昔ガンダムシリーズの宇宙世紀(以下U.C.)に関するシンポジウムが開かれたことにインスパイアされてU.C.に関して研究した内容を記事にしていますが(⇒前回までの記事はコチラから辿っていただけると幸いです)、今回は新春ということで、以前から疑問に思っていたことをまとめたいと思います。
それは、「なぜシャアには高機動型ザクⅡが配備されなかったのか?」です。
MS-06F ザクⅡF型をベースに同じくF型の派生機で ” 赤い彗星 ” の異名を持つシャア・アズナブル少佐のシャア専用でお馴染みのMS-06S ザクⅡS型こと指揮官用ザクⅡを上回る性能を持つ宇宙戦用に特化したMSとして開発された高機動型ザクⅡは先行量産型のR-1型(MS-06R-1)を皮切りに改良型のR-1A型(MS-06R-1A)を経てMS-09R リック・ドムとジオン公国軍の次期主力MSの座を争うR-2型(MS-06R-2)まで開発される訳ですが、F型の性能向上を求める熟練パイロットからの要請に応じたとする開発の出自及びそれに相応しい性能とそれに伴う扱い難さより、” 白狼 ” ことシン・マツナガ大尉や ” 黒い三連星 ” らエースパイロットに配備された機体とされています。
特に ” 真紅の稲妻 ” ことジョニー・ライデン少佐が受領したR-2型はわずか4機しか製造されず、開発元に試験用に残された1機とジョニー・ライデン機を除くとロバート・ギリアム大佐とギャビー・ハザード中佐がそれぞれ受領したとされています。
それらの機体の多くがエースパイロットのパーソナルカラーを纏ったとされ、指揮官機であることを示すブレードアンテナを側頭部に取り付けてグレーのロービジリティーパターンに塗装されたR-1A型に搭乗したとされる親衛隊のエリック・マンスフィールド中佐の軍服にはR-1A型に搭乗するパイロットであることを示す " R-1Aライダー " の腕章を付けていることが「ギレン暗殺計画」で描かれていましたが、高機動型ザクⅡを乗機とすることがエースパイロットの証であったとされています。
しかしながら、U.C.においてパーソナルカラーを纏ったエースパイロットの代表格とも言える シャアには高機動型ザクⅡは配備されていません。
一応ゲームブック「最後の赤い彗星」で存在しないR-2型の5号機に搭乗するようですが、このR-2型はたまたま防塵塗装色が赤だったという設定なので、シャア専用機という訳ではないと思います。
当初この背景には、「ファースト」や「MSV」での設定によるもの、具体的にはシャアが地球連邦軍の新鋭艦であるホワイトベースを追跡して地球まで降下したことやR-1A型を受領したシン・マツナガ大尉やアナベル・ガトー大尉(パーソナルカラーで角なしのR-1A型を受領)は当時のシャアと同じく宇宙攻撃軍に所属するも宇宙要塞のソロモンの防空隊に配備されていてシャアのように地球に降下することがなかったからだと思いました。
これは突撃機動軍のジョニー・ライデン少佐や ” 黒い三連星 ” も同様で、ジョニー・ライデン少佐は空間戦闘で挙げた功績よりR-2型を受領するに至ったとされています。
もちろん ” 黒い三連星 ” は地球に降下する訳ですが、ガルマ・ザビ大佐の仇討ちがなければ、地球に降下してMS-09 ドムを受領することはなかったかと。
ただ、それを言うとシャアもサイド7でホワイトベースやRX-78-2 ガンダムに遭遇しなければ、地球に降下することはなかったかもしれない訳で。
また、 ” 黒い三連星 ” はR-1A型を受領する前にS型を受領しており、シャアの下に高機動型ザクⅡが配備されなかった理由が見当たらない訳です。
冷遇とするにはまだその正体は明らかではないというか、シャアが宇宙攻撃軍から左遷をされた時にジョニー・ライデンのR-2型は4度目のオーバーホールを終えているので、そこから逆算してR-1型やR-1A型の配備はシャアがサイド7でホワイトベースと遭遇する前だと考えられる訳です。
ただこれらについてはこれまでは「THE ORIGIN」で描かれたシャアと ” 黒い三連星 ” のライバル関係で説明がつく、 ” 黒い三連星 ” がシャアと同じS型を上回る高性能機を求めたからだと思っていました。
シン・マツナガもジョニー・ライデンもパーソナルカラーのF型を受領していますし。
ところが、「MSV-R」でジョニー・ライデン少佐専用のS型が設定される訳です。
同様に「MSV-R」ではロバート・ギリアム大佐とギャビー・ハザード中佐のS型にシン・マツナガ大尉やエリック・マンスフィールド中佐の専用のMS-06FS ザクⅡFS型(S型同様F型の派生機でこれも指揮官用として配備された機体)が設定される訳です。
なので、「MSV-R」で振り出しに戻った訳ですが、シャアを冷遇した説は劇中でジオンの上層部はその正体を把握したような描写もありますが、ガルマ大佐の件まではちょっと違うかと。
次にシャアと" R-1Aライダー " との任務の違いが一番近いかと思うのですが、ジョニー・ライデンのF型とR-2型の間にS型が入ったので、これもちょっと説得力に欠けるかと。
一方、「グレートメカニックス」にR-2型の設計をシャアのS型にもフィードバックしたような記述があったと記憶しているのですが、それならジョニー・ライデンや ” 黒い三連星 ” のS型やシン・マツナガのFS型にも反映すれば良いと思ってしまう次第で。
そこで改めて高機動型ザクⅡについて振り返ってみた結果、シャアに高機動型ザクⅡが与えられなかった理由が二つ浮かび上がりました。
一つはS型を上回る機動力と引き換えに稼働時間が短くなったとされる高機動型ザクⅡの受領をシャアが望まなかった、もう一つはシャアには高機動型ザクⅡとは別の新型機が用意されていた、です。
「UCE」でMS-09RS リック・ドムに搭乗したシャアがその機動力を操作しづらいと評価していましたが、シャアがリック・ドムと次期主力量産機の座を争ったとされるR-2型も同様に扱いづらいと評価したかもしれません。
ただ、そうなるとグリプス戦役でMSN-00100 百式に搭乗したエゥーゴのクワトロ・バジーナ大尉とは別人というか、シャアらしからぬようにも思えますし、「UCE」そのものを認めたくない分が私にはありますが、、、。
もう一つはYMS-14 ゲルググ先行量産型もしくは前述したリック・ドムが用意されていた可能性です。
実際シャアはゲルググ先行量産型に搭乗する、その量産型とされるMS-14A 量産型ゲルググが配備される前にシャアのパーソナルカラーと纏ったブレードアンテナ付きのゲルググ先行量産型を受領している訳ですが、これは逆にシャアが他のエースパイロットよりも優遇されていたとも言えるかと思います。
ただ、実際にはゲルググの開発は遅れており、かつシャアが突撃機動軍に再配置されたことでゲルググ先行量産型を受領した可能性も高く、シャアに用意されていた新型機はゲルググよりもリック・ドムであったと考えられます。
このリック・ドムはリック・ドムでMS-09RSの形式番号が示す通り、一般兵に配備されたMS-09Rの形式番号のリック・ドムよりもジェネレーターを強化して携行型のビーム兵器であるビーム・バズーカのドライブを可能とし、かつスラスター推力も向上した性能向上型とされていますし。
特に携行型のビーム兵器を装備したMSの1号機を受領することは、高機動型ザクⅡを上回る名誉であるとも考えられますし。
もっともシャアはリック・ドムではなく、ビーム兵器を装備したMSとしては先にMSM-07S シャア専用ズゴックに搭乗する訳ですが、それはシャアが突撃機動軍に再配置されてジャブロー攻略戦に参加したからであり、これはシャアに取って代わるかのようにMS-09RSの形式番号を持つリック・ドムを宇宙攻撃軍のガトー大尉が受領したことが示しているかと思います。