まろおるのメモろーグ

日々の中のガンプラ、完成品TOYやフィギュアなど、ホビーやPC関係の楽しみをスクラップしていくメモです。

長旅の友には、やっぱりSF小説だねw

2011-10-17 21:50:53 | 紙媒体・書籍ジャンル
長旅の友にはSFが一番と言うことで、シリーズ物の2巻目が出たばかりの「海軍士官クリス・ロングナイフ」シリーズをチョイス。鈴鹿に出かけたりして、待ち時間の多い中の時間つぶしとして旅のお供に小説を持って行きました次第。

学園モノで高校生がいちゃいちゃするハーレムものではない小説を読みたかった私としては、なかなかのアタリでした。

ハヤカワ文庫「海軍士官クリス・ロングナイフ」シリーズより
一巻目 新任少尉、出撃!
二巻目 救出ミッション、始動!

の2冊です。文庫のわりに1100円もするわけですが……最近の物価高は読子さんですら躊躇するレベルかもしれません。
ハヤカワの海外物にしては、ラノベっぽい表紙で、でっかい銃と女の子のアニメっぽい塗りが目を引きます。(あとがきによるとアメリカ原語版でも作者の指定は「女の子。銃を持ってる。なるべくデカい銃を」らしいw)
かなーりキャッチーなわかりやすいコンテンツに仕上がっています。


大まかな世界観を説明すると、たぶん現代から数百年後の未来、外宇宙を航行できる力を持った人類が版図を広げていく最中の時代。
外宇宙航行が可能とはいっても、特定のワープポイントのようなワームホールを通らなければ移動が出来ない(割と最近多い)設定で、そのおかげで交通の要衝やら、不均一な銀河内での入植惑星間の格差なんかがあったりする(わりと最近よく見る)現代世界と置き換えて読めるわかりやすい世界観。

母惑星である地球と最初の植民星群、それに対する辺境の惑星国家群との間での既得権やら自治権を巡る対立が顕在化している世界、それがクリス・ロングナイフシリーズでの宇宙です。


ラノベの学園モノしか読まない人でも、すんなりと読んでいける文体で、これは翻訳の中原尚哉氏の手腕によるモノと思います。
設定描写は、わかりやすい世界観のせいか多くはありません。軌道エレベータとか流体金属による変形宇宙船とか、目新しいものはあまりないです。
主人公クリス・ロングナイフは辺境惑星ウォードヘブンの現首相の娘であり、武名の誉れ高い軍属や政治家、実業家を多数輩出している家系をもつ。そして、親の反対を振り切って士官学校に入隊してはれて海軍士官として宇宙艦隊勤務を命じられる、というのがスタートです。
彼女が所有する個人用ナビコンピュータは戦艦に搭載されているスーパーコンピュータの数十倍の処理能力を誇るもので、それをもちいて様々なミッションに挑んでいく、という感じになるのですが……。


才色兼備で完全無欠なお嬢様が親の言いつけを嫌って、軍隊に身を投じる大波乱の物語!と書いちゃうとミもフタもないのですが、そんなかんじです。

この作品のポイントは、きちんと描かれる軍隊のありようと、人の生死。そしてヒロインの大活劇!です。

この作者は親も軍属で自信も軍隊経験を持つ、マイク・シェパード氏、1947年生まれとありますので、多感な時期を朝鮮戦争、ベトナム戦争を肌で感じて過ごしてきたのだと思います。
そのような作者の手によって描かれる軍隊は、かっちりとしたもので、描写量はそれほど多くないのですが軍事力を行使することの意味について、読者を納得させようとしてきます。主人公の理論武装がアメリカ正義の具現化なので、日本人目線では違和感があるようにも(わりと現実世界での似たようなシチュエーションが見え隠れする)思います。

軍隊の中で、主人公である新人少尉クリスは自分の過去のトラウマ(どうやら長い伏線)と向き合うことを余儀なくされます。指導者たるべく育てられたお嬢様教育と、軍属としての現実の中で迫られる厳しい選択、その中で突きつけられる自分という人間の未熟さと、その価値を見据えてヒロインが成長していく物語となります。
このあたりの活躍がきちんとした軍隊としての描写のおかげで地に足のついた筋書きで、荒唐無稽になりすぎない小気味よいリアルっぽさで読ませてくれて、安心して読み進められます。

主人公に振り回される可愛そうなサブキャラクター達も、巻が進むとこまごました設定や行動原理が明かされて重みのあるモノになっていきます。ですが、主眼はやはりヒロインの活躍ですので、サブキャラクターの整理で、読み手が止まるほどには出てきません。
ほんと、ありがちな設定がちりばめられているのですが、読みやすさとわかりやすさでライトな宇宙戦争モノに仕上がっていると思います。そのあたりで読後感もさらっとしているのですが……。



で、第二巻目になると少尉から中尉殿に昇進した休暇での話になるのですが、すでに呼び名がプリンセスになってますw
仲間をひきつれ特攻野郎Aチーム状態ですw
首相の娘が何でお姫様になってしまうのかというのは、本編を読んでもらうとして……メイドさんが出てきます。このメイドさんが主人公のクリスを上回るキテレツ度で……日本のメイドモノはテンプレ過ぎてつまらんなあと思う方に是非読んでいただきたい逸品です。
メイドといっても、身分体制のかっちりきまってる古いメイドスタイルなんです……どうもロベルタの陰がちらちらします。結構資産格差というか、現代社会が抱える身分制の縮図みたいなモノが見え隠れするあたりが、当世風というところでしょうか(^^;

悩んだり振り返ったりしない、ゴーイングマイウェーで突き進む!そこは洋物エンターテイメントと言うことで楽しんだ方が勝ちです。
ゲームで言えばマスエフェクトとかああいう感じが近いかな……ばんばんぶっ壊しまくってばんばん撃ちまくって、オレが正義だ!ああすがすがしいw
日本だと水戸黄門でも暴れん坊将軍でも、本人は滅多に手を血で汚しませんが、このお姫様は返り血ばんばん浴びます。自分でとどめを刺します。

このあたりの主人公目線の描き方の違いは、コンピューターゲームとかでもさんざん言われている「JRPGの主人公は戦う理由を考えたり、自分の行動をあとから反省したり悩みすぎ」と言われてる指向性なのかなあ。
あんまりああいう力とは何だ、正義とは何だという禅問答みたいなのやられると娯楽作品としては爽快感がなくなるというのはありますね。




まだ、回収されていないうやむやなエピソードがあるので、伏線と思いつつ続巻を待っています……3巻目が楽しみです。

アメリカでは9巻目がもうリリースされているらしいのですが……。とりあえずシリーズのスタートはこの三部作で考えられていたようで、一応の完結編となる見込み……だとおもう。


ライトにさくっとSFを読みたい人には(厚みは結構ありますけど)おすすめです。




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新任少尉、出撃! 海軍士官クリス・ロングナイフ (ハヤカワ文庫SF)
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救出ミッション、始動! (ハヤカワ文庫SF)
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1巻から2巻の間は2年近く開きましたが、3巻はもうじきリリース予定ですw
防衛戦隊、出陣!: 海軍士官クリス・ロングナイフ
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