ガンはじめました〜笑って泣いて神頼み〜

大腸癌・ステージⅣと出会ったアラフィフおばちゃんのちょっと変わった日常ブログです。

急展開(part.4)

2020-12-30 13:52:04 | 日記
選ばれし者だけがそのダンジョンの扉を開けられるという伝説の鍵(?)。
その鍵を持つ春菜さんが、いとも簡単に黒い鉄格子と扉を開け中に案内してくれました。

おぉぉぉぉぉ〜!

左手に部屋。
中央に真っ直ぐ伸びる廊下。
右手は自販機。
はい。
至って普通に院内の光景が目の前に広がっています。

猫野のドキドキptが80下がった!

待合室のあった建物と同じく本館らしいのですが、中の形が特殊なようで。
ここまで来るには外から回って来るほうが早いんだとか。
部屋にまで鍵がかかっていたようです。
部屋らしい部屋に入れると思うと、やっと診察に近付いた気がしました。

中は10畳ちょっとはあったかなぁ?
リクライニングのベッドはベッドに見えないようなマッサージチェアに似た感じで。
二台ほど設置されていました。
あとは、キッチンがあって。
デスクと椅子があって。
デスクの上のパソコン周辺はホコリ知らず。
しばらく使われていなかった部屋にも見えませんし。
古くもなく、特段綺麗でもなくな無難な部屋が何故鍵付きなのか…?
初めのうちは分からず、その謎に少しモヤモヤしました。



『ここに座ってて下さい。ごめん、今、先生はまだ午前中の診察が押してて2人診終わったら来るから。ごめんね。』

春菜さんはお詫びが口癖になっているようでした。
何回も謝りながら、車椅子から椅子にのそのそと移る私の後ろで準備をしている模様。
私は出して頂いた理科室にあるような丸椅子に座って、辺りの様子を見回しつつ、鞄の中からお薬手帳と受付から戻されていた紹介状を取り出し備えました。

『だけどね、猫田さんだったっけ?』
『“猫野”です(苦笑)』

振り返ると春菜さんはフェイスシールド・厚めの手袋と足袋・エプロン・やや防護服よりは見劣りするビニール製のつなぎの完全装備姿になっていて、私は眼を見張ってしまいました。

そっか…。
炎症が起きていて感染症の可能性があるかもしれないということは。
コロナにせよ何にせよ。
今の自分は誰かに何かを移してしまう疑いがあるんだと、改めて実感しました。
鍵付きの部屋に通された謎が解けた瞬間でした。

『あぁー、ごめん。ごめんごめん。猫野さんね。
それにしてもあなたさ。食事も水分もずっと摂れてなくて痛みで眠れてもいなかったんだって?』
『はい…。』
『ごめんね。辛い時にこんなこと言うのあれなんだけどさ。
ダメだよ〜、もっと早いうちに病院に来るか救急車呼んで貰うとかしないと』
『はい…すみません』
『ご家族には連絡したの?』
『いいえ。両親は他界していて兄が唯一の肉親なんですけど、今は連絡が着く状態にありません』
『そうだったの…ごめんね。じゃあ、お一人暮らしなんですか?』
『いえ、長い間友人と二人暮らしだったんですけど、兄の居ない間、兄嫁一人じゃ心配なので一時的に家で預かることにしたんです。
三人暮らしが始まった矢先に私がこんな風になってしまって…。
二人にはさっき待ってる間にメッセージで連絡しました』
『へぇ〜。珍しいメンツだね。あ、ごめんなさいね…なんか根掘り葉掘り聞いちゃったみたいで(汗)
でもね。あなたの事情もあるかもしれないけど、人の心配してる場合じゃなかったの。
下手したらあなたここに来る前に死んでたかもしれないんだから』

え?
えぇぇ?
マジですか!?

診断は先生じゃないと出来ないからと、詳しいことは教えてはくれません。

『ごめんね。今ってさ。貧困な人も増えてるし、孤立して誰にも相談出来なくて我慢しちゃう人も居たりで助けたくても助からない人が多い時代になっちゃってるのよ』
『分かります。うちも私が仕事を休職してからカツカツで行政の相談窓口を調べたことがありましたし、自分のケアを見て見ぬフリするしか無い人たちのことをセルフネグレクトと呼ぶこともそういった記事を呼んで知りました』
『そこまでしてたならそういう人たちとあなたとは違うと思うけどさ。
それでも我慢し過ぎだよ。痛みに強いのは良いようであまり感心出来ませんからね!
あ、余計なお説教しちゃった。ごめんね。気を悪くしないでね』

ぶっちゃけ、気を悪くするどころか泣きそうになるくるぐらいウルッときていました。
お仕事とはいえ、話してみようと思える空気を与えて下さったわけですし。
だけど、全ての事情を話すことは、相手にとっては言い訳になってしまい兼ねません。
誰のせいでもない。
厄介な病を抱えているとすれば、それは私が私を後回しにした結果。
甘んじて受け止めようと思いました。


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