ガンはじめました〜笑って泣いて神頼み〜

大腸癌・ステージⅣと出会ったアラフィフおばちゃんのちょっと変わった日常ブログです。

急展開(part.6)

2021-01-01 13:28:00 | 日記
猫野は血管だけは細く注射針がなかなか入らない体質です。
点滴はもちろん、注射に於いては過去、一度に十箇所近く刺し直された経験を持っています。
密かに私の自慢です(←自慢になってない)
幼少期から慣れに慣れてしまっているので、注射に対する苦手意識はありません。
ただ、何回となく看護師さんに謝られてしまいますし、お相手のほうがめちゃくちゃ緊張しているのが伝わってくるので、そういう意味では凄くハラハラしちゃいます。

『医院長先生、遅いなぁ…ごめんなさいね。先生にやって貰いたいんだけど』

医院長先生が席を外している間に始まった採血。
春菜さんから呼ばれた看護師さんがギブアップ。
かれこれもう3人目。
その方が去っていくと、春菜さんの口元がへの字になりました。
何度も何度も腕をさすって温め、何度も何度も腕を叩く。
私はグーパー、グーパー。
腕の力を抜いて…ダランと。
両腕も両方の手の甲も止血用の絆創膏だらけ。
場所によっては既に腫れもみられます。
どうにもお手上げな様子の春菜さんが、また電話を手にしました。
痺れを切らして医院長先生をご指名することにしたようです。



『ダメだ…。こっちにお任せするって。それが難しいから頼んでるっていうのに。ごめんね。いい加減、痛いよね』
『いつものことなんで私は大丈夫です。やる側のほうが大変なんじゃないですかね』
『ホント、我慢強い人だね。猫野さんて』
『全然そんなんじゃないです。慣れですよ、慣れ(苦笑)』
『一発で入っても大騒ぎする患者さんも居るのにあなたって人は…。
でも、飲まず食わずだったから余計に入りづらくなってるのもあるんだよ?
食べて無いとね、血管まで脆くなっちゃうんだから…(ry』
『はい、すみません(汗)』

結局、4人目のピンチヒッターとなった看護師さんが数回で血管を仕留め、注射は無事に(?)事なきを得ました。
これで同じ箇所から点滴も入れられます。
春菜さんの表情に笑顔が戻り、代打の看護師さんも親指を立てながら安心した様子で戻って行きました。



こうして書いていると登場シーンの多い春菜さんなのでずっと付きっきりに見えますが…
正午を過ぎ、職員さんもお昼時。
春菜さんが他の方に呼ばれて一人で駆けずり回ることも多く、私しか居ない時間が結構ありました。



『お待たせ、お待たせ!ごめん、この時間私一人なもんだから…えーっと、次何しようとしてたんだっけな(汗々)』

何度目の往復だったか…?
春菜さんがPCR検査のキットを持って帰って来ました。
既にレントゲンと心電図は横になったまま受け終えており。
尿検査はCTついでにあとで受けると事前に聞かされていたため、続いては例の抗体とPCRの検査です。
この検査では、鼻の粘液と口腔内の唾液を摂取するタイプの検査を受けました。

鼻は長い綿棒をそ〜っと突っ込み、軽く中をこするだけ。
クシャミは出なかったけれど、これがすっごくこそばゆくて。
馬の耳に念仏、猫野の目には涙々(なんのこっちゃ)
唾液のほうはちょっと大変でした。
やり方は少し大きな試験管のようなものを口に咥え、唾液を出すだけなので至って簡単でシンプル。
ですが、水分の足りていない身体から出る余分な唾液などあるはずもなく…
喉と同じで口の中もカラッカラのパッサパサ。
あのサーバーから頂いた潤いの癒やし水はどこに行ってしまったのやら…。
おトイレも朝吐く時に行ったきり。
身体は尿意をも忘れてしまってる感じ。
最低限、決められた量の唾液が必要なだけに苦戦を強いられました。
私はどこかで聞きかじった“ツバが出易くなる方法”を試すことに。
耳の下辺りにある首のリンパを抑えるようにして優しく揉む。
ゆっくりゆっくり。
時間をかけて唾液を取りました。



抗体とPCRの検査が終わったところで待ちに待っていた真打ちが登場。
直接患者さんの身体に触れる看護師さんは入退室の度にフル装備を脱ぎ着しなければなりませんが、触診する間も無かった医院長先生は普段と何ら変わりないであろう白衣姿で現れました。
イェスッ!ソーシャルディスタンス。
医院長先生は、自分の席に着くとベッドに横たわっていた私のほうを向き、お話しを始めました。

『猫野さんね。度々お待たせしました。痛みは変わってないだろうけど、体調はどうですか?
栄養剤が効いてるといいんだけど』

この部屋に来てからも検温・血圧測定は30分置きくらいに続いており。
酸素量・心拍数の機械は持病の心疾患への対処として危険な不整脈を見逃さないよう装着されたままでした。
熱はピーク時には39℃後半まで上がりましたが、ここでは37℃台をキープ。
その他の数値も酸素量以外はまずまず安定してきていました。(呼吸が浅く荒いため、酸素量は高い状態)

『検査結果が出ないとハッキリとした診断が出来なくて申し訳ないんだけどね…今分かってるのは、お腹の中が腫れていて炎症が起きてるし、貧血も酷いんですよ。
そのお腹の膨らみも腹水が原因だと思われます。
もしかしたら、お腹の中に何か出来物が出来てるかもしれないね。もし、そういうものが見つかったら良性か悪性かも調べることになるけど、大丈夫ですか?』

ピーク時の尋常じゃない痛みを思うと悪性の文字がよぎりました。
腹水が溜まっているということは、ただ事じゃない。
私が十代だった頃に肝硬変で亡くなった母のお腹が浮かびます。
同じように腹水が溜まって臨月ばりにせり出ていたあの姿は…
腹水を抜いても抜いてもとても痛ましいものでした。
ありがたいことに腹水は抜くだけだった母の時とは違い、少しずつ医療も進歩を遂げてきています。
今は、抜いた腹水から細菌や雑みを取り除き、栄養だけを身体に戻せる時代なのです。
そうは言っても腹水まで溜まっているとなると良性とは思えず、若干ビビっていた私。
しかし、なるようにしかなりません。

『先生、結果がどんなでも私に直接言って下さって大丈夫ですから。どうぞよろしくお願い致します』



不安が無かったと言えば嘘になります
だけど、私は家に帰る。
元気になるためには現状を知って適切な治療を受けないと。
強がることしか今は出来ないけど。
来るなら来やがれ!(あぁ…言っちゃったよ、おい)
医院長先生は、穏やかな顔で大きくゆっくりと頷いてくれました。


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