私は葛飾北斎が大好きです。長野県小布施町には北斎美術館もあり何回となく訪れています。北斎「富嶽三十六景」には一図一図に、北斎の意図や見どころがあります。北斎は、LIFE誌が選ぶ「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」に選ばれた唯一の日本人。「富嶽三十六景」及び「北斎漫画」は、世界のゴーギャン、ゴッホ、セザンヌ、モネ、など多くの印象派画家に影響を与えています。まさに世界の「北斎」です。
「本所立川」
東京都墨田区緑四丁目
「立川の材木問屋数多く 職人の姿生き生きとして」
立川は運河の堅川のことです。この運河が隅田川に交わるあたりには、材木問屋の材木置き場が多くありました。製材された丈の高い材木の間から小さく遠慮したような感じで富士が見えます。一方、木片を投げている人、それを受取ろうと構える人、鋸を挽く職人などの表情は生き生きと描かれています。小さく見える富士以外、殆どは直線で構成されています。材木置き場の看板に「西村置場」、材木に「永寿堂仕入」「新板三拾六不二仕入」と書き込み、版元と本シリーズの宣伝をしています
「深川万年橋下」
東京都江東区清澄二丁目
「深川の万年橋は賑やかで 人の往来活気に溢れる」
万年橋です。万年橋は、江戸深川を流れる小名木川が隅田川に合流する地点にかかる橋をいいます。隅田川に浮かぶ船の中から、万年橋を見上げたような構図が印象的です。また、その両岸をつなぐ太鼓橋の弧と橋桁が目を引きます。橋の手前の船の舳先が示す方向に目をやると、橋桁の向こうに富士が見えます。橋の上には多くの人で賑わっています。対照的に一人の釣り人が描かれています。
「五百らかん寺さざえどう」東京都江東区大島四丁目
「栄螺(さざい)堂江戸の人気の拠点こそ 富士を仰ぐ絶景の場所」
五百羅漢寺(現在は目黒区に移転)は元禄8年(1695)に開山した黄檗宗寺院です。内部に螺旋状の階段を持つ三階建ての栄螺(さざい)堂を建立しました。内部の百観音を参拝するうちに高楼にたどり着き、外に出ると目に入ってきたのは富士です。やっと着いたと荷物を下ろす旅人、川面を渡る風が心地いい。あれが富士だと指さす町人や芸妓・子供、武士など様々な階級の人々。人々の視線、板目、屋根の梁の線がすべて富士を指す構図となっています。
「青山円座松」
東京都渋谷区神宮前・龍巌禅寺
「原宿の円座松と富士描かれて 賑やかな酒宴花より団子」
円座の松は、原宿村の龍巌寺境内にあった名木です。江戸近郊の名所としてこの寺と松は知られており、「江戸名所図会」にも紹介されています。参詣者は寺の広い庭園を散策してこの松を鑑賞しました。北斎は、富士を三角形に描いて、大きな笠松を小山のような半円に描き、対照させています。松葉の中で掃除する人の手足、父親が子どもを手ぬぐいで引っ張って坂を上る姿など、細かく描かれています。築山の上で賑やかに酒宴が催されています。景色よりも酒のようです。
参照
https://media.thisisgallery.com/20208048
https://fugaku36.net/free/nihonbasi
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