礫川雪ノ旦 こいしかわゆきのあした コレクション アート工房 雲のゆくえ
北斎の「冨嶽三十六景」中、唯一の雪景色である。「雪ノ且」の且は旦の誤り。夜のうちに積もった雪で、江戸の町はすっかり銀世界に変わった。起伏の多い小石川のあたりでも特に眺めのよいこの茶屋は、朝から雪見客で賑わっている。女性が指す方向に小さく描きこまれた三羽の鳥が空の高さと広さを表している。
北斎の雪景は珍らしい。今の文京区(もとの小石川)のあたりは高台が多い。その高台の料亭で男が雪見酒を楽しんでいる図で、白皚々たる満天地のあなたに、これもすっぽり雪をかぶった富士の姿が見える。空は雪晴れである。