ドンドンドンドンドンッ!……激しく扉をたたく音……
「あのー、ちょっといいですかね」
「あっら!管理人さん!」
そそくさと水槽の隅に隠される男たち。
「アタシもあんまりうるさいこと言いたかないんだけどね……
まあお芝居の稽古ってことで貸してるしね、アタシも昔は演劇?とかやってたからさあ……」
「あっら!バンバさん、俳優さん!」
「気をつけますともぉ~」
必死に取り繕う○○軍団。
ちなみに管理人のバンバさんは栃木弁。
「なんなんだあんたらは!」
「我々は、人魚族です!」
「って訳であんたら、あたしらと結婚して、子供、作ってもらうから」
「はああああ?」
宴の後は再び放置……
何やら水槽の中に……
「なんでこの昆布おばちゃん、フツーにしゃべってんだこん中で!」
「元人間のルーキーとはいえ私も立派な人魚族、これくらいは当然だ」
「じゃあ本物!?」
紙芝居で説明し始めるウキエ……
「むかしむかし人魚族はそれはそれは美しい海の中で幸せに暮らしていました。ところが、地上の人間たちが進化するにつれ、大地は汚れ、海は毒にまみれてしまいました。魚や海の生物たちと共に、人魚の数はどんどん減っていき、ついに今、人魚族は絶滅の危機に瀕したのです。人魚の女王サザエは思いました。人魚族は滅んではならない。人魚族の未来の為に、新しい生命を生み出し、種族を繁栄させなければ、と。だが、人魚族には残念ながら男はいない。子を成すことができない。しかし!だいぶ、かなり、も全然人魚には及ばないが、人間の男ならば我々と子を成せる。だから貴様等は我々と婚姻を結び、契りの儀式を行い、種族の繁栄の礎となるのだー」(稚魚たち拍手)
「そこの下等種族ども!」
「俺にはトキタってちゃんとした名前がある!」
「ほう、では貴様は」
「カトウだ」
「ほれみろやっぱり下等種族ではないか(宝塚調の笑い)」
見張り役の昆布は、15年前に家出し、火サスのなぎさごっこで海岸から落ちて人魚に助けられ、魔女に宝を差し出して人魚にしてもらったというナカジマ。
「息子の学費400万!それ持って逃げただろ!その金つぎ込んだだろ!」
「ひ…ヒロシ…?」
親子のよしみで何とかここから逃がしてもらおうと画策する男たち。
「人魚に息子なんていませんー」と突き放すナカジマ。
「うわでた!面倒くせえ!出た!父ちゃんの口癖!でこなってなんか顔まで似てきよったばい!あーやだやだ!あーもうやだ!もうおしまい!」
(親子喧嘩は九州弁の捲し立てでした)
「なにやってんのーあんたらは」
「助けて!助けてください!」
「とにかくコレ、外してください!」
「えっ!?あたしが外すの?……でもこれ、ヒーロー役じゃないの、柄じゃない柄じゃない!」
すっかりお芝居の稽古と勘違いしているバンバさん。
「とうっ!」
「ノリノリだな!もう何でもいい!何でもいいよヒーロー」
ナカジマの一撃であえなく気絶するバンバさん。
「緊急事態発生!コード003イーソノー!」
……暗転……
続く。
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