『うまい!』
「課長。今の電話の方は馬場さんでしたっけ?」
「オレも電話に出たがはっきりしなかったな。駒田さんか?」
「そんなわけないでしょ。馬坂さんじゃないですか?」
「確か食べ物に関係がある苗字だったと記憶しています」
ここはある商社の営業課。電話で商談が成立した相手の名前をうっかり聞き忘れた。
課長、係長、主任、新入社員は顔を見合わせる。
誰も責任を取りたくないのでゴタゴタ問答を始める。
「課長。馬の名字が付きます」
「食べ物に関連する苗字です」
「馬坂さんに間違いありません」
「オレは馬坂さんだと思わないぞ」
みんなで課長に向かって指をさす三人。
課長はしぶしぶ履歴から電話をかけて「もしもし」と電話の主を呼び出す。
課長は小声になる。うまいうまい、とばかり言葉を繰り返す。
不安に感じる三人。課長が電話を切る。
「課長。ヨイショしてたんですね?」
「食べ物の名字じゃなかったんですね?」
「馬坂さんだったんでしょう?」
課長が三人を「静かにしろ」と一喝する。
静まり返る三人。課長が咳払い。
三人が課長のそばに寄って「どんな苗字なんですか?」と尋ねる。
「馬井さんだよ。だからうまい、うまいっていっただろう? 無能な部下奴」と苦笑いした。
※古代史の分身たる牧野君の著作です。
よろしくお願いします。
※牧野君はボカロpもしてます。
まだ駆け出しですがよろしくお願いします!