おうし座の一角に輝くプレアデス星団。星々が統(す)べたように集まったものという意味で「すばる」と呼ばれ、昔から親しまれてきました。その漢字は太陽系を表す日と方角を示す卯(う)を組み合わせた昴です
▼谷村新司さんが作詞作曲した「昴」は星空に国境がないように多くの国々の人に愛されました。とくに「アリス」として参加した1981年の日中国交正常化10周年の記念コンサートを北京で開いて以来、親交を結んできた中国では今も歌い継がれています
▼当時通訳の中国人学生から「なぜ日本人は、中国やアジアに背を向けているのですか」と問われて谷村さんは気づきます。たしかに日本もアジアの一員なのに、上から目線でアジアを見る日本人が目につく。もっとフラットになったほうがいい―本紙日曜版のインタビューで語っていました
▼74歳での訃報が伝えられると、その中国からも哀悼や悲しみの声が相次いでいます
▼「冬の稲妻」や「チャンピオン」、「いい日旅立ち」や「サライ」。情感あふれる詩と壮大な曲の数々はたくさんの心をつかんできました。懐かしさとともに、自然と口ずさめるような。被災地で支援コンサートを開き、東京大空襲の犠牲者を悼む「蓮花」という歌もつくりました
▼70年代から、ありったけの思いを込めて人びとに届けてきた音楽。「美しい言葉には美しい心が宿る」と信じ、人生のつまずく道を照らしつづけた谷村さん。「遠くで汽笛を聞きながら」秋の夜空にしのんで。「我は行く さらば昴よ」
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