(2006年1月某日)
ハワイ島滞在中、なぜか妻より先に目が覚めてしまうぼくは、
毎朝コナ・コーヒーを入れてから妻を起こすことが日課に。
この日も、まだ眠い目をこすりながらベッドルームから出てきた妻に、
ドリップし立てのコーヒーが入ったマグカップを渡します。
ふたり揃ってラナイに出て、椅子に腰を下ろすと、
頭上からは鳥の囀り、足元からは波の打ち寄せる音が聞こえてきます。
潮風と朝の光を感じ、
海を眺めながらのモーニング・コーヒー。
至福のひと時です。
「ところで、今日の予定は?」と妻に訊くと、
「特にないけど・・・」の返事。
そんな時は、とりあえずカハルウ・ビーチでシュノーケリングでも・・・というのが、
私たち夫婦のパターン。
でも、3日前に訪れた際、あまりの人の多さに少し辟易。
そこで、ぼくは、
「じゃあ、せっかくだから、人のいない所へ行くのはどう?」と提案。
妻は、寝起きでまだ頭がハッキリしていないのか、
「どこ?」と、やや物憂げな声。
ぼくは、ガイドブックを取り出し、あるページを指差しました。
「ここなんだけど。」
そこには、
『郡立公園に指定されている魅力的なビーチがある小さな漁村。』
『シュノーケリングにもってこいの穏やかな海が広がり、
観光客だらけのビーチとは違ってほっとできる。』
と書かれています。
実は、以前から行って見たいと思ってた場所なんだけどと打ち明けると、
あまり気乗りはしないものの、取り立てて反対することも無いと思ったのか、
妻は「いいんじゃないの~。」と、あっさり同意。
「じゃ、決まりということで!」
朝食を済ませ、
シュノーケリング・セットを車に積み込み、コンドミニアムをいざ出発!
<My Drive Course>
カイルア・コナから、
11号線(Kuakini Hwy.~MamalahoaHwy.)をひたすら南へ。
プウホヌア・オ・ホナウナウとの分岐点ケオケア<Keokea>を過ぎ、さらに南下。
102MMを見つけるまで、ひたすら走り続けます。
マイル・マーカーを過ぎたところで、
ほどなくホオケナ<Ho'okena>の標識が!
ちょうどカーブになっているところで、右折。
坂道を下って行きます。
アスファルトで舗装はしてありますが、
平らではない箇所もあり、多少ガタガタと揺れます。
約3.2km、5分ほど下ったところで小さな集落に到着です。
道なりに進んで行った突き当りが、ビーチの駐車場でした。
ホオケナ・ビーチ・パーク<Ho'okena Beach Park>
かつては、典型的なハワイの村だったホオケナ。
19世紀末には中国人移民によって、商店やレストラン、宿屋などができ、
また、ここの波止場からホノルルの市場へ牛を出荷していたため、
多くの人々で賑わっていたそうです。
しかし、ハワイ島を一周する道路が完成すると波止場が使われなくなり、
次第に人も去って行き、ホオケナは寂れたんだそうです。
(とはいえ、この村で暮らしている人がいるので、数件の民家が建っています。)
さて、予定時刻よりも早く、目的地に到着!
車を降りて周りを見渡すと、
立派な公衆トイレや、駐車場脇にはシャワーもありました。
ピクニック・テーブルもあり、快適に過ごせそうなビーチです。
キャンプをしているのか、椰子の木陰にはテントも張ってありました。
ビーチは、サラサラの黒砂海岸です。
とりあえず、
私たちは砂浜にゴザを敷き、腰をおろして一休み。
ピクニック・テーブルには、数人のロコのオジサンたちが座っていますが、
砂浜には、ぼくたちの他には人が見当たりません。
背後は断崖に囲まれているため、
ほかの場所とは隔絶されているような雰囲気が漂っています。
とっても静かで、のんびりとしたビーチです。
やって来て数分と経たないうちに、すっかり寛いだ気分に!
ふと見ると、
かつて波止場のあった辺りにお爺さんがひとり立っていました。
お爺さんは後ろ手で立ったまま、足元の海をじっと見つめ微動だにしません。
何をしているのだろうかと少し興味を惹かれましたが、
この時は、あまり気にせず、そろそろシュノーケリングをしてみることにしました。
一旦、車に戻りシュノーケル・セットを取り出していると、
一台の車がやって来ました。
ぼくたちの隣に停め、車から降りてきたのはアメリカ人の女性ひとり。
彼女も多くの観光客で賑わうビーチを避けて、やって来たのでしょうか?
赤いビキニにパレオを巻いた彼女は、
レジャー・シートと手荷物を持って砂浜へと向かいます。
それは偶然だったのですが、
砂浜へと向かう彼女のすぐ後ろをぼくが歩き、
さらにぼくの後ろを妻が歩いていました。
妻は手に抱えていたシュノーケル・セットから足ヒレの片方を落としてしまい、
アタフタ。
それに気付かず先に行くぼく。
落とした足ヒレを拾い上げようと焦っている妻に、
ピクニック・テーブルに座っていたオジサンのひとりが、声をかけました。
「早く追いつかないと、ほかの女に盗られちゃうよ!」
妻は、からかわれたのが分かったのか、
照れ笑いでごまかしながら追いついて来ました。
エントリーは、波止場の辺りから出来るとガイドブックに書いてあったのですが、
私たちは砂浜から入っていくことに。
海は、シュノーケリングにはもってこいの穏やかさ。
砂浜から泳いでいくと・・・、
ビックリするほど急に海底が深くなりました。
サンゴ礁があちらこちらに広がっています。
そして、サンゴ礁の間を縫うように色んな魚が泳いでいました。
沖に出てしまうと潮の流れが激しいので、それだけは注意しながら、
湾の中をシュノーケリング。
海底には大きなウニも沢山いました。
妻は、ぼくに向かって、ウニを捕って来るようにと盛んにアピールします。
食べるつもりなのでしょうか?
しかし、さすがに深すぎて「それは無理!」と、×のサインで断るぼく。
軍手だってしてないし・・・というか、捕ってはダメ!!
時には、沖合いを通り過ぎるイルカの群れが見られることもあるそうですが、
この日は残念ながら、見当たりませんでした。
また、やや水温が低かったので長くは泳いでいられませんでしたが、
それでも、充分シュノーケリングを楽しむことができました。
来るまでは、それほど乗り気ではなかった妻も、すっかり興奮。
「ああ、楽しい。来て良かったね。」と何度も繰り返します。
砂浜に上がり休んでいると、
波止場跡の岩場に、さっき見かけたお爺さんがまだ立っていることに気づきました。
しかも、同じ姿勢のまま、足元の海を見つめています。
私たちがシュノーケリングをしている間も、立っていたのでしょうか?
だとしたら、1時間近く立ち続けていることになります。
「いったい、何をしてるんだろうね?」
俄然興味が湧いてきました。
「もしかして、立ったまま死んでるんじゃない?」
妻が馬鹿なことを言います。
すると、私たちの会話が聞こえたかのように、
それまで微動だにしなかったお爺さんが、動き出しました!
そして、駐車場近くの家の中へ、姿を消してしまいました。
「ほら、失礼なこと言うからだよ。」
「そんな、聞こえるわけ無いじゃない。」
せっかく興味を持って見ていたのにお爺さんがいなくなってしまい、
ちょっと肩透かしを食らったような気分です。
それにしても、
「ちっとも訳が分からないなぁ。」と、誰もいなくなった岩場を見ていると・・・、
やって来ました!再びお爺さんの登場です。
しかも、黒い塊のようなものを両手で抱えています。
「おっ!これは、何かが始まるぞ!!」と、嫌でも気付きます。
お爺さんは、さっきまでいた岩場に再び立つと、ピタリと動きを止め、
じっと足元を見つめています。
心なしか緊張感が伝わって来るような気もします。
1分、2分・・・・お爺さんは、また固まってしまったかのようにピクリとも動きません。
しかし、そろそろ何かが起きそうな雰囲気も漂ってきています。
いったい何が始まるというのでしょうか?
と、その時は何の前触れも無く不意に訪れました。
お爺さんが両腕で抱えた黒い塊を、ここぞとばかりに空中へ放り投げたのです。
投げ出された塊はパッと広がり網となって海面へ!
そう、黒い塊は投網だったのです。
どうやらお爺さんは、ここに暮らしている漁師さんだったようです。
力強く手繰り寄せ、引き上げられた網の中には、
大きな魚が数匹入っているのがはっきり見えます。
つまり、この1時間近く立ち続けていたのは、
あの魚たちを捕まえるタイミングを計っていたということなのでしょうか?
なんとも、辛抱の要るというか、気の長い漁です。
お爺さんは、捕れた魚を抱え、いそいそと引き上げていきました。
正午前になると、さすがにビーチにやって来る人たちも増えてきましたが、
それでも数えられる程度で、私たち以外日本人はいませんでした。
お腹が空いてきたので、私たちはコナの町に戻ることに。
初めて訪れたホオケナ。
そこは、ランチを持って来て、
日光浴でもしながらのんびりと過ごすのもいいと思える、
とっても静かなビーチ。
またひとつ、お気に入りの場所が増えました。
Mahalo!
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