”帰り道、何気に空を仰ぐと空一面茜色に染まってた・・”
※表紙画:トヨタカローラ1/64scale
【GW蔵出しスペシャル:~”YAKUSOKU”~より】
2014年 ~秋~
「ねぇ・・お父さん・・お願いがあるの・・」
ベッドに横たわる妻が、半身起こした状態で俺に話しかける
今夜はこれで⇨「こころの時代」ピアノ演奏 / Wong WingTsan 約5分
「うん?お願い?どうした?なんだ・・?」
「あのね・・明子の事なんだけど・・」
「・・?・・明子がどうかしたのか?・・」
「・・違うの、有るかどうか分からない ”もしも話”なんだけど・・」
「もしも話・・?」
「あのね近い将来、明子が結婚したい男(ひと)を家に連れて来ると思うの・・」
※GooglePhoto参照 イメージ
「えっ?なんだよ其れ?唐突に・・明子は未だ17の高校生だぞ・・」
と、呆気に取られながら妻に答えた。
「馬鹿ね。だから”もしも話” って、言ってるじゃない・・勿論、明子が社会人になってからの話しよ・・まぁ~最悪こんな事来ないかも知れないけど・・(笑)」
「・・はぁ?・・」
そう言いながら、俺は”呆気顔”で妻の顔を見たんだろう、彼女はそんな俺をみて、”話最後まで黙って、真剣に聞いてね” って、俺に釘をさして話し始めた・・
「そうなれば、明子がその彼を家に連れて、結婚の申し込みに来ると思う・・そこで父親であるあなたはその彼と "世間話”しをするでしょう・・。
「・・・・・・・・」
そしてその話の最後に、その彼は私達に頭を下げて、明子との結婚を承諾して欲しい旨を伝えると思うの・・互いの親の家に二人で訪ねて来るという事は、そういう意味よね・・」
と、今度は途中で、窓の景色に目を向けながら話した・・
妻はまるで、そんな事が起こると、確信している口調で話す。少し滑稽に思ったと同時に、益々呆気顔で聞いている・・
「でね、此処からあなたにお願いがあるの・・」
そう言って、妻は本題を切り出した・・
「あのね・・その時はあなた、必ず反対してね・・・」
「はぁ?はんたい?なんだよそれ?・・」
「最後まで聞いて!・・」
「・・・・・・・・」
「いい?闇雲に反対するのではなく、一度は反対する”意思表示”をその彼に示して欲しいの・・その男は反対されたと思い、悔しくてきっと落胆すると思うの・・そしてその傍らに居る明子も同時にオドオドし始めると思うの・・」
俺は全く意味が分からないと、言った面持ちで妻の話を聞いている。すると妻が・・
「明子は私たちが苦労して大切に育てた娘・・多少我ままな所も有るけど、心根がとても優しい明るい子なの・・弟たち二人の面倒も良く見てる・・そんな明子が選んだ男よ・・」
「・・・・・・・・」
「きっと良い人に決まってるじやない。あの子は人を見る目はあると思うの・・私達はそんな子に育てたつもり・・それを信じて・・・」
「それを信じて・・?」と、彼女に聞き返した・・
「そう、明子を信じて直ぐに許してあげたいの。でもね・・”はい!そうですか。良いですよ!” なんて”二つ返事”で簡単に承諾したくないの・・だからね・・一度だけその相手の焦って狼狽する表情を見てみたいの・・クスッ・・」
「へぇ~・・なんと勿体ぶった三文芝居だな・・(苦笑)」
「そうよ・・ほんの少し、一度だけ勿体ぶっても罰は当たらないでしょう・・それ位、子供達には愛情一杯注いで、育てたつもり・・それ思うとお嫁に出すのが少し悔しいかなぁ・・ってね・・」
と、そう言いながらクスッと妻はまた笑った。
「・・だからね。アナタはその男に言葉で言うのではなく、怖い形相と態度で表してほしいの・・一度だけ・・其の後、タイミングを見計らって私が現れ、満面の笑みを浮かべながら、事を丸く収めるの・・そう、私は ”良いとこどり” で締め括るの・・(笑)」
「はぁ~??何で俺は怖い形相なんだよ?」
「だってあなた、若い時からホワァンとした締まりのない表情だから。決める時はキリッと渋い男の顔を私に見せてよね・・クスッ・・」
と、俺に小娘の様な悪戯っぽい笑みを見せる。そんな彼女に、思わず苦笑交じりに
「わかった!わかった!俺が”嫌われ役”で、君が”正義の味方役” だな~あっははは~了解!了解!了解しましたよ!約束するよ・・(笑)」
と、彼女との約束を聞き入れた。
「ありがとう・・約束ですよ~お父さん~♪そうそう、この”もしも話し”は私達も経験したわよね?あなた覚えてる?(笑)」
「うん・・そうだったな・・今、思い出したよ・・あっ!もうこんな時間だ!面会時間過ぎてるよ!じゃ!また明日帰りに寄るな!!」
帰り道、何気に空を仰ぐと空一面茜色に染まってた・・
2021年 ~春~
・・早いな・・いよいよだな・・約束の時間・・母さん、君の言う通りだったな・・そろそろ来る頃だ・・じゃ、明子たちが来るまであと少しあるな・・最後のリハーサルしとくかな・・今度は大きな鏡の前で・・
でもまさか俺が、悪者と正義の味方の”一人二役”をするとは思わなかったよ。これは正直難しいぞぉ・・もう一度お浚いだ・・”最初不機嫌な顔をみせ、同時に二人の反応を見て・・そして間をおいて、次に ”娘を宜しくお願いします” だな・・できるかな・・俺、本番に弱いからなぁ・・ドキドキしてきた・・
まっ!仕方ない、君との ”約束” だもんな・・ちゃんと其処から見逃さず見てろよ~ビシッと決めた俺の名演技・・じゃ、居間に行って来る・・(笑)
妻にそう笑みを浮かべながら話した。すると ・・”いってらっしゃい・・がんばって・・おとうさん!・・” と、ほほ笑む遺影の妻の声が耳元で微かに聞こえた気がした・・
2022年5月Up「YAKUSOKU」より蔵出し
by 西風
~~~~~(´艸`*)~~~~~♪
ちゃんちゃん~♪
みなさん~お疲れ様です~♪ 今日3日(水)はGW中盤のスタート♪ どう過ごされてますか?~(´艸`*) と、言う事で何方様も貴重な休日。事故などのアクシデントにはお気を付け下さり、有意義なGWをお過ごし下さいね~♪それじゃ!またね~Bye!!!
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