朝、襟もとが肌寒かった。タオルを巻くのもちゃちいし、さりとて室内でのマフラーもブカブカして邪魔くさい。「そうだ、あった筈だ」とタンスの引き出しからアスコットタイを探し出した。「私もお洒落した頃があったな」、そんな思いを懐かしながら、只ただ温さ欲しさに首に巻いた。その折、自分に言い聞かせました。「まだまだお洒落心を失ってはいかん年齢だ」 絵:パリ風景 リトグラフ+彩色