情を謳いあげた叙事詩である。本作品と同じくレオーネの監督作品である「ウエスタン」と「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」を併せて、前期の「荒野の用心棒」「夕陽のガンマン」「続・夕陽のガンマン」の「ドル三部作」と対比して「ワンス・アポン・ア・タイム三部作」と呼ぶ事もある。
革命下のメキシコ。家族との盗賊生活に明け暮れるファン(ロッド・スタイガー)は、ぶん取った馬車での道行きで、元IRAの闘士でダイナマイトの専門家ジョン(ジェームス・コバーン)に出会う。爆発物を扱う腕にほれ込んだファンは、国立銀行襲撃を持ち掛けるが断られる。 諦めきれないファンは、ジョンが働くつもりだった鉱山主を殺し、彼をお尋ね者にして仲間に引き入れようとする。革命に未練のあるジョンは、国立銀行のあるメサ・ヴェルデの町でファンを待ち受け、医師(ロモロ・ヴァリ)ら反政府勢力のクーデターのすきに銀行を襲うよう仕向けた。玄関を吹き飛ばし、銀行になだれ込むファン一家。しかし、金はすでに運び出され、建物は政治犯の収容所になっていた。彼らを助け出したファンは、自らの意に反し革命の英雄に祭り上げられた。政府軍の追撃を逃れようと二人はグループ全員を逃がし、グンテレサ(アントイン・ドミンゴ)率いる政府軍を待ち伏せ。ダイナマイトと重機関銃で撃退するが、家族ら反政府グループは皆殺しに遭う。
逆上したファンは単身復讐の攻撃に出るが捕らわれの身に。処刑目前のファンの元へジョンが駆けつけ銃殺隊を爆殺、救出する。二人はアメリカ行きの汽車に潜り込み、メキシコを離れようとするが、政府の実力者ウェルタ将軍が乗り合わせたため、汽車は革命軍の奇襲を受ける。将軍を殺したファンは再び英雄に。しかし後方からグンテレサの軍隊が迫る。
ジョンは、政府軍に捕まり仲間を売った医師と、ダイナマイト満載の汽車に乗りグンテレサを乗せた列車にぶつける作戦に出る。かつて親友に裏切られ、アイルランド革命の夢破れたジョンは、自分が殺した親友の姿を医師に映す。ジョンは衝突の直前に飛び降りたが、医師は機関車とともに革命の英雄として爆死した。脱線転倒した列車から脱出した政府軍と、革命軍の戦闘。ファンと再会したジョンをグンテレサの銃弾が倒す。怒り狂うファンの機関銃が、グンテレサを引き裂いた。「二人でアメリカに行くと言ったじゃないか」と語りかけるファンに、ジョンは煙草を取り出し何時もの様に「火を貸してくれ。お前には済まなかったな」と言う。そしてファンが離れたすきにジョンはダイナマイトで壮絶な自爆を遂げる。その光景に茫然としたファンは「俺は一体どうすりゃ良いんだ.....。」と呟いた。
A Fistful of Dynamite Official Trailer #1 - James Coburn Movie (1971) HD
Duck, You Sucker Coburn & Steiger
Fistful of Dynamite/Duck You Sucker/Giu la Testa
レオーネは『夕陽のギャングたち』の製作に最初から深く関わってきたが、あくまで脚本の執筆など裏方の仕事のみに徹し、自身で監督するつもりは無かったとされる。当初レオーネは本作品の監督としてピーター・ボクダノヴィッチや、レオーネ作品で長く助監督を務めてきたジャンカルロ・サンティを考えて居たが、主演のロット・スタイガーとジェイムス・コバーンがレオーネが監督しない限り降板すると言い張った為、止む無くレオーネ本人が監督する事になった。
この作品は淀川長治さんの「日曜洋画劇場」で観ました。主役の二人、ロット・スタイガーは「夜の大捜査線」(1967年)でアカデミー助演男優賞を得た名優です。ジェームス・コバーンもアクション作品に多く出演していて「電撃フリント・ゴーゴー作戦」「大脱走」などで日本では1960年代から1990年代に掛けて人気があり、煙草のCMでもお馴染みの俳優です。1999年に彼もオスカーを受賞しました。二人とも演技の幅は、広く技巧を凝らした演技が得意な俳優です。まさにレオーネが選んだベスト・キャスティングだった、と言えるでしょう。革命というダイナミズムの中で、男たちがどのように変貌して行ったか、或いは変わらなかったのか、男たちのヒロイズムは男たちへのレクイエムとして、レオーネ監督の遺作となった「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」へと継承されて行きます。革命の熱狂と暴力、男の友情、払拭出来ない苦い過去…ギャングの生き様をアクションとユーモア、そして哀愁を漂わせて描いた傑作です。更にション、ションと印象的なメロディーを作曲したのは、セルジオ・レオーネ監督と長年コンビを組むエンニオ・モリコーネ。話の主軸となるのは2人の友情と革命の裏側です。ファンは革命より日々の糧的な豪放磊落な性格で愛すべき家族に囲まれているが、革命の傷も知ります。一方ジョンは、IRA時代の暗い過去を抱えその記憶をひきずる孤独な男。皮肉にもメキシコ・アイルランドの両革命の背景により育まれる友情がグッときます。他の闘士たちの想いも交錯して熱いです。この作品はセルジオ・コルブッチ監督作「突撃0号作戦」と並んで革命物の映画として長く語り継ぐられて行く作品だと思います。
この映画には忘れられない思い出があります。今から19年程前、まだ、ビデオテープでしかこの作品は発売されて居ませんでした。レーザーディスクも国内版は発売されてなく、結局、レーザーディスクでは発売に成りませんでしたが。この作品のビデオを見た人が、どうしてもカットされて居る部分が観たいとネットの掲示板で切実に訴えて居たので、当時、輸入盤のレーザーディスクなら、5分程尺が長かった為、完全版では無いけど、ビデオテープよりは5分程長いので、その人にメールを送って、渋谷と新宿の輸入盤レーザーディスク専門店の住所と電話番号、値段を教えて挙げました。彼女は渋谷にあるIT企業に勤めていたプログラマーで、年も当時まだ27歳と若かったのですが、何でも住んで居る処が横浜で毎日、電車で通勤して居るとの事でした。話をして見ると、マカロニ・ウエスタンやらフィルム・ノワールが好きなそうで、話が合い、すぐに好感を持ったのですが。彼女に、輸入盤レーザーディスクを教えると、すぐに返信があり、大変感謝されました。それから時は流れ、DVDの時代に成ると、「ステングレイ」と言う、マイナーレーベルから160分近くの完全版のアメリカ・バージョンとイタリア・バージョン2枚組のDVD・BOXが発売され、すぐに彼女の事を思い出し、メールを久し振りに入れて知らせたら、返事が来ないので、おかしいなと思い彼女のHPを見てみたら、何と胃癌で亡く成って居ました。そんな事がありました。この作品は、今はスティングレーからは発売されて居なくて、確かパイオニアからかな、発売されて居ると思います。最近よくBS/CSで放送もされて居ます。
===『Bluesharpとはなんだ!!』===
ハーモニカ豊富!谷口楽器
その1~安い!
ハープは現在の日本でも3000円前後ですから、楽器としては可也安い方ですね。
所得の低かった当時の黒人にとって安い事は大前提でした。
ギターもシアーズ・ローバック(現在は百貨店)が激安通信販売を始めた事から一気に広がったと言われて居ます。
その2~軽い!
ブルースマンと言えば「放浪の旅」がつきものです。
人の集まる処へ行っては、どこででも歌って稼いで居たのですから、大きな楽器やセッティングの複雑なものではダメだったのです。
その点ハープはポケットに入るサイズで最高のモバイル楽器ですね。私もいつも腰のベルトにハーモニカフォルスターを下げてブルースハープを1本入れて外に行きますよ。どこでも「ギグ/セッション」が出来る様にね。
kiyasumeの気休めでヘタクソなハーモニカソロ。(笑)
その3~ブルーノートが表現できる!
やっと音楽的な話になりますが、ブルースに欠かせない「ブルー・ノート」は半音以下の微妙な音程です。
もともとアフリカの民族音楽では半音以下の音程をきちんと唄い分けて居たそうです。
ハープでは「ベンド」を使ってこの微妙な音程を表現出来ますし、ギターもチョ-キングを使って表現出来ます。
ボトル・ネックを使ったスライド奏法も、もともとその為に生まれた様です。
現に古いデルタブルースほどスライドを多用して居ますよね。
あともう2つ、3つの条件に当て嵌まるブルースにピッタリの楽器があります。
もうお分かりですね。 それはキーボードとサックスです.....。
ベンド をおぼえる 〜 テンホールズハーモニカ ( ブルースハープ )の Bend ( ベンド )奏法 〜
Amazing Harmonica Solo intro by Tom Walbank and John Hardy by Mark Growden
Mark Hummel Creeper Returns
Luis Robinson - Chitlins con carne
Blues Harp Natsuko Band-Rocket 88
Same Old Blues - Clarence Gatemouth Brown
Clarence Gatemouth Brown-Okie Dokie Stomp
Clarence "Gatemouth" Brown - Caldonia Live 2000
Clarence Gatemouth Brown - "Honky-Tonk" [Live from Austin, TX]
Anna Lee - Earl Hooker
Blue Guitar - Earl Hooker
Earls Boogie - Earl Hooker 1969
Little Hubert Sumlin with Sunnyland Slim - Come On Home Baby
Hubert Sumlin plays Howlin' Wolf
今回は此処までです。此処まで読んでくれて有難う御座いました。調子が上がったらまた更新します。そしたらまた逢いましょう。
それまで宜しく。。。。