仏像彫刻と共に歩む侊慶の記録

仏師 紺野 侊慶の記録

六波羅蜜寺

2008年10月24日 | 仏像を訪ねて
兼ねてより京都や奈良の仏像をじっくりと拝みたいと思っておりましたが、最近そのような事を定期的行うことが出来るようになり、京都の六波羅蜜寺を1日かけてじっくりと拝観して参りました。
                 
                

今回は兄弟子の仏師 関 ?T雲さんにご同行頂きました。

六波羅蜜寺は十年ほど前に一度訪れた事がありましたが今回再び拝観し、改めて仏像の素晴らしさに感動いたしました。

これから定期的に私達の目線から見た仏像の素晴らしさをお伝え出来ればと思っております。

まずご本尊に礼拝し、本堂の裏にあります宝物館へと進みます。

そこには兵火からのがれた平安、鎌倉時代に制作された素晴らしい15体の仏像が安置されています。

その中でも今回は、歴史上日本を代表する仏師運慶作(代表作 東大寺 金剛力士像〔仁王像〕)と言われる地蔵菩薩坐像(夢見地蔵)について、あくまで私の見解ではありますが、お話させて頂きたいと思います。

まず初めに手を合わせて、全体を一目見た時に息をのんでしまいました。

千年の時を越え私を迎え、優しく語りかけて下さっているような感じがいたしました。

またその気品と完成度の素晴らしさに今にも立ち上がりそうな程の魂を感じる事ができました。

全体をじっくりと見仏させて頂き、いよいよ仏師としての目線からこの地蔵菩薩の部分部分を見ていきます。

まず、始めに感じたのが、袈裟など装束のシワの彫り方や動きに大変特徴があることを感じることが出来ました。
一本一本のながれの素晴らしさはさることながら、隣どうしのシワが均一の方向にならないよう、また重なりあわないよう立体感を出す工夫がたくみに彫りこまれていました。

また手の指にも立体感や躍動感を出す工夫がなされていて素晴らしい動きを感じ取る事ができました。

皆さんも拝みに行かれた際は是非、右手の本来錫杖を握った手を少ししゃがんで小指の方から穴を覗くようにご覧になってみて下さい。

図にも掲載してみましたが握っている指が少しずつ互い違いになっている様子がご覧頂けると思います。

これは小指側から見たときに他の指を全部少しずつ見えるようにする事で立体感や躍動感をあらわす工夫であって、その絶妙なバランスに大変感銘いたしました。

この様な技法から奥行きと立体感が生まれ、素晴らしい動きのある手になるのだと改めて教えられました。

両方の腕が内向きになっていて、正面から見た時に、ひじの辺りまではっきりと見えるように彫ることで、全体としての立体感も素晴らしく、大変考えられて制作されたことが分かりました。

他にもさまざまな技法が見られ、仏師として大変身の引き締まる想いが致しました。

皆様、ご拝観なさる際は是非そんな所にも目を向けてみて下さい。

改めて先人の素晴らしさに感動いたしました。

                              佛師 紺野?T慶
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