私は葛飾北斎が大好きです。長野県小布施町には北斎美術館もあり何回となく訪れています。北斎「富嶽三十六景」には一図一図に、北斎の意図や見どころがあります。北斎は、LIFE誌が選ぶ「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」に選ばれた唯一の日本人。「富嶽三十六景」及び「北斎漫画」は、世界のゴーギャン、ゴッホ、セザンヌ、モネ、など多くの印象派画家に影響を与えています。まさに世界の「北斎」です。
「上総ノ海路」
千葉県安房郡鋸南町
「房総は輸送帆船行きかいし 水平線のかなたに富士が」
江戸時代、房総から江戸へは、輸送船によって様々な生活物資(コメ、酒、醤油など)が運ばれていました。帆を張った2隻の船が江戸へと向かっているのでしょうか。帆と帆綱に間から小さく富士が見えます。大きな船と小さな富士の構図です。船の窓から人物の顔や背が見えます。水平線は弧を描いています。右側の陸地は三浦半島です。北斎自身も実際に運搬船に乗り、房総方面へ旅をしたといいます。
「登戸浦」
千葉市中央区・登戸神社
「登戸は穏やかな時流れるも 江戸時代の風情垣間見る」
鳥居の間から富士を望むという北斎の構図です。大小二つの鳥居は、本来はもっと離れています。浅瀬で汐干狩りを楽しむ人々。おしゃべりする女、追っかけこで遊ぶ子どもたち、貝でいっぱいになった桶を得意げに運ぶ漁師、彼らの楽し気なひと時、健やかな時間の流れを感じます。登戸浦は、江戸築地に荷揚場を持ち、年貢米や海産物を房総半島から江戸に海上輸送する拠点の一つでした。
「常州牛堀」
茨城県潮来市牛掘
「朝飯の音に驚く白鷺の 牛堀水郷多くの船が」
牛堀(茨城県潮来市)は、霞ケ浦南端の水郷です。当時は、鹿島や銚子などへ向かう航路として多くの船が行き交っていました。巨大な舟の舳先が対角線に置かれています。船の先端には、屋根で覆われた部屋があります。乗員が寝起きしているようです。これから船のうえで日々を送る人々の一日が今始まるのでしょうか。朝飯の仕度で、コメのとぎ汁を船外に流しています。その音に驚いて白鷺が飛び立っていきます。静けさの中に音を感じさせます。
「東海道品川御殿山ノ不二」東京都品川区北品川三~四丁目
「御殿山富士に桜の名所こそ 庶民の楽しみ今昔同じ」
東海道に面した御殿山には、将軍家の品川御殿が置かれ、その後桜の植樹が行われ、富士と桜が一緒に楽しめる名所となりました。花の盛りのころには、敷物を広げて宴を催す人、扇を広げて舞う人たち、子供を背に花見を楽しむ夫婦など、今も変わらない風景です。画面右下の小僧の担ぐ風呂敷に、版元西村屋の商標(山形に三つ巴)があります。画中の人物のしぐさや隠された図像や文字に目をこらすのも北斎画の楽しみ方です。
参照
https://media.thisisgallery.com/20208048
https://fugaku36.net/free/nihonbasi
※5月6日(土)7日(日)はお休みです。
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