" 馬鹿な事言うなよ!ウチみたいな二間しかない木造ボロアパートの何処に猫飼えるんだよ?" ※表紙画:スバル360 1/64scale
【GW蔵出しスペシャル:~膝猫~より】
”きゃ!お父さん!お父さん!これ!これ!これなんなの??これみて!!”
と、興奮しながら私を呼ぶ娘,明子の声がして後ろを振り返ると、なんとそこには彼女の膝の上に猫が鎮座してる。
👉前奏曲 作品28の15「雨だれ」ショパン 約6分20秒
”ねぇ!お父さん!本当これなんなの?猫って知らない人の膝に飛び乗って来る事有るの?”(そんな慌てふためく娘の声を聴いてるコッチが、恥ずかしい程、喧しい・・)
”さぁ~あんまり聞いた事ないな・・あっ!いや・・あったかも・・”
墓参りの帰りの出来事だった。朝から霧のような雨が降っていて、娘が境内にある休憩所の御影石のベンチに腰掛けてると、何処からか一匹の野良が娘の膝の上に突然乗って来たという。
そこで思わず娘に・・
”明子、オマエなんか持ってんのか?ネコが欲しがるような食べものとか・・それにしても汚い猫だな~(苦笑)・・”
”持ってる訳ないじゃない。でも、どうしたんだろう?・・カワイイ~♪ それと、お父さん!汚い猫じゃないから!!”
と、私に少しムッとして言い放ち、猫の体を優しく撫でてる。
"あっ、・・ゴメン!ゴメン!・・そうだな・・"
と、言いながら、猫に顏を近づけてマジマジ見ると確かに可愛い。そんな 鎮座する"膝猫" をみて一つ思い出した事がある。あれは・・・
・・・・・・・・・・
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"キャッ!ヒロシ!これ見て!見て!見て!ヒロシ見て!"
そうボクを呼びながら歓喜する妻。なんと驚いた事に、公園のベンチに座る彼女の膝の上に一匹の猫が鎮座してる。
"あれ?なんだぁ?どうしたの?その汚い猫?"
”しらないけど・・突然何処からか現れてほらこの通り。あっ!それからね!ヒロシ!汚い猫ちゃんじゃ無いからね!!"
と、ボクにムッとして言い放ちながらも猫を撫でてる・・
"あっ!ゴメン!ゴメン!・・へぇ~よく見ると可愛いな。それにしても猫って知らない人の膝の上に飛び乗るのか?"
彼女は猫を優しく撫でながら・・
"うん。良くわからないけど私も初めて。突然で驚いてる・・ねぇ~此のまま家に連れて帰ろうか?ねっ!そうしよう!良いよね?"
"馬鹿な事言うなよ!ウチみたいな二間しかない木造ボロアパートの何処に猫飼えるんだよ?無理!第一大家さんにバレてみろ、追い出されるのが関の山だ・・連れて帰れない・・ダメだぞ!"
”わかった。やっぱりそうよね・・"
と、あの時の少し、悲し気な妻の表情が、今でも記憶に残ってる・・
” あら!この子いつの間にか寝てるよ・・可愛い♪・・じゃさ、起きるまでもう少しこのまま此処に居ようよ。ねっ、それなら良いでしょう?"
"うん・・それなら良いよ・・(笑)・・”
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
あれは私も彼女も学校を卒業して、社会人に成りたての二年にも満たない安サラリーマン時代。両家の反対を押し切って、家出同然で結婚したようなものだった。
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・・・・・・・・・・
”ねっ!お父さん~この子いつの間にか寝ちゃたよ。起きるまでもう少し此処に居ようよ♫・・”
”えっ?あぁ~うん・・良いよ。”
”あのね、お父さん・・お母さんの事で思い出した事が有るの。お母さんが入院してる時の話しなんだけど・・
”なにを?・・・”
”うん・・「あの猫ちゃん~あれからどうしたのかなぁ・・」って、何処か少し寂しそうに小さな声で、誰に言うのでもなく一言、そう呟いたの。あれ何だったんだろう?・・お父さん,なんか心当たり有る?”
”・・いや・・心当たり無い事も無いけど・・ハッキリしない・・”
”そう、なら良いけど。お母さん,ネコちゃん好きだったのかな?・・”
”母さん,猫が好きなのは知ってた・・雰囲気で猫好きだっと判ってた・・”
”私は猫ちゃん大好き♪ ~あら起きた!~おはよう猫ちゃん~♪~あっ!猫ちゃん何処行くの?もう帰るの?”
娘が猫にそう呼びかけたが、猫はそのまま境内奥に走り去っていた。
”さて、雨も上がって陽も照って来たし、そろそろ帰るぞ・・”
帰路につく車内で、娘がバックからCDを取り出し操作しながら・・
"楽しみが一つ増えた。今度お墓参りに来る度にあの子(猫)に会えるかもしれないと思うと、なんかウキウキして凄く楽しみ~♪カリカリもお土産に持って行こう~♪・・(笑)”
”そうだな。勿論タイミングもあるけど、オマエの日頃の行い次第だな(笑)”
”お父さん!それって私に対して失礼よ!!(笑)ねぇ~お昼は久し振りに ”更科のお蕎麦” でも食べて帰ろうよ~♪”
”そうだな。オレも腹減って来た。それでオマエ、新幹線の時間大丈夫なのか?”
”うん、大丈夫。きょうは夕方の便で帰るから”
”そうか・・じゃ蕎麦でも食って帰ろ。あれ?このCD。オマエが持って行ってたのか?道理で探しても見当たらない筈だ・・(笑)”
・・そうか・・妻は知ってたんだ・・内緒にしてたのに、ワタシが猫アレルギーであることを・・そうだな・・今度、墓参りで娘が帰って来た時にでも話そうか・・そう妻の「膝猫」の話(笑)
エアコンの効いた車内には妻の好きだった懐かしい 松任谷由実のアルバム「流線形80」の“埠頭を渡る風” が軽快に流れてた・・
ちゃんちゃん~♪
ハイ♪今夜はこれで〆ね♬👉”埠頭を渡る風 ” 松任谷由実 4分40秒
2022年6月UP ~”膝猫(ひざねこ)”~より蔵出し
by~西風
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