日本人の魂魄(こんぱく)

魂とは、精神。
魄とは、身体。
連綿と受け継がれてきた日本人のDNAを、なにげない日常の中で再発見するブログ。

桶王物語

2019年10月07日 | 旅行
若いときに、台湾へ旅行に行った。

今ならタピオカミルクティー行脚なんだろうけれど、もうン十年も前だから足裏マッサージ三昧するぞー、と台北に降り立った。

足裏マッサージは、期待とは裏腹に日本より気持ち安いような値段で、三昧というわけにはいかなかった。

台北101だったか、そうじゃなかったか、近代的な高層ビルの真横の細い道に屋台がびっしりと軒を連ねていて、小籠包を食べに毎晩通った記憶がある。

これも記憶が定かではないけれど、とっても大きな通りに面したところに、日本の桶や木でできた風呂釜がところ狭しと置かれているお店があった。

「木の風呂釜、ほしい!けど、台湾から日本に送ったらすごいお金かかっちゃうなぁ。」そんなようなことを話していたと思う。

と、つかつかと店の奥から布袋様のような体格の年配の男性が出てきて、日本語で話しかけられた。

日本人と全く変わらない流暢な日本語で話すその台湾人の男性は、日本統治時代に日本人に桶の作り方を教わったそうだ。
そこから小一時間近く、彼の半生を聞かされた。

詳しい内容は忘れてしまったが、桶作りを生業とするに至ったいきさつ、修行時代、そして私生活を話していた。

たぶん日本人と知ると、誰それかまわず話しかけているのだろう。

最後に、コピー紙をもらった。
それはB4紙に、びっしりと今話した内容をしたためてあり、「桶王物語」と題してあった。

「桶王物語」は、残念ながらいま手元にない。
でも日本語が話せるのがうれしくてたまらないといった話しぶりや表情は、心に強く残っている。