8月○日 午後
看護師「○○さん、採血しますねー。このあと点滴ですから右腕から採血します。」
ベッドの位置的に、左側のほうが点滴治療しやすいらしい。両腕に針を刺されるのは初めてだ。
点滴は、レムデシビルと生理食塩水、もう一種類(確認できなかった)を二時間かけて打つそうだ。
ポタポタと流れる点滴を見つめながら色々な感情や想いを巡らす。
何でこんなことになった
M西 あいつのせいだ
症状出ていながら出勤してきやがって
発熱してないからといって働かせた会社も会社だ
マスク無しで所構わず咳しやがって
どれだけ社内外にウイルス撒き散らしたとおもってんだ
くそくそくそくそくそくそくそ!
やめよう、馬鹿らしい。
腹も減ってきた。そういえば、朝から何も食べてなかったな。
何も食べなかったのは、味覚と嗅覚を失ったからだ。入院2日前の夜に鼻の奥が焦げ臭い感覚があった。嫌な予感がした。
翌朝、起きがけにコーヒーを飲む。
ん?薄い?水っぽい。
香りは…全く無い。いつもの香りがしない。
コロナ感染で、味覚や嗅覚の消失の症状は、ネットやSNSで見知ってはいたが…
実際に自分自身がなると結構なショックを受ける。
五感のうちの二感を失なった。こう文字で起こすと大事(おおごと)に感じる。
とりあえず味がするものを探そう
冷蔵庫から
フルーツゼリー
トマトジュース
豆腐
納豆
ササミの梅しそあえ
を取り出す
自分の場合は、トマトジュースが若干の甘味を感じたぐらい。あとは感じたことのない苦味や塩味で食べれたものではなかった。ササミが苦い、豆腐が苦い。
納豆は無味。タレの塩気だけが、普段よりだいぶしょっぱく感じた。とにかく、食欲どころではない。食べ物が口の中に入らないのだ。
皆、一口、二口だけ食べて残してしまった。
ちなみに味覚、嗅覚異常は今もだ。完全に戻るかどうか、不安で結構なストレスになっている。
続きます