フアラライ山の中腹、コーヒー・ベルトを走り抜け、11号線(Mamalahoa Hwy.)へ。
ケオケア(Keokea)で160号線へ右折。
坂道を下ってプウホヌア・オ・ホナウナウ国立歴史公園までドライブしました。
このコースは、1990年にツアーでハワイ島へ来たときの半日観光コースでした。
その時は、
Mauna Loa Royal Kona Coffee Mill&Museumでコーヒーを試飲するはずが、
あいにく閉まっていて立ち寄ることが出来ず、
現地スタッフの運転するワゴン車に乗って一気にホナウナウまでやって来たのでした。
私たち夫婦にとっては、新婚1年目にして初の海外旅行。
ウキウキ気分でツアーに参加したのですが、
同乗していたもう一組の家族は、
夫の父親同伴で、冷えた夫婦関係の修復のために来ていました。
「お金を出してくれたのが父親だから、来るなと言えなくて・・・。」
と、何故かご主人が僕の妻にこぼしていました。
そんな対照的な二組の家族が乗った車内は、
とぉ~っても微妙な空気が漂っていました。
あの夫婦が、ちゃんと関係を修復できたか否かは、
今となっては知る由もありませんが・・・。
でも、今回は二人っきり。気兼ねなく楽しめます。
駐車場に車を停めてヴィジター・センターへ。
受付窓口へ行き、5ドル(ひと家族につき)を払いました。
ここも、火山国立公園と同じく、レシートが一週間有効のパスになります。
「Turtle を見かけても、近づかないでください。10フィートは離れて下さい。」
と言われたので、分かりましたと答えて園内へ。
受付で貰ったパンフレットを見ながら、順路に従って敷き詰められた砂の上を歩いていきます。
そこには、昔と変わらない景色が広がっていました。
ケオネエレ湾(Keone'ele Cove)は、浅く穏やかです。
ここは王族のカヌーの発着場だったそうです。
遊泳可能ですが、泳いでいる人は見当たりませんでした。
その小さな入り江の砂浜には、
・・・いました。
甲羅干し中のHONU(ウミガメ)が!! (
拡大できます。)
周りの黒い岩と同化していて、はじめは分からなかったのですが、
何か変だと思って見ていると、HONUだと気づきました。
レンジャーに言われたように、10フィート(3m)以上離れて写真を撮りました。
湾に沿って、岬の先端へ。
この公園内のランド・マーク、『ハレオ・ケアエ・ヘイアウ』。
ここには23人の首長の遺骨が埋葬されていて、
マナ(霊力)に満ちた場所だそうです。
ここまでが、王族の地。
そして、石積みの長い壁で区切られた先が、
プウホヌア(Pu'uhonua)です。
厳しいカプ制度によって律せられていた古代ハワイの生活。
重大なタブーを犯した者は、死罪でした。
そうしなければ、災厄に見舞われると信じられていたからです。
しかし、罪を犯しても死罪を免れる方法が、この地に逃げ込むこと。
逃げ込めれば祭司の祈りによって罪は消滅し、また元の生活に戻ることが出来たのだそうです。
プウホヌア(逃れの地)の名の由来です。
ただし、つかまらずにたどり着くには陸地からは無理なので、
外洋へ出て、海から泳いで来るしかなかったようです。
そんな、ハワイ人にとって重要な聖域を歩いているはずなのに、
僕には、ガイドブックに書いてあったような厳粛な空気、
或いは、神聖な空気を、ここでは感じ取れなかったのです。
それは、この地が最早、
信仰の地ではなくなっていることと無縁ではないのかもしれません。
カメハメハ大王の息子リホリホが王位に着いた後、
男女が一緒に食事をしてはならないというカプを破り、
王女とともに食事をしてしまったのです。
しかし、災いが何一つ起きなかったため、
それまでの神への信仰をやめてしまったのです。
リホリホ王は、それまでの神殿や偶像、逃れの地を破壊するよう命じました。
つまり、ハワイ人自ら『カプ制度』を捨て去り、
宣教師たちの布教による新しい神『キリスト教』へと、ハワイの信仰は変わっていったのです。
(当然、フラも禁止されてしまいました。)
キリスト教のもとでは、『逃れの地』は意味がありません。
いくらそっくりに復元しても、一度失われた神性は、
取り戻すことが出来ないもの。
もちろん、歴史的な価値があることは確かです。
もう一度訪れてみて、よかったと思いました。
などと、色々思いをめぐらせながら、全長約800メートルの散策路を歩いていると、
妻はここの景色を見て、
「ねぇ、なんか長野みたいじゃない?」と言います。
「はぁ?・・・ナガノ??」
僕は思わず素っ頓狂な声を出してしまいました。
「どこが?」
僕が当然の疑問を口にしても、妻は答えることなくさっさと先へと歩いていきます。
妻が何故そう思ったのかは、今も謎です。
もっとも、公園の入り口近くの木に生っていた実を指差して、
「ウルトラマンに出てくる怪獣みたいじゃない?」
と言う人なので、あまり深くは考えないようにしています。
(ちなみに、怪獣みたいな実とは『ノニ』のことでした。)