仏像彫刻と共に歩む侊慶の記録

仏師 紺野 侊慶の記録

弥勒菩薩制作2

2012年04月01日 | 侊慶の作品制作


これより徐々に粘土を見ながら縮めていきます。

この時点でも縦横の線は重要で、消えては描いての繰り返しをしながら追い込んでいきます。

広隆寺の弥勒菩薩を見本に制作いたしましたが、あくまで参考にして制作したオリジナルの弥勒菩薩です。

違いといえば頬にあてている手を少し小さめにしました。また、反対の下げている手の甲も膨らみをもたせたり、他にもいくつかの工夫をいたしました。

仏像には良く見せる基本的な比率がありますが、それはあくまで基準で大きさに合わせバランスを変える必要があります。

    

東大寺 仁王像  運慶・快慶作                 三十三間堂 千手観音 湛慶作
たとえば大きな仏像だと頭を大きくする事があります。

それは見ている人の位置から頭が遠いため、基準の比率で制作してしまうと頭が小さく見えてしまいます。そのためにバランスを変えて大きくするのです。

また前回お話しした面との兼ね合いも考え制作する必要があります。
この考えは、千年前の仏像にも取り込まれており、先人の技術にはいつも圧倒されます。


今回の制作で、この広隆寺の実物には台の後ろの部分に穴がある事を知りました。

これは光背があった跡で、ここに取り付けられていたことがわかります。

どのような形の光背があったのか分からないため今では、いろいろと想像してしまいます。

しかしながら今でも同じスタイルで光背が残っているもうひとつの弥勒菩薩があります。




奈良 中宮寺 弥勒菩薩

奈良・中宮寺の弥勒菩薩です。
宝珠のような形をした光背がついています。時代が同じ頃に作られたため広隆寺の弥勒菩薩も似たような光背だったかもしれません。
また時代が下がると鎌倉時代にはこんな弥勒菩薩も登場します。





醍醐寺 弥勒菩薩  快慶作
京都・醍醐寺の弥勒菩薩です。
日頃「このような光背だったらどうだろう」と昔の作者に問いかけたりしながら色々と想像をして制作に励んでいます。
このように仏像は歴史を超えた楽しみ方もできますので皆様もどうぞ参考にしてください。


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